黒塗りの車体のタクシー「Black Cab(ブラックキャブ)」は、イギリス・ロンドンの名物的存在です。そのブラックキャブが時代の流れに従って、ハイブリッドカーに移行しつつあります。ハイブリッド化を進めるブラックキャブは、エコでクリーンな存在になろうとするだけでなく、熾烈な戦いを勝ち抜かなければいけない状況に追い込まれているようです。

London's iconic black taxis are going electric. Your move, Uber.

http://mashable.com/2017/07/11/london-black-taxis-electric/

On London’s Streets, Black Cabs and Uber Fight for a Future - The New York Times

https://www.nytimes.com/2017/07/04/world/europe/london-uk-brexit-uber-taxi.html

世界一難しいと言われるロンドンのタクシー試験をクリアしたドライバーは、「ブラックキャブ」と呼ばれる黒塗りのタクシーに乗ることが許されます。ブラックキャブに乗るということは、過酷な試験をクリアした証であり、安定した収入と自由なライフスタイル、ロンドン市民からの尊敬を集めることを意味しています。

「世界一難しい試験」と言われるロンドンのタクシー免許試験とは? - GIGAZINE



そんなブラックキャブが、従来のディーゼル車からハイブリッドカーに生まれ変わろうとしています。

London Electric Vehicle Company(LEVC:旧The London Taxi Company)は、「TX」と呼ばれるハイブリッドカーを発表しました。



TXは約70マイル(約110キロメートル)まで完全にバッテリーだけで走行することができ、ガソリンに切り替えて約400マイル(約640キロメートル)走行することができます。



デザインは従来のブラックキャブのイメージを崩さない、クラシックなもの。





観音開きのドアを採用しています。車いすを積み込むこともできるとのこと。



TXの価格は未定ですが、The Guardianがタクシー運転手から「5万ポンド(約740万円)前後で価格交渉をしている」と確認しています。なお、従来のブラックキャブは4万3000ポンド(約630万円)だったためコスト増ですが、ハイブリッド車は燃費が良いので、週あたり100ポンド(約1万5000円)のガソリン費用の削減が可能だとLEVCは利点をアピールしています。



NOx・SOxによる大気汚染の問題があるディーゼル車から、ハイブリッドカーのTXに移り変わるのは、環境問題に対する意識の変化が背景にありますが、苦しいブラックキャブ運転手の経営状態も原因にあります。高い品質のサービスを売りに比較的高価な運賃を得てきたブラックキャブですが、近年は配車サービスのUberの攻勢にあい、生計を立てられないドライバーも現れているとのこと。

Uberのサービスはいわゆる「白タク」で、プロのタクシードライバーではない一般人が、隙間時間を使って客を運ぶサービスですが、ブラックキャブに比べて約3割も運賃が安いことから人気になっています。試験もなく参入障壁が低いUberのドライバーの数は、ロンドン・オリンピックのあった2012年のサービス開始から増え続けて今や4万人を超え、ブラックキャブの運転手の約2倍の規模になっています。白人男性が多いブラックキャブに対して、Uberの運転手は女性や移民が多いとのこと。

生活を脅かされているブラックキャブ運転手は、Uberを目の敵にしており、いざこざも発生しています。The New York TimesによるとBrexit問題ではブラックキャブ運転手の多くがEU離脱に賛成票を投じたそうで、ブラックキャブとUberの関係は、移民排斥派対移民というイギリスの社会問題の縮図となっています。

ちなみに、TXをリリースするLEVCも、中国の自動車メーカー吉利汽車の完全子会社となっています。ブラックキャブに関する経済的な状況は、まさにイギリス社会の縮図と言えるようです。