集団脱北した北朝鮮レストランの女性従業員ら

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北朝鮮の朝鮮労働党機関紙・労働新聞は15日、韓国の文在寅大統領がドイツ・ベルリンで掲げた「朝鮮半島平和構想」(以下、ベルリン構想)について、「詭弁が列挙されている」と非難しながらも、次のような前向きな評価も含む論評を掲載した。

アイドル並みの「美貌」

「この『平和構想』に6・15共同宣言と10・4宣言に対する尊重、履行を誓うなど先任者らとは異なる一連の立場が盛り込まれているのは、せめてもの幸いである」

ここで言われている6・15共同宣言と10・4宣言とは、文政権の政策的源流とも言える金大中政権と廬武鉉政権が南北首脳会談でまとめたものだ。文氏の「先任者ら」に当たる李明博元大統領と朴槿恵前大統領は、両宣言の融和的な内容と距離を置いていた。つまり労働新聞の論評は、見方によっては、韓国政府が対話路線に戻ったことを素直に喜ぶ内容とも読める。

しかし、本当にそうだろうか。

韓国政府はこの反応を受け、ベルリン構想で掲げたとおり「10月4日に離散家族再会行事を開催しよう」と正式提案した。これに、北朝鮮がどのように反応するかは未知数だが、仮に前向きな姿勢を見せてきたとすると、韓国政府はかえって悩ましい立場に追い込まれかねない。

なぜなら北朝鮮は、中国にある北朝鮮レストランで働いていて昨年4月に集団脱北した女性接待員(ウェイトレス)12人と、脱北後に韓国に定着したものの送還を要求している女性1人が自国に戻されない限り、離散家族の再会はないとの主張を繰り返しているためだ。

一部はアイドル並みの美貌で人気の北朝鮮レストランのウェイトレスは、韓国社会でも注目度が高い。

(参考記事:美貌の北朝鮮ウェイトレス、ネットで人気爆発

そんな彼女らを、韓国政府が北朝鮮に送還する可能性はまずない。そんなことをしたら、彼女らは北朝鮮当局によって「告白会見」を強制され、「自分たちは韓国の朴槿恵政権に拉致された」などと言わされることだろう。そうなったら、金正恩体制に不満を抱く北朝鮮国民も、韓国政府に対してまったく信頼を寄せなくなるかもしれない。

しかし文在寅政権が、北朝鮮との対話の機会を渇望しているのも事実だ。それに韓国では「民主社会のための弁護士の会」など一部の市民団体が、彼女たちを「1日も早く(北朝鮮の)家族の元へ帰すべきだ」との驚くべき主張を展開してもいる。

つまり北朝鮮の金正恩党委員長は、南北離散家族の再会に「前向きなフリ」をすることで、文在寅政権を「対話実現」と「脱北者保護」の間で板挟みにし、窮地に追い込むことができるというわけだ。

しかも、その結果がどちらに転ぼうとも、金正恩氏はまったく損をすることがない。

北朝鮮はくだんの集団脱北が起きた直後から、彼女らの送還に異常に執着してきた。そして遂に、自分たちの失点であったはずの集団脱北を、韓国に心理的圧力を加えるカードにしてしまったのだから、タチの悪いことこの上ないと言えよう。