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山口紗弥加、37歳。今、地味にブレイクしているらしい。

直近では『女囚セブン』(テレビ朝日系)、『バイプレイヤーズ』(テレビ東京系)など、主要キャストにしろゲスト出演にしろ、「山口にフィーチャーした回は視聴率が上がる」という声が飛び交っているようなのだ。

それにしても出演ラッシュだ。この3年間だけを振り返ってみても、連ドラだけで2014年に3本、2015年に6本、2016年に3本。そして、今年もすでに3本。ゲスト出演や単発ドラマを含めると、その数はさらに増える。いつの間にか、女性バイプレイヤーのトップランナーになっていたのだ。

○濃いキャラでも過剰な演技はしない

2010年代に入ってからの主な出演ドラマを挙げると、『絶対零度』シリーズ(フジテレビ系)では、プロファイラーの女刑事。『家族狩り』(TBS系)では、結婚願望が強くウソの妊娠で迫る女教師。『ようこそ、わが家へ』(フジテレビ系)では、熟女パブでアルバイトする総務OL。『ヤメゴク〜ヤクザやめて頂きます〜』(TBS系)では、ヤクザの医療を手がける整形外科医。『コウノドリ』(TBS系)では、人一倍責任感の強い新生児科の医師。

『サイレーン 刑事×彼女×完全悪女』(フジテレビ系)では、大酒飲みのオヤジ風先輩刑事。『ラヴソング』(フジテレビ系)では、生徒にアプローチする調理師学校の事務員。『運命に、似た恋』(NHK)では、浮気を繰り返し、ヒロインに嫌がらせをする社長夫人。『おんな城主 直虎』(NHK)では、夫を亡くしたが、義兄を献身的に支える女性。『女囚セブン』では、罪をかぶって逮捕された政治秘書。

普通のOLから、医師や刑事などの専門職まで。ミステリアスな悪女から、慈悲深い母親まで。振り幅が大きく変幻自在。多くの役を演じて「憑依型女優」と言われる人にありがちな激情型の演技はせず、作品の世界観にスッと溶け込むことができる。だから濃いキャラの役でも主演を邪魔しないし、視聴者に「この女は何か抱えているかも」と含みを感じさせられるのだ。

主演女優クラスの美ぼうに加え、演技力を備えているにも関わらず、中庸でいられることの強み。いたずらに消費せず、抑制を利かせられるからこそ、内蔵されたエネルギー。それこそが、ひたすらバイプレイヤーに徹しながらも輝ける、山口の魅力ではないか。

○20代の停滞期を乗り越えた地道な努力

ただ、これまでの道のりを振り返ると、すべてが順風だったわけではない。

1994年、当時14歳の山口は『若者のすべて』(フジテレビ系)で女優デビューを果たす。それからしばらくは、黒髪と制服の似合う正統派美少女のイメージで女優業を進める一方、1999年から『笑っていいとも!』(フジテレビ系)のレギュラーを2年半に渡って務めたほか、歌手としてシングル6枚とアルバム1枚をリリースするなど、ジャンルを超えて活躍。1990年代後半を代表するアイドル女優の一人として人気を集めていた。

しかし、手を広げたことの反動か、2000年代に入ってからメインの女優業で壁にぶち当たる。20代前半のころは、大人の女優へのステップアップに戸惑い、インパクトを残せないまま徐々に視聴者の印象から遠ざかっていった。

そんな苦境から脱出できたのは、舞台への出演。インタビューやトーク番組で山口自ら語っているように、野田秀樹、蜷川幸雄、杉田成道ら日本を代表する演出家に鍛えられたことで、演技の核と幅ができたのだろう。

もともと山口は、どんなジャンルの作品でも、どんな役でも、全力で向き合う生真面目な性格の持ち主。実際、山口はこれまでの撮影現場で「スタッフに質問をぶつけて脚本の理解を進める」という姿を何度も見てきた。どこかつかみどころのない印象はあるが、それは自分の演技に核と幅があり、「どこにでも振れるし、終わったら元に戻れる」という感覚があるからではないか。

○今後はバイプレイヤーか主演か

山口は7月18日スタートの『カンナさーん!』(TBS系)にも出演。カンナ(渡辺直美)が務めるアパレルブランドの上司・片岡美香を演じる。「仕事には厳しいドSだが、猪突猛進のヒロインを正しい道に導こうとする」というアネゴ肌のキャラは山口の十八番。重要なポジションに得意の役で起用されているところに、現在の充実ぶりが見える。

失礼ながら、「山口の代表作はこれ」と言い切れるものは見当たらない。しかし、それこそが稀代のバイプレイヤー女優であることの証なのではないか。さらに、このままキャリアを重ねていくほど、その事実が凄みとして認識されていくだろう。

しっかり作品の中に存在しつつ、決して浮くことはない。だから視聴者、スタッフの双方から飽きられることもない。山口はこのままバイプレイヤーの道を究めていくのか。それとも、主演女優として輝く日は来るのか。どちらを選んだとしても楽しみだ。

■著者プロフィール

木村隆志

コラムニスト、芸能・テレビ・ドラマ解説者、タレントインタビュアー。雑誌やウェブに月20〜25本のコラムを提供するほか、『新・週刊フジテレビ批評』『TBSレビュー』などに出演。取材歴2000人超のタレント専門インタビュアーでもある。1日のテレビ視聴は20時間(同時視聴含む)を超え、ドラマも毎クール全作品を視聴。著書に『トップ・インタビュアーの「聴き技

84』『話しかけなくていい!会話術』など。