インターネットの勢いに押されて数は減ったものの、いまだに音楽スタジオやライブハウスなどで確認できるメンボ(メンバー募集)の貼り紙。これらのなかには、これから始まるバンド活動への憧れや期待の大きさゆえ、少し空回ってしまった「味わい深い」ものも多くみられます。私たちに夢と希望、そして笑いを届けてくれるこれらのメンボは、ひとつの優れた作品なのです。

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第6回 ヤベーやつがヤベーやつを探してる

変わり者ってカリスマっぽい。アインシュタインやスティーブ・ジョブズなど、天才、カリスマと呼ばれる人たちは、変人と呼ばれる一面をもっていることが多い。そしてそれは、科学者や経営者に限られた話ではなく、アーティストも同様だ。それどころか、アーティストに限っては変人であるほどカリスマとして持ち上げられる場合があると言っても過言ではない。ザ・フーのドラマーであり爆弾魔のキース・ムーンや、ライブ中に生のコウモリの死体を食べたというブラック・サバスのボーカリスト、オジー・オズボーンなどのアホ極まりないエピソードはもはや伝説である。

もちろん、すべて思うがまま、欲求のままに行動した「生粋の変人」も多いのだろうが、セルフプロデュース、つまり「演出」で行なっている人もいないわけではないだろう。デビュー当時はトンチンカンなことを意味ありげに言ってたけど、いつの間にか普通のカリスマになったな、といったミュージシャンもたまにみるし、楽曲やファッションは奇抜だけど、ブログやインタビューでは普通のこと言ってるな、と思うことも少なくない。でも、それでいいのだ。格好よければ演出でもいい。

変わり者って天才っぽくてカリスマ性があるし、なんだか孤高な感じもして、カッコいい。そんな人が親近感のあることや共感できる一面を覗かせると、なんだか嬉しくて一気にファンになってしまうみたいなこともある。もちろん、そんなカリスマたちはただ変人なだけじゃなく、確固たる「カッコいい個性」があるからこそカリスマなのだけれど。

〜メンボ内容〜
バンドメンバー募集(Gt、Ba、Dr)
バンドに飢えてる人
1人でやるのに飽きた人
変人(またはそう言われる人)
自分を殺していて、音楽で爆発したい人
当方、元ひきこもり。
夜に全力で歌ってアパートの隣の人に「殺すぞ」って言われるようなやつです。
音楽を誰かとやりたくて、人に飢えてます。

気持ち、わかるよ。

なるほど。メンボ主は過去に何か辛いことがあったのかな。よっぽど大きな何かを抱えて、孤独な思いをしているのかもしれない。その憂鬱な気持ちや孤独感が爆発しそうになって、音楽にぶつけたいんだね。そして、それが我慢しきれず、時に普段の生活の中で漏れてしまうんだよね。うん、わかる。気持ち、すごくわかるよ……隣のやつの気持ちがな!!

夜中にうるさくするなんて、日常生活でやってはいけないことトップ10に入るからな! いくら破天荒なバンドマンでも、最低限のマナーは必要だ! こればっかりは隣人から何かされても罪に問えない。ボクの以前の隣人も、午後23:40頃から1:30頃分にかけて、ほぼ毎晩ブレーンバスターの練習(だと思う)をしていた時期があり、発狂しかけたことがある。その隣人はプロレス修行のためにメキシコに渡ったのか、1年半ほどで引っ越したからよかったものの、何かの際に顔を合わせることがあったら、地獄の断頭台からのマッスル・スパークをお見舞いしてやろうと密かに誓っていた。それくらい住環境の騒音問題はナイーブな問題である。メンボ主よ、悔い改めなさい。

一方で、メンボの内容はわかりやすい。好きな音楽や方向性を書いていないのは、何かのような音楽をしたいのではなく、メンボに書いてある「自分を殺していて、音楽で爆発したい」「音楽を誰かとやりたい」という言葉のとおり、「衝動のまま音楽をやりたい!」「ありのままの表現、カタルシスとしての音楽をしたい!」という気持ちのあらわれなのだろう。それ自体は、なんだかスゴくステキだ。

たださ、キミ、ヤベーやつじゃない? ヤベーやつがヤベーやつ探してどうするの? ヤベーやつはバンドにひとりで十分だから。セックス・ピストルズにシド・ヴィシャスが何人もいたら大変だし、グッドモーニングアメリカにたなしんはひとりでいい。そうじゃないとブレるから。それに、ひとりのほうが際立つから。きっとキミにヤベーやつのフォローはできないと思う。むしろ、キミをフォローできるやつを探したほうがいいんじゃないかな。ツッコミがあって、ボケが生きるわけだから。

結局のところ、ヤベーやつの魅力はちゃんとした人のフォローを受けてこそわかるものなのかもしれない。バンドマンはやたらに個性をアピールしがちだけど、マジのヤベーやつとは一緒にいたくない。話に聞くだけならおもしろいけど、体感すると迷惑なだけのことって意外と多い。ブレーンバスター野郎の代わりに朝9:30頃からうちの向かいに出現するようになった、非常にエモーショナルな雄叫びをあげる女性の声を聴きながら、そんなことを思った。

[綾小路 龍一]