新婚旅行先のモルディブで、夫の俊行さんと一緒に。

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▼外資系高給取りが、突然の転落。生きるためにエアコンなしの生活も……
2008年のリーマンショックは、結婚直後で幸せ絶頂の花輪夫婦から職を奪い、どん底に突き落とした。しかし、2人は短期間で家計再生に成功。その勝因とは何だったのか? 話を聞くと、元・外資系高給取りのプライドをかなぐり捨てた、超・節約の日々がそこにはあった――。

■励まし合いながらとことん話し合う

節約や家計管理の指南書を出版し、メディアやセミナーで引っ張りだこの人気FP・花輪陽子さん。プレジデント誌マネー特集にも何度となく登場するお金のスペシャリストだ。

そんな花輪さんだが、意外にもかつてはお金の面で“どん底”だった時期があった。2009年、30歳のときのことだという。

当時、花輪さんは外資系の某有名投資銀行に勤務していた。外資系金融機関というと高給なイメージだが、実際に給料は平均的な日本企業よりかなり高かったという。

「それなのに、その頃の私は貯金がないどころか、借金さえありました。最大200万円くらいまで膨れ上がっていたと思います」

借金の要因はクレジットカードによる無計画な買い物。買っていたのは洋服やバッグなどだ。当時を振り返り、花輪さんは「仕事のストレスをショッピングで発散する、ダメOLでしたね」と嘆く。

ただし、借金と花輪さんのどん底時代は関係ない。借金が最大値になったのとほぼ同時期、花輪さんは夫・俊行さんと婚約しており、むしろ幸せの絶頂だったのだ。

「夫に借金のことを話していなかったので『バレたら婚約破棄かも』という恐怖もありましたが……。結局、その恐怖が原動力になって節約に身が入り、結婚までに完済できました」

借金を完済したとはいえ、花輪さんの結婚時の貯金はほぼゼロ。一方の俊行さんは浪費家ではなかったが、大学院修了のため同い年の花輪さんより社会人歴が短く、貯金はそれほど多くなかった。

「そんな夫のささやかな貯金も、結婚式やモルディブへの新婚旅行などで使い果たし、2人とも資産と呼べるものは皆無の状態から、新生活が始まりました」

それでも、いままでどおり働いていれば資産は増えるはずだった。ところが2人の行く手を阻むように、リーマンショックが勃発。

「私の勤務先は米国の金融機関だったので、被害は甚大でした。リストラに怯える日々を送っていたところ、突然、私ではなく夫の会社が倒産してしまったんです」

俊行さんはIT企業に勤めていたが、まだ若い会社でもあり、100年に一度レベルの景気後退を耐えぬくことができなかったのだ。

さらに、俊行さんの失業から2カ月後、不安が的中して今度は花輪さんがリストラに。一連の出来事は、2人が結婚してまだ3カ月ほどの時期に相次いで発生。まさに、幸せの絶頂から失意のどん底へ突き落とされた形になった。

しかし、状況はたしかに“どん底”だったものの、2人は比較的早く立ち直ることができたという。

「1人だったら落ち込んでいたと思うのですが、夫婦で励まし合えたおかげです。社宅を出なければならなかったので、あまり悩んでいるヒマもありませんでした」

その後、俊行さんは再就職したが、花輪さんがFPとして独立する準備に入ったため、収入は激減。2人は毎日のように話し合い、節約と家計管理に没頭した。

その資産推移が図。収入は以前より減っていたが、貯蓄はどんどん増えていったのだ。すべて節約や家計管理の見直しによる結果だという。

次のページから、花輪家が家計再生できた理由を追っていく。

■花輪家のピンチを救ったのは、地道な節約と夫婦の絆だった!

▼固定費をカットして、月15万円の節約

無職、貯金ゼロ状態で、頼れるものは退職金と失業保険金のみの状態になった花輪家。まず実践したのは引っ越しだ。

「家賃は1カ月あたり約5万円安くなりました。このとき、『固定費』を削減する重要性を実感したんです」

固定費とは“毎月定額が出ていく費目”のこと。食費など毎月変動する費用と違い、固定費は一度見直せば効果が持続。

「『節約したければ固定費から』とよく言われますが、実体験からしてもそのとおりだと思います」と、花輪さんは話す。

なかでも高額になりやすい固定費が「住居費」「保険料」「教育費」「車費」。花輪さんはこれらを“4大固定費”と呼ぶ。

「子供はおらず、車は持っていなかったので、保険を見直しました。夫婦とも、婚約時に勧められるまま過剰に保険に加入してしまっていたので、最低限の商品にシフト。おかげで年間60万円も浮いたんです」

その他、携帯電話代やインターネット代金も定額の場合が多いので、固定費と言っていい。これらもプランを見直して、月2万円の節約に成功。

「食費など、流動的に支出額が変わる費目は、固定費見直し後に削ったのですが、最終的には以前と比べて1カ月あたり約15万円カットしました。最低限の生活費でやりくりできるようになったので、夫婦の収入の50%を貯めて、残りで生活するよう心がけていました。貯蓄が加速度的に増えたのは、そのスタイルが定着してからです」

▼家計簿アプリで、夫婦の財布をひとつに

結婚当初は、“夫婦別財布”だった花輪家。「例えば水道光熱費は気まぐれにどちらかが負担し、貯金もそれぞれで。ですが、これだと結局家にどれだけの資産があるかわからず、夫に頼って自分はムダ遣い……、なんてことも起こりがちでした」。

失業し、家計と向き合うことになってからは、この別財布制度も改めた。

「夫婦で共同の家計口座をつくり、お金を入れていく形式に変えました。個別の口座に置くのは基本的にお小遣いのみです」

家計口座は花輪さんが管理したが、毎月1回、俊行さんもチェック。口座のお金を使いすぎると俊行さんにバレることになるので、ムダ遣いを抑止する効果も狙った。

また、それまで家計簿をつけたことがなかった花輪さんは、パソコンで使える家計簿アプリで家計管理を開始。

「手書きでなくパソコンの家計簿を利用したのは、そのほうが夫に見せて情報共有しやすいから。それに、手書きよりも計算などがラクで続けやすかったからです」

スマホの普及により家計簿アプリが充実してからは、夫婦それぞれのお小遣い管理は別のアプリを併用するように。

「銀行口座やクレジットカード情報を登録しておけば、入出金が自動で反映されます。ほぼ入力の手間いらず。便利ですよ!」

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<もう手放せない! 花輪家の愛用アプリ>

●Money Look(マネールック)
2009年の失業後、当時は少なかったPCでつけられる家計簿を探していて、出合った。
●Kakeibon(カケイボン)
2011年、ユーザーの評価が高かったので乗り換え。現在も引き続き愛用している。
●Zaim(ザイム)
2011年、お小遣い管理用に導入。支出を図表化して、ムダ遣いをチェックできる。
●Moneytree(マネーツリー)
2014年から、お小遣い管理用に使用開始。画面が見やすくストレスフリー。

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▼資産運用は2人で一緒にコツコツと

花輪夫妻は同時失業の経験から、もしまた同じことが起きても2年は生活できる貯蓄を用意することを決意。

「目標金額が1000万円で、貯まるまでは資産の大部分を安全資産で保有していました。株もやっていましたが、お小遣いを少額投じて、半分勉強でやった程度です」

目標の1000万円は、退職金なども含めて2年ほどで達成。その後は、以前から勉強していた株式投資、投信積み立てなど元本割れリスクのある商品の割合も増やした。

基本的に資金は2人の収入から拠出。運用方針も夫婦で話し合って決めるルールだ。

「運用資金は夫婦2人分をまとめたほうが元本が増えるので、投資をするうえで有効と考えました。以前、お小遣いで短期のデイトレードなどをして失敗した経験も踏まえ、リスクを抑えながら年3%程度の利回りを目指して運用していました。ただ、いまはシンガポールに移住した関係で、資産の内訳は預貯金と夫の自社株のみです」


(31歳)失業時は貯金ゼロ。再就職して多少生活が安定してからは、元本割れリスクのない資産を中心に保有し、貯蓄感覚で投信積み立てを開始。投資の勉強として少額で株式投資も。
(32歳)預貯金が1000万円を超えてからは、株式やE TF(上場投資信託)などへの投資を実行。
(36歳)シンガポール移住に伴い、株式や投資信託を売却。現在保有するのは俊行さんの会社の自社株のみ。預貯金の大半は日本円で、外貨は生活費のみ。今後、外貨の割合を増やす予定。

▼小遣いは減らさず、自分への投資は惜しまず

失業直後はエアコンのない部屋に住み、そのまま2年間もエアコンなしの生活をして節約に励んだ花輪夫妻。一方で、削りすぎないように心がけていた費目もある。それが、食費と小遣い、さらにキャリアアップにつながる自己投資だ。

「食費はある程度は節約していましたけど、やみくもに削りすぎると健康に悪いので、健康への投資だと考えて使うべきものには使っていました。あとは夫婦のお小遣いですね。息が詰まってしまっては、節約は長続きしません。自分たちの楽しみのためのお金は削りすぎないよう注意しました」

花輪さんは洋服、俊行さんはデジタル機器を小遣いで買うことが多いが、それに関してはたまに好きなものを買っても、お互い大目に見ることにしているという。

「ほかに、勉強のための書籍代には、失業直後の緊縮財政のときにも惜しまず使っていました。図書館も活用しましたが、どうしても必要なテキストが多く、そこは惜しむべきではないと考えて買うように。また、私の場合、独立直後は人脈形成のためにセミナーなどの集まりに積極的に参加するなど、交際費にお金をかけていました」

そのおかげもあり、花輪さんはFPの仕事を早々に軌道に乗せることができた。

2015年から、俊行さんの仕事の関係でシンガポールに移住。さまざまな国の人と交流するなかで、ますます“将来への投資”に対する欲が出てきたという。

「シンガポールは物価が高くて、実は家計はちょっと苦しくなっていますが(笑)。子供が生まれてからは、“教育”という投資についても夫婦でよく話し合っています」

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花輪陽子
ファイナンシャルプランナー。外資系投資銀行を経て2009年より現職。メディアやセミナーを通して多様なマネー情報を発信。そのわかりやすさに定評がある。近著に『お金持ちになる女はどっち?』(PHP研究所)。

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(元山 夏香)