国営新華社通信は習近平中央軍事委員会主席に対して「党中央の核心、全党の核心、軍隊の最高統帥」などの称呼を並べた。中国メディアが同主席を「最高統帥」と呼んだのは初めて。写真は5月中旬、北京で開かれた経済サミット「一帯一路」で発言する中国の習近平国家主席(LINTAO ZHANG/AFP/Getty Images)

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 国営新華社通信は7月10日付の記事で、習近平中央軍事委員会主席に対して「党中央の核心、全党の核心、軍隊の最高統帥」などの称呼を並べた。中国メディアが同主席を「最高統帥」と呼んだのは初めてのことだ。

 歴代の中央軍事委員会主席のなかで、毛沢東、華国鋒、臂平だけに「最高統帥」の称呼が与えられた。華国鋒が在任中、実権を握ることはなかった。軍の実権を掌握し、名実ともに「最高統帥」になったのは毛沢東と臂平だけだった。習近平は江沢民を飛び越えて、毛沢東、臂平と肩を並べたことになる。

 このタイミングで「最高統帥」と呼ばれたのは、江沢民派との闘争の中で習近平陣営がすでに圧倒的な優勢に立ち、今秋に開かれる共産党第19回全国代表(19大)の主導権を手にした、とのメッセージを発信しているとみられる。

 2012年の共産党18回全国大会(18大)後、習近平氏は政府、軍隊、金融など各方面で江沢民勢力の一掃に注力した。政界では、周永康前中央政法委トップ、前政権の大番頭だった中央弁公室の令計画主任など大物幹部は相次ぎ失脚した。軍では、制服組トップの郭伯雄軍委副主席、徐才厚軍委副主席、武装警察の前トップ・王建中、国防大学の前校長・王喜斌が摘発された。金融界では、江沢民派と深いつながりを持つ大富豪の肖建華、保険監督管理委員会トップの項俊波は当局からの調査を受けている。

 国内で反腐敗運動が進められている最中、近頃、北朝鮮問題、国境でインド軍との衝突、南シナ海でベトナムとの紛争が再燃するなど、習近平政権は国内外の難題に突きつけられている。特に、インド軍との衝突が一歩でも間違えば、江沢民派に捲土重来のチャンスを与えかねない。香港メディア・東方日報は11日の記事で、国境での紛争勃発は「異例な事態」だと指摘し、「背後に黒い力が働いているようにみえる」と分析した。

 一連の反腐敗は、江沢民派とそれに附着する既得権益層を刺激した。かつて中国経済を牛耳った既得権益層は「一国の富に匹敵するほどの財力を有し、国外政府とも繋がっている」とされる。

 同記事は、国境での不穏な動きは「内敵の働きかけを疑わざるを得ない」と、反習近平勢力の所業によるものだとほのめかした。

 さらに、背景として「中国軍は現在、再編成の真っ只中にあり、戦闘力がほとんどない」ことを挙げ、このタイミングを狙った周辺国の挑発行為は「黒い勢力が仕向けた」と分析した。

 中国問題専門家の石濤氏は自身の評論番組で「この称呼は江沢民の手中から軍の権力を取り上げたことを意味する。同氏が就任してから5年間をかけて実行した計画で、19大への布石だ」と分析した。

 現最高指導部には、江沢民派のメンバーが3人(劉雲山、張徳江、張高麗)いるが、今秋開催の19大で3人が退任する可能性が高い。江沢民派の最後の牽制を振り切り、習近平第二次政権が発足する。この「最高統帥」の称呼は江沢民派への引導となるのか、19大までの政局の動きが注目される。

(翻訳編集・高遠)