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▶ 【後編】歴代最高のフォルクスワーゲン・ゴルフGTIを探せ 初代/2代目/5代目/7代目が集結

ゴルフGTIは「ホットハッチの象徴」だと言わざるを得ない

新たなカテゴリーを生んだクルマ、と世の中的には信じられているものが、必ずしもそうではない、というのはなかなか興味深い。

ランドローバーは世界初のオフローダーではないし、それを高級車にしたのもレンジローバーが最初というわけではない。

ルノー・エスパス以前にもMPV的なものはあったし、初めての市販ターボ車はBMW 2002ターボでもポルシェ911ターボでも、ましてやサーブ99ターボでもない。

それは、フォルクスワーゲン・ゴルフにも同じことがいえる。ゴルフは最初のハッチバックではないし、ゴルフGTIがホットハッチの祖というわけでもない。

とはいえ、40年以上も前に生まれたクルマの中でも、ゴルフはポルシェ911と並んでいまだにメジャーな存在だ。

同じ頃に販売されていたホットハッチの話をするとき、まずシムカ1100Tiを思い出すひとはまずいないだろう。ルノー5アルピーヌでさえ、ゴルフGTIを押し退けるとは思えない。

使い古されたフレーズで恐縮だが、ゴルフGTIは「ホットハッチの象徴」だと言わざるを得ない。

その理由は、実にシンプルだ。

30年前、初代GTIで感じた「ほかとの差」

ゴルフGTIは、ひとびとが必要とする実用性と、欲しいと思うパフォーマンスを兼ね備えているのである。

この場合の「ひとびと」とは、アウトビアンキA112アバルトの良さを興奮混じりに説明しても、「それ、どこのクルマ?」というような反応しか返さないようなひとびとだ。

実際、誕生した頃のゴルフには、同時期のイタリア/フランス車にないものがあった。

スポーティなクルマの生産クオリティが低かった頃、走りは熱いが、錆の温床のようなクルマはザラにあったので、天候の悪いときに走るのはためらわれた。しかしゴルフは、実用性と楽しさに加え、傷みにくいボディシェルも備えていた。

30年前、すでに古びていた初代GTIに乗っていたのだが、これで友人のとあるホットハッチとスコットランドへ走りに行ったことがある。

夜中に冷え込み、朝が来るとそこには、おのおののホットハッチのかたちをした氷の塊があった。友人たちはチョークをいじり、ペダルを何度も踏み込み、キーを何度も捻るのだが、エンジンはいっこうに掛からず、あとは悪態を吐くほかできることがない始末だった。

わたしはそれを横目にGTIへ乗り込むと、おもむろにイグニッションキーを差し込み捻る。すると、インジェクション仕様のエンジンはすぐさま目を覚ました。あとはデフロスターのスイッチを入れて、凍り付いたガラスの始末をクルマに任せて、朝食を取りに宿へ戻ったのである。

初代の発表から40年以上、ゴルフGTIは7代を数えるまでになった。いまこそ、どの世代がベストなのかはっきりさせたいというのが、今回の趣旨である。

なぜ3代目と4代目を選ばなかったか?

ただし、7世代全てを持ってくるのは合理的ではない。まず3代目は、GTIを名乗るものの、ノーマルのゴルフと大差ないクルマだった。

それに比べれば4代目は改善されていたが、ラインナップ全体のクオリティ追求に走りすぎて、GTIに限ればその名にふさわしい走りを備えていたとは言い難い。

6代目に関しては、5代目のマイナーチェンジ程度の内容だ。よって、この3台は除外することにした。

そうして選ばれた初代と2代目、5代目、そして最新バージョンの7代目を乗り比べ、この長らく支持を集め続けてきたホットハッチのうち、人生のパートナーに選びたい一台を決めようと思う。

なお、試乗車は全てフォルクスワーゲン所有の個体で、採算度外視のメンテナンスを受け、幸運にも経年を感じさせない素晴らしいコンディションを保っているということを、試乗を始める前にお断りしておこう。

これで心置きなくスタートできる。

初代ゴルフGTI、ほかが霞むオーラ

目前に置かれた初代は、控えめなクルマでありながら、周囲も霞むほどオーラを放っているように見えた。内外装とも素晴らしくシンプルだ。

最新モデルに比べると、50cm近く短く、16cmスリムだが、それ以上に驚かされるのは500kgも軽いこと。今回の個体は後期型で、1.8ℓSOHCエンジンを積む。

出力は、初期の1.6ℓより2psアップの114psだが、それ以上に中回転域でのトルク増強が利いている。今日の水準に照らせば非力な方だが、40年前にはファミリーカーとしては新次元のパワーだった。しかも、クルマそのものが軽量なのである。

完璧な運転姿勢は望めない。なぜなら、ステアリングコラムにアジャスト機能がないからだ。しかし、それでも十分に快適で、各部は子どもでもすぐ判るほどロジカルにレイアウトされている。ゴルフボールを模したシフトノブを握りしめ、いざ発進だ。

初代ゴルフGTI、もっとも印象的な点

これは速い。0-97km/hは8.8秒程度だと思っていたが、8.2秒くらいは出せる能力がある。だが、最も印象的だったのは、エンジンのスムースさと積極的な回りっぷりだ。さらに、エンジン音はターボ車にはない個性を持ち、素速く正確に決まるギアチェンジの度に耳を楽しませてくれる。

ただし、ハンドリングでは期待を裏切られる。純粋主義者ならばアシスト無しのステアリングフィールを褒めそやすのかもしれないが、個人的にはコントロールに苦心するスローなラックのギア比が気に掛かった。

コーナーでスロットルを戻せば、後輪は気持ちよく外側へ流れ出すが、グリップはそれほどないので、把握しやすいアンダーステアに終始する。

またフロントのディスクもリアのドラムも小さなブレーキは、右ハンドル車ではマスターシリンダーの取り付け位置が不適切だ。

結局、80%程度の力で走れば素晴らしいが、それ以上に踏み込むと途端に落ち着きをなくしてしまうクルマだ。

2代目はどうだろう?

2代目ゴルフGTI、ひとこと「熟成」

対照的に、2代目は乱れたところを決して見せない。モデルチェンジの常で、先代よりサイズアップしているが、それよりもこの世代を表現するときに浮かんでくる言葉は「熟成」だ。

初代よりはるかに完成度の高いクルマで、静粛性も快適性も桁違い。もちろんキャビンは広く、見た目や感触のクオリティも大幅に高められている。

ソリッドなフィールだが実際に頑丈で、大きな不満もなく25万km以上は走れる能力を持ちあわせている。新車当時の、羨望のまなざしを今でも思いだす。

とはいえ、当時は機能と信頼性で熟成を果たした反面、やや退屈だと言われたものだ。そうは言っても、初代と比べれば、という話である。

それよりも感じたのは、初代より遅いということだ。パワーは多少上がっているが、重量も増しているのだから当然だろう。

ところが、コーナーでの限界ははるかに高く、安定感も称賛に値する。能力の高いクルマはハンドリングに優れるが、それがエンターテイメント性で劣ると感じられるのはやむを得ないところだ。

即席仕立てだった初代は走りに熱さがあったが、より開発が進んだ2代目は、多少荒っぽい運転をしてもそういうそぶりを見せない。快活さも見せるが、より知的でバタバタしたところのないそれだ。

常に意のままに走るというわけではなく、それを望むならその気になってドライブする必要がある。

それが良いか悪いか、判断するのは難しいが、乗るなら初代、所有するなら2代目というのが正直な感想だ。それくらい、この2台は異なる。

しかし、その差は5代目との差ほどではない。

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