稲田朋美防衛大臣の度重なる失言により、何かと注目を浴びることの多くなった防衛省。このほど外局に当たる防衛装備庁が、自衛隊装備品の調達契約上位20社を発表した。

 2016年度の1位は三菱重工で4532億円。2位は川崎重工の994億円、3位がNEC905億円、4位が富士通783億円、5位が三菱電機の767億円となっている。以下、ジャパンマリンユナイテッド、IHI、東芝、コマツ、スバルの順だ。

 ちなみに1位の三菱重工は、前年度、半世紀ぶりに川崎重工に逆転されたが、見事、再逆転している。 

 こうした防衛省と契約実績のある上位企業には、退官した自衛隊の幹部たちが再就職している。その実態が、情報公開請求によって明らかになった。

 2015年度、1佐以上の天下りNEC7名、東芝7名、三菱電機6名、川崎重工5名、日立2名、IHI2名。三菱重工やジャパンマリンユナイテッド、コマツは1名ずつだ。上位20社の中では受け入れていない企業も数多くあるのだが、上位ほど再就職が集中しているのは間違いない。

 まさに「天下り」と言われてもしょうがないところだが、じつは自衛官ならではの特殊な事情があるのだ。

防衛省資料

 自衛官は若年定年制を採用しているため、1佐は56歳で定年となる。階級が下がるごとに1年ずつ定年が早くなってゆき、2曹3曹となると53歳で退官を迎えてしまう。一般企業の65歳定年に比べると10年以上の開きがある。

 本誌では過去に、自衛官の再就職先を支援する自衛隊援護協会事務局に話を聞いている。

「50代といえば、まだ子供の教育にもお金がかかり、再就職の必要があります。若年定年の補償はありますが、それだけに頼るのは現実的ではありません」

 退官自衛官は、警備員や運転手、営業マンなど、およそ前職と結びつかない職場に再就職する場合が多い。たとえ幹部でも「嘱託」として迎えられるケースも少なくない。

“ヒゲの隊長”でお馴染みの佐藤正久参議院議員も、2014年の取材に「欧米では軍人がその知見を生かすため、防衛関連企業に就職するのは当然。将官クラスでも、まったく防衛と関係ない会社に再就職する人が少なくない。本当にもったいない」と話している。
 

 自衛隊では、1尉や3佐でも100名規模、2佐では300名規模を率いた人も多い。それだけの人材を埋もれさせてしまうのは、たしかにもったいない話だ。