Q 南スーダンの自衛隊は何をしていたのでしょうか?

 池上さんのコラムで、確かに日本ではISへの総攻撃が報道されていないなと感じました。IS以外にも、南スーダンの自衛隊海外派遣についても報道が少なかったように思います。やはり「武力衝突」ではなく「戦闘」していたのですよね。実情が知りたいです。(40代・男・自営業)

A 自衛隊の施設部隊が南スーダンに派遣されたのは2012年1月のこと。

 スーダンから独立する直前、私は南スーダンの首都になることになっていたジュバを取材しました。ジュバ周辺の道路は舗装されておらず、凹凸だらけ。近隣の都市に物資を運ぼうにも、トラックは穴を避け、ゆっくり走らなければなりません。あらゆるインフラが不足し、国際援助が必要なのは明らかでした。

 派遣された自衛隊は、道路の補修や国際機関の敷地の整備などを担当しました。日本の国際支援として、大事な仕事だったと思います。

 しかし、残念ながら、首都ジュバでも大統領派と副大統領派による大規模な戦闘が起きてしまいました。戦車や迫撃砲まで使用しての本格的な戦闘で多数の犠牲者が出ました。

 ところが、防衛省は、これを「衝突」と言い換えました。

 今年2月、稲田朋美防衛大臣は、衆議院予算委員会で、「事実行為としての殺傷行為はあったが、憲法9条上の問題になる言葉は使うべきではないことから、武力衝突という言葉を使っている」と述べたのです。

 これは驚くべき発言でした。「戦闘」という言葉を使うと問題になるから、「武力衝突」という言葉を使って現状を糊塗する。これほど現場の自衛隊員を馬鹿にした言葉はないでしょう。そこで活動している自衛隊員の安全をどう考えるのか、ということです。

 この一言だけでも、この人は防衛大臣にふさわしくなかったのです。

 これだけ危険と隣り合わせの活動をしていた自衛隊の撤収を安倍晋三首相が発表したのは、3月10日夕方のこと。自衛隊の施設整備は一定の区切りがつけることができると判断したというものでした。


©共同通信社

 まだまだやれることは、いくらでもあったでしょうに。

 安倍首相は、南スーダンで自衛隊員に死傷者が出た場合、首相を辞任する覚悟はあるかと国会で問われ、その覚悟があることを示していました。危険な場所から早く撤収しないと、自分の地位が危うい。そんな政治的判断をしたと見られても仕方がないでしょう。

 この日は韓国の朴槿恵大統領が罷免され、翌日は東日本大震災から6年の節目の日。自衛隊撤収のニュースの扱いは小さくなります。それを見越しての発表であることは明らかでした。

 自衛隊の国際貢献活動が、日本国内の政治的判断で左右される。悲しい現実です。

(池上 彰)