チーター。ナミビア・オチワロンゴの保護施設で(2016年2月18日撮影、資料写真)。(c)AFP=時事/AFPBB News

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【AFP=時事】相対性理論の有名な公式「E=mc2」ほどではないが、一部の動物の走る、飛ぶ、泳ぐスピードが他の個体より速い理由を説明する公式を発見したとの研究論文が17日、発表された。

 この「スピードの公式」によれば、最高速度は筋力だけで決まるのではないという。なぜなら陸生哺乳類、鳥、魚などが加速を維持できるのは、筋肉組織に蓄えられた利用可能なエネルギーを取り出せる時間内に限られるからだ。

 チーターやハヤブサ、マカジキくらいの中間規模の体の大きさが、筋力とエネルギーの出力との間で最高の結果が得られる「スイートスポット」を捉えるのに最適であることを、研究チームは発見した。

 体が小さすぎると、筋肉組織の量が足りなく、大きすぎると、質量が過剰になる。

 動物の体重と動物が移動する媒体(水中、空気中、地上など)が分かれば、その動物の最高速度を90%の精度で予測できることが、今回の研究で明らかになった。

 米科学誌「ネイチャー・エコロジー・アンド・エボリューション(Nature Ecology and Evolution)」に掲載された論文によると、スピードの公式は古代にさかのぼって恐竜でも成り立つという。

 論文の主執筆者で、ドイツ統合生物多様性研究センター(German Centre for Integrative Biodiversity Research)の生物学者のミリアム・ヒルト(Myriam Hirt)氏は「最も大型の動物が最も速いわけではない。この事実に科学者らは長年、頭を悩ませてきた」と話す。

 ヒルト氏はAFPの取材に、重要となるのが筋肉だけだとすると「ゾウの最高速度は時速約600キロに達するだろう」と語った。

 だが、実際はそうではなく、ゾウの最高速度は時速約34キロだ。

 つまり、大型動物は理論上の最高速度に達する前に、筋肉から供給される「無酸素性エネルギー」を使い果たしてしまうわけだ。

 鳥の中で最速はハヤブサとタカで、時速140キロを優に超える速度に達する。地上最速の動物チーターは、時速100キロを楽に超える。

■T・レックスは俊足ではない

 チーターが好む被食動物の一種のスプリングボック(トビカモシカ)が、ほぼ同じ速度で走ることができるのは、偶然の一致ではない。

 ここには進化が作用していると、ヒルト氏は話し、「例えば捕食動物と隠れる場所がほどんどない被食動物など、最大の選択的優位性を獲得する種が、最高速度の予測値に近づく」と説明した。

 対照的に人は、たとえ最高速度に対応する中間規模の体重区分の範囲に入っていても、過去数百年の間、足の速い被食または捕食動物より速く走るよう進化することはなかった。現生人類「ホモ・サピエンス(Homo sapiens)」は、その代わりに知恵を使って他の動物より優位に立つことに注力してきたと考えられる。

 手足の長いキリンは本気で走ると時速60キロに達することができ、クマは最高時速45キロ超で走れるのは数秒間だけで、体に脂肪が多いためにすぐに減速する。

 知られている中で海での最速記録を持つ魚のクロカジキは、時速130キロの超高速で水中を移動する。

 研究チームは今回の最新仮説を、体重が1グラムから10トンまでに及ぶ、軟体動物からシロナガスクジラ、ブヨからオオハクチョウまでに至る動物454種のデータで検証した。

「興味深い点は、陸上、空中、水中の動物にみな同等に適用できることだ」と、豪サンシャインコースト大学(University of the Sunshine Coast)の研究者らはコメントしている。

 今回のモデルは、過去の研究で走行速度が推定されていた数種の恐竜に関するデータにも適合した。

 しなやかな体のヴェロキラプトルは最高時速50キロで走ることができた。その一方で、動きが鈍いティラノサウルス・レックス(T・レックス、Tyrannosaurus rex)の走行速度はその半分にも及ばなかったと、研究は推測している。

 ちなみに、動物の理論上の最高速度に達する加速度kと動物の体重Mとの間に成り立つ魔法の公式は「k=cM^d-1」(cとdは定数)なのだという。
【翻訳編集】AFPBB News