親日家の現役スカウト部長が語る「香川、飛躍のカギ」 お手本はオランダ代表10番

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リトバルスキー氏が新生ドルトムントにおける香川の可能性について解説

 日本代表MF香川真司が所属するドルトムントは15日に明治安田生命Jリーグワールドチャレンジ2017で浦和レッズと対戦し、3-2で逆転勝利を収めた。

 ドルトムントは試合前日に来日し、翌日に親善試合という強行日程となったなか、左肩脱臼から調整を続けている香川のプレーは見ることができなかった。

 この試合で特別解説者を務めたヴォルフスブルクのスカウト部長、ピエール・リトバルスキー氏は、ペーター・ボス新監督が就任したばかりのドルトムントについて、現時点での連係面や戦術面を不安視する一方、この日出番のなかった香川についても飛躍のカギを語ってくれた。

ドルトムントは正直良くなかったですね。始動から1週間、来日2日目という部分を差し引いても、前半は決定機と呼べる場面が少なかった。最後の20メートルでのクオリティーが足りなかったように思います。後半はモルが良かった。ポテンシャル通りの局面打開力を見せてくれましたね」

 リトバルスキー氏はこう語った。8月19日のブンデスリーガ開幕戦、ヴァルフスブルクは本拠地フォルクスワーゲン・アレナにドルトムントを迎える。現役時代はジェフユナイテッド市原(現・千葉)でもプレーし、J2横浜FCなど日本で監督経験を持つ親日家のリトバルスキー氏は新生ドルトムントにおける香川の可能性について解説してくれた。

オランダ代表MFのような役割が求められる

「香川のプレーを見ることができなかったことは残念でした。最初に香川がドルトムントでブレークした時には二列目。日本でいうところのシャドーストライカーのポジションでした。セカンドストライカーです。昨シーズン、ドルトムントでは、このポジションが100%存在したとは言えない状況でした。一方、ボス監督は昨シーズンまで率いていたアヤックスで4-3-3を基本システムにしていました。香川は中盤の左でレギュラーを狙うことになりそうです」

 ボス監督が採用する4-3-3システムでは、最終ラインの前にアンカーを配置し、2人の攻撃的MFが並ぶ形が基本となる。トーマス・トゥヘル前政権下で香川はインサイドハーフの新境地を開いたが、今季も同様の役割になるのではないかと分析している。

 そして、香川には参考にすべき選手がいるという。今季アヤックスから2700万ユーロ(約35億円)の移籍金でエバートンに移籍したオランダ代表MFデイヴィ・クラーセンだ。

「香川は昨年のアヤックスにおけるクラーセンのような役割を求められるかもしれません。クラーセンは3人の中盤の一角としてプレーしていました。攻守に機動性が高く、昨シーズンの香川よりも低い位置からスタートします。守備的な仕事も多くこなすうえ、敵陣最後の25メートルに関しては相当高いクオリティーを示します

 彼は自分のサイドにボールが入った時、完璧なタイミングで前線に顔を出します。そして、クロスが来る時には中央にシフトし、その瞬間にそこにいるタイプです。つまり、決定機には常に顔を出せる嗅覚を持っています。深い位置から上がってくるので、マークが難しく、誰もカバーできない。こうしたプレーが香川にも求められるかもしれません」

絶えず動き回り、豊富な運動量が必要に

 昨季アヤックスでリーグ戦14ゴール10アシストと活躍したクラーセンは、ボス戦術の申し子だった。アヤックス時代の4-3-3では中盤の3人はポジションを固定せず、攻守に流動性を見せていた。攻撃時には絶えず動き回り、的を絞らせずにマーカーを翻弄する一方、守備時には深い位置まで帰陣するなど、豊富な運動量が必要になるという。

「クラーセンはたとえるなら、アトレチコ・マドリードのグリーズマンのようなクオリティーの持ち主です。もちろんポジションは違います。グリーズマンは前線の選手。クラッセンはもっと低い位置でプレーをします。彼はミッドフィルダーとフィニッシャーの良いミックスと言えます。すごくレアなタイプで、ここまで高いレベルの選手はそこまでいません」

 フランス代表のエースFWアントワーヌ・グリーズマンとポジションは違えど、類似性があるというクラーセンについて、リトバルスキー氏はこう語った。2020年まで契約延長に応じた香川がボス政権で飛躍を果たすうえで、昨季アヤックスで10番を背負い、3月の国際親善試合でオランダ代表の10番も託されたMFの動きが最高のお手本となるかもしれない。

【了】

フットボールゾーンウェブ編集部●文 text by Football ZONE web

ゲッティイメージズ●写真 photo by Getty Images