安倍内閣の支持率が急落している。7月に入って行われた読売新聞、朝日新聞、NHKなどの世論調査によると、軒並み支持率は30%台。不支持率は50%であった。また、時事通信が7月7〜10日に実施した世論調査では、安倍内閣の支持率は前月比15.2ポイント減の29.9%となった。ANN(テレビ朝日系)が15〜16日に行った調査でも29.2%となり、ついに30%を切ることになった。

「安倍一強」などと言われてきたが、この態勢がもろくも崩れ去ったということである。きっかけとなったのは言うまでもなく東京都議選だが、もともと安倍内閣の高い支持率は、その政策や政治姿勢が強く支持されたものではなかった。「他に代わるべき政党も、政治家もいない」から、安倍内閣を支持するしかなかったということに過ぎない。

 それが都議選では、小池百合子都知事が率いる地域政党「都民ファーストの会」という自民党に代わる新たな受け皿が誕生したため、自民党が惨敗することとなった。

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首相自身に向けられた不信の声

 なぜ、ここまで支持率が急降下したのか。

 稲田朋美防衛相の都議選での「防衛省、自衛隊、防衛大臣、自民党としてもお願いしたい」発言や、豊田真由子衆院議員の秘書への暴言問題など2回生議員の相次ぐ不祥事を原因だと指摘する声もある。確かに、これも大きな要因の1つであったことは間違いない。

 しかし、最大の要因は何と言っても安倍首相自身にある。

 多くの世論調査で、「首相が信用できない」という回答者が6割を超えている。国民は、なぜ首相を信用できなくなってしまったのか。やはり森友学園(大阪市)問題、加計学園(岡山市)問題が大きいと言わざるを得ない。

 森友学園問題の最大の核心は、国有地の払い下げでなぜ8億円もの値引きがされたのか、ということである。国有地というのは、国民の共有財産である。これを管理しているのが財務省理財局だ。ところがこの財務省には、その経緯を示す資料が何一つ残されていないという。こんな連中に国有財産の管理をまかせて良いのか、根本的な疑念を提起せざるを得ない問題である。

 国会答弁でこの問題の矢面に立った佐川宣寿理財局長は、「記録はないが、適正に処理された」という趣旨の鉄面皮な答弁を繰り返し、疑惑の隠蔽に終始した。憲法第15条には、「すべて公務員は、全体の奉仕者であって、一部の奉仕者ではない」とあるが、佐川氏が行ったことは国民への背信である。

 ところが安倍内閣は、その佐川氏を国税庁長官に昇格させたのである。論功行賞ということなのだろうか。国民を舐めきっているとしか言いようがない。

 加計学園問題でも、そうだ。安倍首相は、「岩盤規制に穴を開けた」と言っている。その面があることは否定しない。だがちょっと待て、である。京都産業大学(京都市)は最近になって、「国際水準に足る質の高い教員を確保することが難しくなった」として獣医学部の新設断念を表明したが、もともとは国家戦略特区を活用した獣医学部の新設を目指していた。

 だがこの構想を挫折させたのが、2016年11月、国家戦略特区諮問会議が「現在、広域的に獣医師系養成大学等の存在しない地域に限り獣医学部の新設を可能にする」という決定を行ったことである。すでに大阪府立大学(大阪府堺市)に獣医学部(学部名は生命環境科学域獣医学類)があるため、同じ関西圏の京都産大は新設を断念してしまった。京都産大にとっては、「岩盤規制に穴を開ける」どころか、より強い岩盤規制をされてしまったということだ。

 京都産業大学の黒坂光副学長は、獣医学部の新設を断念したのは「設置に向けて準備期間が足りなかったから」と記者会見で説明している。「京産大外し」の認識はないとしているが、開学スケジュールなど政府が示した条件には「加計学園ありき、京産大外し」の意向があったのではないかと疑わざるをえない。

 それにしても“学園ドラマ”と揶揄されているように、両学園と安倍首相やその周辺の関係は普通ではない。森友学園問題では、首相の昭恵夫人が深く関わっていた。森友学園の籠池夫人と昭恵夫人とのメールのやりとりは、首相夫人とは思えない異常なものだ。また、加計学園と萩生田光一官房副長官、木曽功内閣官房参与ら、内閣官房とのつながりもまともだとは思えない。

 何が、ではないのだ。共謀罪での金田勝年法相の迷答弁、稲田防衛相の失態に次ぐ失態。それでも大臣として閣内に居座らせる。すべてが国民の眼を恐れていないかのように映ってしまうのだ。

内閣改造で再浮上できるのか

 内閣改造は、8月3日に予定されている。その前に、国会では、首相が出席した閉会中審査が行われる。安倍首相は、この閉会中審査で国民の疑念を晴らしたいと考えているのだろう。だが、疑念を払拭することは相当困難であろう。

 私は常々、“安倍一強”と言われる中での安倍内閣の立ち居振る舞いが気になっていた。

 安倍首相は、民進党などの追及に対して、「安倍内閣の支持率は50%を超えているが、民進党の支持率はご承知の通り」などと、一桁台の支持しかない民進党を揶揄して、丁寧な答弁を拒否してきた。森友学園、加計学園問題でも、何か疑惑を突きつけられると「印象操作だ」という言葉を連発して、正面から答えることを拒否してきた。疑惑を突きつけるのは、印象操作ではない。疑惑にまともに答えないことこそ印象操作である(失敗しているが)。

 これらの態度は、少なくとも私の眼には傲慢としか映らなかった。支持率が20%台にまで落ち込んでしまった今、なんと答弁するのだろうか。

 佐川理財局長が国税庁長官に昇格した人事について、麻生太郎財務相は、平然とした顔で「国会で丁寧な説明に努めた」などと、ふざけた答えをしていた。どこが丁寧だったというのか。当事者意識がまったく欠如しているのである。財務省の責任者は、麻生氏だ。不当に廉価な国有地払い下げについても、最終的には麻生氏が責任をとるべきことなのだ。

 ちなみに、麻生副総理は首相がG20ハンブルク・サミットで外遊中、首相臨時代理を務めていたが、何度かテレビで見かけた閣議前の麻生氏は、いつもヘラヘラ、ニヤニヤと笑っていた。福岡、大分などで未曾有の大雨災害が発生しているのに、こんな顔がよくできたものである。見ているだけで不愉快だった。

 菅義偉官房長官も、記者会見で加計学園問題などについて聞かれた際、木で鼻をくくったような答弁ばかりしている。丁寧な説明とは程遠いものであった。この会見を見た国民が納得するとでも思っているのだろうか。だとすれば、鈍感と言うしかない。

 二階俊博自民党幹事長も都議選中「落とすなら落としてみろ。マスコミの人が選挙を左右するなんて思ったら大間違いだ」などとマスコミに八つ当たりし、実際、多くの都議候補を落選させてしまった。

 安倍首相と麻生財務相、菅官房長官、二階幹事長は安倍内閣の骨格だそうだ。だがはっきり言って、最も立ち居振る舞いに問題のあったのが、この4人である。この骨格を変えないで、どうして改造によって浮上するのだろうか。

 国政段階では、自民党に代わる受け皿政党は存在しない。だからこそ、ほんの少し前までは、「我々には50%以上の支持がある」と見栄を切り、傲慢な態度をとることもできた。だがその支持は、他に選択肢がなかったからに過ぎない。都民ファーストの会が「国民ファースト」などと名乗って、国政に進出すればどうなるか。様相は一変することだろう。

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筆者:筆坂 秀世