ハロー!プロジェクトの新メンバーオーディションが7月15日に始まりました。20周年を来年に控えながら、屈指の人気ユニット・℃-uteの解散と嗣永桃子さんの引退という大きな節目を迎えた今年。日本のアイドル界をけん引してきたハロプロはどこへ向かおうとしているのでしょうか。

「クオリティー重視」に変化なし

 新オーディションは、モーニング娘。やアンジュルムといった個別ユニットのメンバーを募集するのではなく、ハロプロの新メンバーを選ぶという位置づけになっています。エントリーの条件は9〜17歳までの独身女性と、「フレッシュさ」を求めているようです。同時に「歌とダンスに自信がある、歌とダンスが大好き、そしてハロー!プロジェクトが大好きな方、是非ふるって応募してください」と公式サイトにあるように、一貫してステージのクオリティーを重視してきた近年の方針にも変化は見られません。

 そのステージのクオリティーの高さでハロプロをけん引してきた℃-uteの解散や、バラエティー番組で活躍し世間への知名度を高めてきた嗣永さんの引退は、時代の移り変わりをいや応なしに実感させるものです。つんく♂さんが総合プロデューサーを退き3年近くが過ぎようとしていますが、℃-ute解散、嗣永さん引退、そしてハロプロ新メンバーオーディションへという流れは、“つんく♂後”初めて迎えた大きな変化といえます。

 ℃-uteが解散し嗣永さんが引退した6月、新体制発表があり、カントリー・ガールズの森戸知沙希さんがモーニング娘。’17、梁川奈々美さんがJuice=Juice、船木結さんがアンジュルムにそれぞれ移籍してメインの活動を行い、カントリー・ガールズと兼任することになりました。また、ハロプロ研修生の段原瑠々さんがJuice=Juice、川村文乃さんがアンジュルムに加入。そして一岡伶奈さんは新グループのリーダーに就任します。

 7月15日に大阪からスタートした夏のハロプロツアー「Hello! Project 2017 SUMMER 〜HELLO!MEETING〜/〜HELLO!GATHERING〜」から新体制がお披露目され、新メンバーはそれぞれのグループへの帯同を基本として活動しつつ、秋までに完全参加を目指していくのです。

ファン多様化、ハロプロの「細分化」必要?

 近年、ローカルアイドルや地下アイドルを含むアイドル市場は活況を呈しており、いまや飽和状態ともいわれます。そこにおいて、老舗でメジャーなブランドであるハロプロのかじ取りが注目されますが、結成当初からモーニング娘。を応援してきた40代男性ファンはここ数年、コンサート会場の客層の変化を肌で感じているそうです。

「アイドル界全体で女性ファンが増えてきたことも背景にあるのでしょうが、ハロプロの会場も本当に女性ファンが増えました。10年前は僕らのようなオッサンがほとんどでした。今は多い時で4〜5割近くが女性ファンということもありますよ。特に、モーニング娘。とアンジュルムが多いですね」

 たとえば、今秋のツアーをもってモーニング娘。・ハロプロからの卒業を発表した工藤遥さんはボーイッシュなイメージで、女性人気の高いメンバーの一人。工藤さんが舞台で男役を演じたことで女性ファンが増えたといいます。

 また、女性ファンの中には、なんとジャニーズファンと兼ねている人もいるそうです。アイドル誌の編集者によると「ジャニオタと兼業のハロオタ、確かにいます。テレビ共演がきっかけじゃないかと思うんですよね。彼女たちは発信力が高い。口コミの力もあるし、そもそも地方遠征などお手の物ですから」。ひと昔前は、ジャニーズとハロプロメンバーが共演することに対して、ジャニーズファンがナーバスになっていた印象が強いですが、これも時代の変化でしょうか。

「芸能人のファンが増えたのもハロプロが認知される後押しになったと思います。マツコ・デラックスをはじめ、ユースケ・サンタマリア、松岡茉優、ハマ・オカモトらがモーニング娘。やハロプロについて、遠慮なく好意的発言を繰り返していますからね。結果的に、女性にとってもハードルを低くする効果があったのでは」(同アイドル誌編集者)

 一方で、2013年結成のJuice=Juiceは男性ファンが多く、会場の雰囲気も昔のハロプロに近いものがあります。近年のハロプロがクールでスタイリッシュなイメージを打ち出してきた中で、Juice=Juiceのライブは比較的明るく楽しい曲が多く、コミックソング的なナンバーもあり、旧来のアイドルらしさを求めるファンにはなじみやすそうです。

 また、モーニング娘。には一般的な知名度は高くありませんが、生田衣梨奈さんのように小学3年生からゴルフが好きでゴルフ雑誌や番組などに出演し、ゴルフファンに浸透しつつあるメンバーもいます。こうした専門分野を持つメンバーも、ひいてはハロプロ全体を勢いづける原動力の一つとなりそうです。

 こぶしファクトリー、つばきファクトリーはハロプロ研修生からの昇格組で構成されたユニットで、コンサートの動員はモーニング娘。やアンジュルムなどと比べて少ないようですがそれぞれのカラーがあります。こぶしはユニークな楽曲でこってりイメージ、つばきは正統派の印象です。一岡伶奈さんがリーダーを務める新グループは全くの未知数ですがフレッシュな話題を振りまいてくれるでしょう。

 いずれにせよ、女性ファンが増え、ファンのニーズも多様化する中、ハロプロも一層「細分化」していく必要があるといえるのかもしれません。

「ハロプロ新章」の幕開けなるか

「良くも悪くも、ハロプロって古臭いというかクラシックなところがある。やってること自体はそんなに変わっていないんですよ。でも、SNS時代というか、ネット上でゆるく盛り上がっていることがあるんです」と話すのは前出の40代男性ファン。それは、ハロプロショップで1000円で購入できるフィギュアスタンドキーホルダー(FSK)なのだとか。

 FSKは、透明のアクリルにメンバー本人の身長約1/20スケールのビジュアルが入ったもので、自立用の台座もあり、各グループそれぞれを集めて飾った様は圧巻。某メンバーが食事の際に料理と一緒に写したのが人気の発端だそうです。ファンは自分が推すメンバーのFSKをケースなどに入れて携帯し、食事や飲み会などさまざまな場面で撮影してはネットに投稿します。「#ご飯ととるのがいいと聞きました」というハッシュタグでツイッターを検索すると、出てくる出てくる。なかなかの盛り上がりで、活動再開した道重さゆみさんのFSKなどは予約商品となったほどです(受付終了)。

 そもそもはそうした目的で作られたグッズではありませんが、ちょっとしたきっかけで楽しみが広がり、その楽しみを多くの人たちが共有できるノリが、古くて新しいハロプロの良さではないでしょうか。

 ただ、今後のハロプロについてファンの間から聞こえてくる声は楽観的なものばかりではありません。4期加入時からハロプロを応援しているという50代男性ファンは「漠然とした不安を感じることはあります。つんく♂さんの頃と比べて楽曲のリリースが明らかに減っています。以前なら年に3〜4枚はシングルが出て、年2回のハロコンで各グループが披露、アルバムも1年から1年半ペースでした。今はそれが、ファンからしてみると圧倒的に足りていない感があるんです。こぶしは1年くらいシングルのリリースがなかったほどです。やっぱりシングルが出ると盛り上がりますし、応援するモチベーションも高まるんですが」と話します。

 別の40代男性ファンは「最近気にしているのはメンタル面が理由で休養したりするメンバーが目立つこと。なぜかはわかりませんが、モチベーションが保てないのかなとか、ストレスがすごいのかなとか、ファンはやっぱり勘ぐってしまいます」と心配そうです。

 今年から来年にかけての大きな変化がそうした懸念をも払拭し「ハロプロ新章」の幕開けとなることを期待します。

(ライター、フォトグラファー 志和浩司)