テンセントが支援の「インド版WeChat」 1億人が使うHikeの野望

写真拡大

テンセントのメッセージアプリWeChatは中国人の日常に完璧に入り込んでいるが、調査企業IDCのデータでは、インドではフェイスブック傘下のWhatsAppが約9割のシェアを握っている。

WeChatペイのディレクターを務めるGrace Yinは、テンセントは現状で中国人向けのサービスのみに注力していると語る。「海外市場を意識するとしたら、海外に出た中国人向けのサービスが対象になる。中国人の海外旅行先でのニーズに対応したい。母国で慣れ親しんだWeChatペイでの支払いを、海外でもスムーズに行える環境を整えるのが我々のミッションだ」

しかし、これはテンセントが世界第2のスマホ市場であるインドに、全く関心を持っていないという話ではない。テンセントは昨年、インドで設立5年目のメッセージアプリHikeの資金調達を主導し、総額1億7500万ドル(約200億円)の資金を集めた。

Hikeの創業者は29歳のKavin Bharti Mittalだ。IDCによるとHikeはインドにおいてWhatsApp以外で唯一の主要なメッセージアプリのポジションを得ている。

Mittalはイギリスでソフトウェア技術を学び、グーグルでのインターン経験を経て、ゴールドマン・サックスに職を得たが、働き始めて間もなく「これは自分がやりたい仕事ではない」と気づいたという。

筆者がMittalに話を聞いたのは、香港で開催されたテック系カンファレンス、RISE 2017の会場だった。「昨日まで日本の京都に滞在し、禅の修行を積んできたばかりだ」という彼は日本茶をオーダーしてから質問に応え始めた。

Mittalの父はインド最大の通信企業として知られるバーティ・エアテルの創業者で会長のSunil Mittalだが、その事について尋ねると彼はコメントを拒否し、代わりに彼がHikeを作ろうと思ったきっかけであるiPhone 4の話を始めた。

インド初のモバイル決済を実装

2012年、Mittalはインドで数少ないスマートフォンユーザーの一人となった。その頃のインドではネット接続機能もないノキア製の携帯電話が主流だった。これから急激なスマホの普及期が来る事を確信したMittalはすぐにHikeの開発に取り掛かった。

その後数年でHikeは急激にユーザーを増やし、現在は世界で1億人以上の登録ユーザーを抱えている。Hikeの人気の一因は、様々なスタンプが利用できる点。インドの言語は地域によって異なり、ハンドセットからの入力は難しい。タイピングが不要で直観的なイメージをすぐに送信できるスタンプは若者たちを中心に絶大な支持を集めた。

Hikeはその後もユーザーのニーズに沿った機能を盛り込み、今年6月にはインドのアプリでは初めて、モバイル決済機能を実装。競合のWhatsAppらに差をつけた。今後はインドのお祭りの時期に合わせ、現金ギフトを送れる機能も追加するという。これはWeChatの”デジタルお年玉”のインド版的機能と言える。

テンセントからの資金を得たHikeは、インドのスマホ市場を切り開く使命をテンセントから与えられたとも言える。「インドでWeChatを使うのはインド在住の中国人たちだ。彼らはインドでWeChatを広めようとは思ってないし、WeChatはインド向けのローカライズを全くやってない」とMittalは言う。

ベンチャー投資会社GGV CapitalのHans Tungは「WeChatは成熟した市場向けには素晴らしいプロダクトと言えるが、インド市場はまだそこまでのレベルに達していない」と指摘する。

「中国のミレニアル世代は10年をかけてインターネットを理解したが、インドのモバイルのインターネットはまだ3年程度の歴史しかない。インド市場が成熟期を迎えるまでにはまだ2年ほどの時間が必要だ」

経験豊富なベンチャーキャピタリストとしてTungは、テンセントが今後さらにHikeに資金を注ぐと考えている。「テンセントは細かい点に口出しせず、Hikeの成長を見守っていく。自分たちは十分儲かっているし、彼らには好きなようにやらせておけばいいというのが彼らのスタンスだ」

一方でMittalはインド市場で野心的な夢を抱いている。

「Hikeはインド市場でプラットフォーム的アプリに成長していく。自分たちのチャレンジはまだ始まったばかりだ」