「人見知り自体は悪ではない」と語るのは、認知行動療法のスペシャリスト清水栄司さん。その著書『大人の人見知り』によると、不安を持ちやすかったり、恥ずかしがったりする人は、繊細で、几帳面で、仕事が丁寧という特徴を持っている、とのこと。そうした性格を逆手にとれば、ビジネスで大きく役立つと言うのです。

今回は、清水さんが提唱する「メンタルコントロール術」を紹介しましょう。あなたが普段感じている壁も乗り越えられるかもしれません。

距離を縮める
「スモールトーク」

クライアントと自分、お互いとも人見知りだった場合、なかなか話が前に進まないことが往々にしてあります。ここでは、相手との距離を縮めるためにはどうすればいいのかを書いていきたいと思います。

まずは、ちょっとした雑談(スモールトーク)で場を温めることです。世間話が苦手でも、時間をとって雑談しようという姿勢は「あなたのことに関心があります」というプラスのメッセージになります。

スモールトークのネタとしては「相手のファッションなど目につくものを褒める」というのが王道とされています。外国人の場合、まず相手のアクセサリーや持ち物などを「素敵ですね」と褒めることから会話を始めるのもいいでしょう。ちなみに、私(著者)がよく使うスモールトークは、ニュースネタです。ネットニュースの見出しだけを見て「こんなことが書いてありましたけど」と会話を始めてしまいます。共通の話題ですので、ニュースネタが会話の潤滑油になってくれることがあります。

しかし、せっかく勇気を出して話題を振っても、相手の反応がイマイチな時もあります。でも、ここでガッカリする必要はありません。大事なのは「スモールトークが外れることもある」と知っておくことです。反対に、あなたが相手のスモールトークに乗れないケースもあるでしょう。まったく知識がないのであれば「興味があるので知りたいです」と話を広げておけばOKです。こうすることで、和やかな雰囲気になるはずです。

「緊張感」が
仕事の質を上げる

人見知りにつきものなのが「緊張感」です。適度な緊張をうまく味方につけると、仕事の準備をする際に精度が上がり、質まで高めることができます。しかし、緊張が過度に大きくなってしまうと、心の中が心配ごとに支配され、不眠症を招いたり疲れ果ててしまうので注意してください。

「人見知り」には几帳面で真面目な人が多く、仕事の準備も入念に行います。しかし、あれこれ考えすぎて何時間もかけていては、仕事の生産性は一向に上がりません。ここは準備しすぎないほうがいい、と割り切りましょう。多少の用意は必要でしょうから、時間を決めてください。完璧ではなくて良いので、ほどほどにすることが重要です。

「30分悩むと500円使ったことになる!」といった具合に、準備の時間を時給に換算するのも有効です。打算的に聞こえるかもしれませんが、そう思うと無闇に時間をかけるのが惜しくなります。

あれこれ悩んで病気などになるのであれば、シビアに考えて悩まなくなるほうが健康的です。

「人見知りだからこそ良い」
という発想の転換

ここでは「軽薄すぎる口八丁手八丁な人」Kさんの事例をご紹介しましょう。

Kさんは営業マン。成績が良く、モノを売ることに自信を持っている人です。確かに彼は口から生まれてきたような人で、明るく勢いが良いのが魅力。しかし残念なことに、誠実さに欠けるところが見受けられます。実際、取引先から「あなたの話を聞いてすごく面白そうだから買ったのに、商品はあまり良くなかった」と、後からクレームが入ることも少なくありません。

彼は口が達者ですが、人間関係は長く続きませんし、大口の顧客もなかなか獲得できません。「人見知りの人」は、口八丁手八丁の人をうらやましいと思っているかもしれませんが、Kさんは参考にできませんよね。

彼の場合は「鈍感力」が強すぎて「敏感力」が足りないのでしょう。そう考えると、人間関係のなかでは、ある程度の繊細さも必要だと言えるのではないでしょうか。すべての話し上手、世渡り上手の人を嫉妬する必要なんて、まったくないのです。みんながみんな外交的な人ばかりだと社会全体としては困ることになるでしょう。内向的な人見知りの人がいるからこそ成り立っている部分もあります。

仮にあなたが人見知りだからといって、悲観することはありません。「こういう性格だからこそ良いところがある」と前向きに捉えることが大切です。

「他人から見た自分」を気にしすぎる大人に向けて、人見知りをしないトレーニングや思考術をまとめた本書。自分の性格をうまく使えば、社会でもうまく生きられると勇気が持てます。人とのコミュニケーションがうまくいかないと悩んでいる人は必読です。