Ivy to Fraudulent Gameのドラマはここから始まる リベンジ誓ったワンマンレポ

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 「この壊れちまった喉と、悔しさ、晴らしに行きます」。Ivy to Fraudulent Game(アイヴィ・トゥ・フロウジュレント・ゲーム/以下、Ivy)が、7月9日に東京・恵比寿 LIQUIDROOMにて、『2nd mini album “継ぐ” release tour “告ぐ”』のツアーファイナル公演を開催した。Ivyは、寺口宣明(Gt/Vo)、カワイリョウタロウ(Ba/Cho)、大島知起(Gt)、福島由也(Dr/Cho)からなる4人組ロックバンド。2010年10月に群馬県で結成され、福島が全楽曲の作詞作曲を担当している。

 楽曲の主体はあくまで唄、言葉、思想にありながら、ポストロックやオルタナティブ、シューゲイザーなどの様々なジャンル要素を基にしたサウンドに、ポップなメロディを融合。そこに寺口の繊細かつ凛とした色気ある唄声が重なることで、楽曲の世界観がより一層広がりを見せる。そんな美しくも儚い、Ivy独自の世界観は妙に癖になり、一度ハマったら抜け出せない。楽曲の秀逸さはさることながら、大胆かつシックなライブパフォーマンスもまた、ゾクッとしてしまうほど魅惑的なのだ。

 4月1日から地元・群馬にある高崎clubFLEEZにて幕を開けた同ツアーは、札幌、京都、福岡と各地を順々にめぐり、全国にIvyの音を“告”いで来た。そして約4カ月“継”いで来たものの集大成となり、Ivyにとってはインディーズとしての最後のワンマンライブとなったのが、ツアー最終日のこの日である。ライブでは、3月8日に発売された2ndミニアルバム『継ぐ』の中から新曲「Utopia」「Dear Fate,」「E.G.B.A.」「!」「夢想家」を含む、全14曲が演奏され、バンドとしての新しい幕開けも感じさせた。

 当日、寺口は喉に変調をきたしていた。そんな中、新曲「!」から始まり、カワイがキーボードを奏でる「夢想家」へと続き、「+」「trot」と音を紡いでいく。いつも通り安定したドラムで、どっしりと基盤を築く福島。緻密なフレーズと変則的なリズムを時にダイナミックに打ち鳴らす。力強いバスドラの低音がなんとも心地よく響き渡り、会場を揺らしていった。

 一方、いつもよりややハスキーな声の寺口は、高い音域は少々苦しそうだが、それ以上に熱いパフォーマンスと圧倒的な歌唱力で、会場をグイグイと引っ張っていく。ノイズや爆音に負けず、楽器の音と調和しながらもまっすぐと伸びていく寺口の声。そんな彼に比例して会場も熱気を帯びていった。

 MCを挟み、「Dear Fate,」ではキャッチーなリフとリバーブがかった大島のギター、アグレッシブで情緒的なカワイのベースラインが光る。激しく重厚感あるアンサンブルで、心地よいグルーヴを生み出していった。ライブ中盤では「劣等」「E.G.B.A.」と続き、音数が少なくモダンな音色が特徴的な「Utopia」に。メロウなドリーム・ポップ調の曲に、より一層切なさが増して、思わず鳥肌が立つ。そして波の音とともに「she see sea」、「可憐な花」と1stミニアルバム『行間にて』に収録されている感傷的なメロディが特徴的な楽曲を奏でると、涙するファンの姿も見られた。

 後半では、寺口の唄から始まる「error」で、高い音域が思うように出ず、観客に「ごめん、今日だけ力を貸してください」と呼びかけ、悔しそうに顔を歪めるシーンも。そんな寺口を支えるように拳を挙げていく観客が一人ひとりと増えていき、いつしか会場はたくさんの手で埋め尽くされた。同時に、勢いよくノイジーなギターとベースが掻き鳴らされ、パワフルなドラムが響き渡る。そして寺口の叫びとともにカワイ、大島、福島全員が暴れ出した。一体となり、うねる会場に寺口がマイクを向け、「<あの青に><満たされて><これでいいと思った><あの青に><乱されて><描けない>」とIvyのメンバーとともに観客が唄い出す。大合唱が繰り広げられるその光景に、思わず胸が熱くなった。アウトロで「情けないけど、俺は幸せ者だ! ありがとな」と思いの丈をぶちまける寺口に、会場からは溢れんばかりの拍手が送られる。

 悔しさを噛み締めながら「音楽は勝負……。声が出なくたって勝負」と寺口が叫び、「青写真」を披露。カワイの綺麗な高音のコーラスが寺口の唄を支えつつ、続く初期の頃の楽曲「アイドル」へ。演奏を終えると寺口は、余韻に浸りながら「誇れるものなんて、なかった。全てから、逃げてきました」と声を絞り出す。バンド結成から今日までを振り返り、「19歳の時に、このバンドを辞めようと思っていました」と吐露し、メンバー全員もまたそれに気づいていたことを明かした。「ドラムの福島がね、曲を作ってて、俺はこいつを身近にいる天才だと思ってる。そんな奴が俺が音楽辞たら、『俺も音楽辞めるよ』って言ってくれたんだよ。俺は嬉しかったね。やるしかないと思ったよ」と力強い眼差しで当時の想いを口にし、「23歳現在、この音楽に命かけて誇りを持って真ん中に立ってます」と決意を示した。

 「俺たちの目の前に来たら必ず、幸せにしてあげるからね」と観客をしっかりと見ながら、優しく語りかける寺口。万全を期してツアーファイナルに挑めなかったことへの悔しさをさらけ出し、必ずリベンジすると宣言して、ツアーを締めくくる最後の曲「青二才」へと繋ぐ。寺口のMCに感化され、音に乗せて感情を爆発させるカワイ、大島、福島。熱気に満ちたなんともエモーショナルなパフォーマンスで締めくくった。

 そしてアンコールで、Ivyはメジャデビューを“告ぐ”。その知らせを受け、会場からは喜びの悲鳴が上がり、拍手が鳴り止まなかった。Ivyにとって、新たなステージの幕開けとなったこの日。彼らの進化はまだまだ止まることを知らない。今日というこの日の悔しさをバネに、一人ひとり、そしてバンドとしてさらに飛躍していくこと間違いないだろう。Ivy to Fraudulent Gameのドラマは、まだ始まったばかりだ。(文=戸塚安友奈)