産後ママが悩む「おっぱい詰まり」「乳腺炎」 四足動物みたいな授乳スタイルで防げ

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【すくすく子育て】(Eテレ)2017年7月15日放送
「産後の体と心〜体編〜」

妊娠、出産という大仕事を終え、楽しく元気に子育てを頑張りたいと思っていたが、何だか体も心も上手くコントロールできない...。

番組では、産後ママの様々な体の悩みに、日本赤十字社医療センターの産婦人科医・笠井靖代氏と、東京都助産師会の岩佐寛子氏が答えた。

出産直後は女性ホルモンがほぼ0に

東京都の崎山佳那子さんは、2016年9月に長男の瑞己(みずき)くんを出産後、体の異変を覚えた。

崎山さん「すごくだるくて、倦怠感、疲労感が続いた。立ちくらみやめまいがあり、普通の生活もままならない。かなり体がしんどいな、と。産後2〜3か月経って髪の毛が抜けるようになって、ひどい時はごそっと抜けてしまう。床にも気付かないうちにたくさん髪の毛が落ちていてすごくびっくりしました」

7か月ほどで楽になった崎山さんだが、なぜ産後に色々な症状が出てしまうのか、詳しく知りたいと思っているという。

笠井氏「妊娠中は胎盤から女性ホルモンがたくさん分泌され、赤ちゃんを育てるのに都合のいい体になっている。エストロゲンという女性ホルモンは、妊娠前を1だとすると、妊娠中は10〜100まで上がる。出産すると胎盤も体の外に出るので、胎盤から出ていたホルモンが急激に低下してほとんど0に近い状態になる」

女性ホルモンは、

(1) 髪や皮ふのみずみずしさの維持

(2) 骨量の減少を防ぐ

(3) 骨、筋肉、関節の働きをスムーズにする

(4) 脳機能の維持、精神を安定させる

という役割を担っているため、減少すると様々な症状の原因となるのだ。

産後半年〜1年で月経が回復し、卵巣からホルモンが分泌されるようになると、妊娠前の状態に戻る。

傷が痛む時は授乳中でも痛み止めを

岐阜県の宮地美若(みわ)さんは、蒼士(そうし)くん(1歳6か月)を出産した時、辛い出来事があった。

宮地さん「出産した後に膣壁(ちつへき)が破れてしまって、危ない状態になって緊急手術を受けた。出産よりもそっちの方が痛みが強かったし、何より精神的に辛かった」

手術の傷は回復しているはずだが、同じ姿勢が続いた時や疲れが溜まっている時、子供を抱き上げた瞬間やずっと抱っこをしている時に傷あとが強く痛むという。

笠井氏「表面はきれいになっていても、傷口が冷えたりすると、突っ張ったり痛みを感じることは少なくない。ぬるいお風呂にゆっくり浸かってリラックスするとか、痛み止めを使ってもいい。授乳には差し支えないので、無理して薬を使わないようにと頑張る必要はない。2〜3年経てば痛みを感じなくなる」

三重県の1歳7か月の男の子のママからは、出産がきっかけで痔(ぢ)になったとのメールが寄せられた。便秘や痔も、多くのママが悩む症状だ。

笠井氏「妊娠中は子宮の中で赤ちゃんが育つが、子宮の筋肉があまり収縮しない方がいいので、ホルモンが子宮を収縮しにくいように維持している。子宮の筋肉と腸の筋肉は同じ平滑筋(へいかつきん)なので、腸の動きも抑制される。お腹が大きくなるので、物理的にも腸の動きが悪くなる。産後は授乳でかなりの水分が母乳に分泌されてしまうので、便がかたくなり便秘になる」

便がかたいことや、出産時に長くいきむことが、痔の原因にもなる。

笠井氏「朝起きたら、冷たい水を飲んで少し体を動かすといい。体が動くと腸も動く。それから朝食をしっかり食べる。便意を感じたら我慢しないでトイレに行くようにする。体は冷やさず、肛門は清潔に保つようにして」

排便時に出血がある、痔が痛む、排便時に肛門から痔が飛び出す、痔が出たまま戻らない、粘液がしみ出て下着を汚すなどの症状がある場合は、病院を受診しよう。

貧乏ゆすりで腰痛を和らげる

神奈川県の志田就子(なりこ)さんは、透子(とうこ)ちゃん(6か月)を育てる生活の中、体のあちこちに痛みを感じている。

授乳時に「子供の目を見てあげなさい」と助産師に指導され、言われた通りにしているが、前かがみの姿勢が続くせいで重い肩こりになった。

授乳以外でも、離乳食をあげる時、一緒に遊んでいる時、おむつ替えの時も前かがみになり、腰への負担も大きい。

志田さん「前傾姿勢になる機会が多いし、 しばらく続くことなので、少しでも楽にできる方法や解消法を知りたい。運動やストレッチをした方がいいとわかってはいるが、時間が取れないし、一人でどんなことをやればいいのかわからずできていない」
岩佐氏「傾いた姿勢は骨盤や背骨のゆがみの原因になる。授乳では赤ちゃんが上手く飲み始めたと思ったら、姿勢を正して正面を向いてもいい。肩こりは呼吸に合わせて肩をゆっくり回すだけでもほぐれる。背骨と足の付け根の内側につながっている『腸腰筋(ちょうようきん)』は、前かがみになると常に緊張した状態になる。脚を貧乏ゆすりのように上下左右に揺らすと、緊張がほぐれて腰痛が和らぐ」

9か月の男の子のママからは、「おっぱいが頻繁に詰まってしまう」という悩みのメールが寄せられた。

笠井氏「私が出産した時、助産師に『四足動物は乳腺炎にならない』と言われた。ベッドの上に赤ちゃんを寝かせ、しこりができた飲み残しのところに赤ちゃんのあごが来るようにして、飲み残しを解消するように授乳するといい」
岩佐氏「疲れが溜まっていると乳腺炎の原因になる。体を冷やさないのも大事。温かいハーブティーを飲んでリラックスするような時間を持てるといい。詰まりを感じたら助産師に相談してケアを受けてみて」