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 最近のメキシコに関係して外国に伝わるニュースは蔓延る麻薬組織カルテルによる犯罪と米国のトランプ大統領が不平等な協定だとして見直しを迫っている北米自由貿易協定(NAFTA)のこと。そして米国とメキシコとの間の国境に不法移民の入国を防止する為の壁を建設するといったことで、良いニュースは伝わって来ない。

 またひとつ暗いニュースが報道されている。メキシコで犯罪組織による車の盗難が急増しているというのである。<昨年4月から今年3月までに盗まれた車は7万6334台>、この記録は<2011年から比較して年間で最大の盗難件数になっている>というのである。しかも、その前年期と比較すると<21%の増加だ>としている。(参照:「Sin Embargo」)

 そして、その盗難車のビッグファイブの上位4位までが日産車で占められているのである。

【1位】日産ツル:9223
【2位】日産ダットサン・ピックアップ:3102
【3位】日産ベルサ:3066
【4位】日産セントラ:2247
【5位】フォルクスワーゲン・ジェッタ:2122
※車種:盗難車数

(参照:「Sin Embargo」)

 1位のツルは、日本で言うところの「サニー」のことで、メキシコで25年間生産されている車である。メキシコでの生産台数においてに日産は常に1位をキープしている。日産は1966年にメキシコでの生産を開始している。現在、10車種が生産されているが、その内の5車種<NP300、ベルサ、ツル、マーチ、セントラ>がメキシコ市場で常に販売の上位の座を占めている。盗難車として日産の車種が多い理由にはこれらの車の生産台数が多く、しかも市場で人気があるという背景がある。

 ラテンアメリカにおいて、日産がメキシコを生産拠点にして生産を開始したのに対し、ライバルのトヨタはメキシコとは一番距離の離れているアルゼンチンを拠点にスタートしている関係からメキシコにおいてトヨタの車の存在感は薄い。

 盗難が多発している最大地はメキシコ市の北側に位置するメキシコ州である。上述の期間に<メキシコ州で盗まれた車は17600台>で、盗難全車の23%を占める。その次に<ヌエボ・レオン州の13280台>、そしてメキシコ市がある<連邦区の12342台>となっている。(参照:「Animal Politico」)

 更に、盗難の多い州として、ベラクルス、シナロア、タマウリパス、プエブラ・ミチョアカン、ハリスコ、バハ・カリフォルニアの7つの自治州がある。<プエブラは46%、ハリスコとバハ・カリフォルニアは42%>と盗難が急増しているという。(参照:「Animal Politico」)

 しかも、<80%の盗難が強奪によって発生>しているそうだ。例えば、<交差点で停止している車に凶器でもって脅し、運転手を車から降ろさせて車を奪う>というのが常套手段として多発しているとしている。また、<運転手をATMがある場所まで連行して、現金を引き出させる>というケースもあるという。その後、彼らはその車で遁走するのである。(参照:「Sin Embargo」)

 盗まれた車の<37%は取り戻すことが出来た>という。しかし、<前年期の45%>に比べると取り戻された率は低くなっている。

 また、最近の傾向として乗用車以外にトラックなど<運送車の盗難も急増>しているそうだ。(参照:「Animal Politico」)

 取り戻されることなく盗まれた車の行き先は<中東、東欧、アフリカ>だという。<ベラクルス州とタマウリパス州でコンテナーに積まれて>(輸出)されるのだそうだ。米国と中米だと追跡調査に協力する機関は存在している。しかし、ヨーロッパや中東の場合は時間的な問題から見つかっても、<既に第三者に販売されている場合が往々にしてある>そうだ。インターポールによる追跡調査で<チェコとパリで盗難車が見つかったケースもある>そうだ。(参照:「Sin Embargo」)

 この盗難によって、保険会社が負担した金額は<83億ペソ(540億円)>に上るという。保険について、<10人の内の9人は車の破損や盗難以外に医療費用まで補填>しているという。盗難に合った時に凶器などで怪我をする場合を考慮しての保険である。(参照:「Sin Embargo」、「Sin Embargo」)

<文/白石和幸>
しらいしかずゆき●スペイン在住の貿易コンサルタント。1973年にスペイン・バレンシアに留学以来、長くスペインで会社経営する生活。バレンシアには領事館がないため、緊急時などはバルセロナの日本総領事館の代理業務もこなす。