浦和から2ゴールを挙げたエムレ・モル。新シーズンが楽しみな19歳だ。(C)SOCCER DIGEST

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[Jリーグワールドチャレンジ]浦和 2-3 ドルトムント/7月15日/埼玉
 
 負傷離脱中のマルコ・ロイスが来日を見合わせたうえ、怪我明けの香川真司はベンチには入ったがやはり出番なし、期待の新星ウスマンヌ・デンベレは先発入りと発表された後に急遽欠場、そして得点源のピエール=エメリク・オーバメヤンは完全にコンディション不良でノーインパクトのまま前半でお役御免……。そんなドルトムントにあって特大の輝きを放ったのが、“トルコのリオネル・メッシ”の愛称を持つ逸材だった。昨夏にデンマークのノアシェランから加入した、入団2年目のエムレ・モルだ。
 
 19歳のトルコ代表MFは、1点ビハインドだった後半頭からセバスティアン・ロデとの交代でピッチに立つと、2シャド―の一角に入って積極的にボールに絡む。最初はややボールロストが目立ったが、身体自体はかなりキレており、徐々にエンジンを上げていく。
 
 すると、76分だった。斜め後方からパスを受けると、2タッチ目で一気に加速してペナルティーエリア内に侵入。チャージしようとした槙野智章を身体を捻りながら一瞬で交わし、そのまま持ち込んでGK西川周作のタイミングを外すトゥーキック。見事な同点ゴールを沈めた。
 
 その3分後には勝ち越し弾まで奪う。ハーフウェーラインを越えたあたりで再び槙野を翻弄して置き去りにし、そのままドリブルで前進。スルーパスはカットされるが、そのこぼれ球をひろったマルセル・シュメルツァーから、マイナスのクロスをもらってこれを左足ダイレクトで叩く。ボールは滑り込んだ槙野の足に当たってコースが変わり、再びゴールネットを揺らした。
 
 ドルトムントは85分に遠藤航のヘディングで同点とされるも、88分にアンドレ・シュールレの一撃で再び突き放して逆転勝利を飾った。MOMは2ゴールのエムレ・モルで異論はないだろう。
 
 エムレ・モルは試合後、自身の名前と背番号をもじった「EM9」という刺繍が入ったキャップをかぶって取材エリアに登場。そして、いかにも19歳らしいあどけない表情と柔らかい雰囲気をしていた逸材は、まず浦和を「ショッキングだった。こんなに強くて、攻めてくるチームだと思わなかったし、こんなに上手いチームだとも思わなかった。ディフェンスも良かった」と評した。
 
 2つのゴールに関しては、「パスが良かった」と謙遜したうえで、「その前に後ろから迫られてチャンスをフイにしていたから、何とか活かしたかった」と振り返っている。
 二度に渡って一瞬で振り切られた槙野は、試合後にエムレ・モルの感想を問われると、まず「速かった」と語った後、こう続けた。
 
「最初に二度、三度とマッチアップしたところでガツンと行けたので、彼も苛立っていたし、自分のほうに(流れを)持っていけたと思った。でも、結局はやられてしまった。あれだけ若くて、あれだけテクニックがあって、速さがあって、ドリブルができる選手は、Jリーグではなかなかいない」
 
 さらにチームメイトの香川も、「持っているものは素晴らしいので、それをしっかりと証明したことは素晴らしい」と称賛した。
 
 とはいえ、プロ2年目の19歳だけに、もちろんまだまだ課題はある。昨シーズンから再三指摘されていた通り、とくに“球離れの悪さ”だ。この日も十八番のドリブルがほぼ常に最初の選択肢で、エリアを問わない無理な仕掛けでボールロストしたり、攻撃の流れを淀ませたりするシーンが何度かあった。実際、ペテル・ボシュ監督も試合後の会見でこう語っている。
 
「彼は素晴らしい才能を持っている。ただ、いつドリブルをするのか、いつパスをするのかという判断力を磨く必要がある。彼がそれを学ぶこと、そして私がそれを学ばせることが今後は大事になる」
 
 昨シーズンは公式戦通算で19試合(先発4試合)・1得点・3アシスト。才能の片鱗は見せたものの、レギュラー定着には至らずバックアッパーの位置づけだった。
 
 しかし、浦和戦でも証明した通り才能に疑いの余地はない。来る新シーズン、ボシュ新監督の下で課題の判断力に磨きをかければ、エムレ・モルは多士済々のドルトムント攻撃陣の中でも重要戦力となるに違いない。
 
取材・文:白鳥大知(サッカーダイジェストWEB)

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