今年も日本からのお客様がひっきりなしに来られます。お付き合いで食事に行くんですが、問題は息子です。毎晩1人にしておくこともできません。連れて行ってもいいのですが、仕事関係の大人たちとの会食はつまらないみたいで、いつもぶすっとしています。
 
今日は若い女性の編集者さんが休暇でパリにやって来たので、「どうする? 一緒に行く? いっさい気を使わなくていい子だよ」と言いましたら、「じゃあ、行く」と珍しく応じてくれました。しかし、着席するなりヘッドフォンをかぶって音楽を聴き出したのです。困ったなぁ、と思っておりましたところ、編集者さんが「なに聴いてるの?」と自然に話をふりました。年が近いせいもあるのでしょうね。そこから息子が彼女と話をしはじめたのです。これは珍しいケースです。
 
シメシメと思ったのもつかの間、今度は突然、話題が私に降りかかってきました。給仕さんとのフランス語のやり取りが気に入らないみたいで、「パパは本当にいつまでもフランス語が酷いんだよね。恥ずかしくてしょうがないんだよ。なんでもっと勉強しないの? ぼくには厳しいくせに自分には甘過ぎない? 恥ずかしいよ」と批判の連続。2人きりの時にはとってもいい子なんです。素直で、言うことをよく聞く優しい子。
 
でも、気の置けない人が現れると突然親への批判が始まります。思春期とか反抗期のせいでしょうか? みんなの前で父親の批判をすることがある種のガス抜きになっているのかもしれません。友達の輪の中にいる息子には本当に近づくことさえできないのです。後ろから肩を叩いても、無視。思春期の少年の気持ちはわかりますが寂しいものです。もっとも彼はたくさんストレスを抱えて生きてきました。日本人なのにパリで生まれ、苦難を乗り越え育ってきた。頼れる親戚もいません。
 
私を使ってガス抜きができるなら別に構わないんですけど、でもねー、落ち込みますよ。何も若い編集者さんの前で親を罵倒することもないのになって思うと泣けてきます。それでも、反抗期や思春期というのは、子供が順調に育っている証拠でもあります。子供に反抗されることを喜べる親でいたいものですね(笑)。そのためには愛情のこもった美味しいもので心をつかむのがいちばんかもしれません。
 
さて、じゃあ、反抗盛りの息子でも、食べだしたら素直になる一品をご紹介しましょう。シンガポールチキンライスです。
 
材料4人分:米2合半、皮付き鶏もも肉2枚、しょうが5g、生のレモングラス1本(乾燥なら小さじ1)、長ねぎの青い部分少々、にんにくチューブ少々、ウェイパー(または鶏がらスープ)中さじ1、醤油大さじ2、酒大さじ2、ナンプラー小さじ1、ごま油大さじ1。
 
ソース:醤油大さじ1、酢大さじ1、ごま油小さじ1、砂糖小さじ1、ナンプラー小さじ1、豆板醤少々、長ねぎ4センチくらい、にんにく1片、すりしょうが小さじ1、ごま少々。
 
まず、鶏肉を半分に切り、米をといでおきます。次に、フライパンにごま油を熱し、鶏肉の皮面だけを焼きます。肉部分には火を入れないで。皮面のみ焼けたらフライパンに出た肉汁ごと炊飯器に移し、米と全ての調味料を入れて、水加減を2合半に合わせます。長ねぎをいちばん上にのせて、炊飯スタート。炊き上がったら鶏肉と長ねぎを一旦取り除き、よく混ぜます。ソースは、しょうがをすり、長ねぎとにんにくを細かくみじん切りにして材料を全て合わせるのみ。豆板醤はお好みで。
 
お皿にチキンライスを盛って完成。最後にきゅうり、コリアンダー、目玉焼きや半熟卵などのお好きな付け合わせ(すべて分量外)をのせ、ソースをたっぷりかけて召し上がれ。
 
ボナペティ!
 
 
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