(写真=著者撮影)チョン・ソンリョン

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J1の川崎フロンターレで活躍する韓国人GKチョン・ソンリョン。今や川崎Fの不動の守護神として絶大な信頼を寄せられている彼の目に、JリーグとKリーグはどう映っているのか。

川崎フロンターレのクラブハウスで行ったインタビューを2回にわたって紹介する。

「Jリーグのスタイルにも適応できましたし、日本での生活にも慣れましたよ。ピッチの中でもピッチの外でも不便なことも、不安なことも何もないですよ」

「川崎にタイトルを」

開口一番にそう切り出してきたチョン・ソンリョン。

彼をはじめて取材したのは、たしか2009年頃だったと思う。当時の韓国代表には2002年W杯で大活躍したGKイ・ウンジェが健在で、まだ24歳だったチョン・ソンリョンは控えに甘んじていた。

だが、2010年南アフリカW杯で正GKの座に就くと、オーバーエイジとして参加した2012年ロンドン五輪では銅メダルに貢献し、2014年ブラジルW杯にも出場。長らく韓国代表の守護神を務めてきた。

一見すると強面だが、ミックスゾーンで声をかけると丁寧に答えてくれる。

2012年に水原三星の一員として沖縄キャンプにやってきたときは、ホテルの一室でロングインタビューに応じてくれたこともあった。

一対一のインタビューはそれ以来だったが、笑顔で出迎えてくれたその表情にはベテランの“風格”があった。その言葉からは“余裕”も感じさせた。

それはJリーグでもたしかな実績を上げてきていることも関係しているのだろう。昨シーズンはリーグ戦29試合に出場。川崎でも守護神の座を確実なものとしている。

「川崎はまだタイトルがないので、なんとしてもタイトルを獲得したい。というか、川崎が無冠であることも僕にJリーグ進出を決断させる、ひとつの要因となりました。

このクラブに初のタイトルをもたらすこと。それが僕にとって大きなモチベーションになっているんです」

これまでJリーグに進出してきた数多くの韓国人選手を取材してきたが、チョン・ソンリョンはやや異なる。韓国でJリーグ進出について語られるとき、必ず待遇面や金銭条件が持ち出されているものなのである。あからさまにJとKの年俸比較をするメディアもある。

そうしたなかで、「無冠のクラブにタイトルをもたらすために日本に来た」と語る選手は珍しい。しかも、チョン・ソンリョンは川崎フロンターレのスタイルをかなり入念に研究して来日したという。

「川崎がボールポゼッションやパスを重視することは知っていましたし、韓国にいるときから映像を見て研究していました。水原にいたときにGKコーチからパス回しを教わっていたので、その経験も生かされています」

「国家代表級GK」の相次ぐ来日

それにしても近年はJリーグにやってくる韓国人GKが増えている。

昨季はチョン・ソンリョンだけではなく、キム・スンギュ(ヴィッセル神戸)、イ・ボムヨン(アビスパ福岡)が来日。今季もクォン・スンテ(鹿島アントラーズ)などがやってきている。
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「国家代表級GK」の相次ぐ来日は韓国でも大きな話題となったが、移籍当時はさまざまな困難が待ち受けているのでではないかと予想していた。

ただ、チョン・ソンリョンは前述した通り、見事な適応力を見せている。それは長年の経験もさることながら、彼自身の地道な努力の成果でもあるのだろう。

「“韓国では…”とか、“Kリーグでは…”という考えも言い訳もしちゃいけないと思います。どこの国でプレーしようと、選手はチームに合わせなければいけない。

川崎に来てからは、ボールをつなぐことを心がけるようになりました。ゴールキックでもつなげる場面であればショートパスでつなぐようにしていますね。そうすることで僕自身も選手として成長できています。

川崎でもGKコーチがそういった部分についてたくさん指導してくれるので自信がつきました」

思えば前出のイ・ボムヨンも「日本のアタッカーはさまざまなオプションを持っている」ことなどを挙げて、Jリーグで得たものが多かったと語っていたが、日本で戦うことは韓国人GKにとっても刺激が多いようだ。

もっとも、チョン・ソンリョンは川崎に馴染むために自分のプレースタイルを変えたわけではない。取材当日に練習を見学したが、黙々とゴールを守るスタイルは韓国時代から変わっていないように見えた。

「韓国にいたときと、さほどスタイルは変わっていません。僕は“ゴールを守る”という自分の仕事に集中しています。今年のACLでは古巣の水原とも戦いましたが、いつもどおりプレーしました。個人のためではなく、チームのために戦う。その気持ちを持ち続けています」

これほど私情に囚われない選手は珍しい。

Kリーグ勢には負けたくない。絶対に勝って韓国のサポーターの前でギャフンと言わせたい。韓国人JリーガーにACLでのKリーグ対決時の心境などについても尋ねると、決まってそんな言葉が返ってくるものだが、チョン・ソンリョンはあくまでも自然体なのである。

では、彼の目にJリーグはどのように映っているのだろうか。次回はチョン・ソンリョンの川崎での生活に迫りたい。(つづく)

(文=慎 武宏)