青木愛氏【写真:Getty Images】

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【短期連載第1回】元五輪代表・青木愛さんが語る世界水泳の見所、“3番手との決別”なるか

 水泳の世界選手権(ブダペスト)が14日、開幕した。大会序盤に注目されるのが、初日から行われているシンクロナイズドスイミングだ。日本代表「マーメイドジャパン」は、リオデジャネイロ五輪ではチーム、デュエットともに銅メダル。井村雅代ヘッドコーチ(HC)の下、躍進を狙う今大会、ファンはどこに着目すれば楽しめるのだろうか。08年北京五輪で5位入賞した青木愛氏に見所を聞いた。

「リオ五輪が終わり、次の東京まで4年。最初の1年目というのは、どこの国も探り探り。プログラムを変えたり、誰かが引退したりして、チーム自体が変わることも多い。その中で、どれだけ上に行くか、一つの注目になると思います」

 07年のメルボルン大会に出場した青木氏は、五輪翌年に行われる世界選手権の意義をこう話した。今回は20年東京五輪へ向け、「4年計画」の第一歩となる。

 リオ五輪ではチーム、デュエットともにロシアが金メダル、中国が銀メダル。採点競技で印象が左右するとされるシンクロにおいて、「イメージの序列」を崩していくことが“3番手”の日本にとっては重要となる。

「採点競技なので、『ロシアは圧倒的に強い』と誰もが見てしまう。そして、中国が2番手に位置し、続けて日本とウクライナが並んでいるというイメージがあると思います。審判も機械じゃないので。ただ、リオでは日本がウクライナに勝ったので、今回の世界選手権では『ウクライナより上』というイメージを持ってもらえるはずです。そう考えると、今回どれか一つでも銀メダルを獲ることができれば、東京五輪により良いイメージで臨める。そこも期待したいですね」

 日本の武器について「技術力の高さ、正確さ。細かいところまでしっかり合わせることができるのが一番」と話す一方、日本の上位にはロシア、中国が君臨している。

 果たして、“3番手との決別”を目指す日本と、上位2か国との差はどこにあるのか。

ロシアは「機械が動いているみたい」も…打倒中国は好機「どの種目で逆転できるか」

「ロシアは別次元。人間じゃなく、機械が動いているみたいな印象です。足技の技術、泳ぎの速さ、リフトの高さ、スタイルの良さ、すべてが秀でている。その長い手足をそこまで出したら、日本人が全部出しても敵わないという風になってしまう。今大会に関しては、ロシアが負けることはないと思います」

 こう話しながら、「打倒中国」に関してはチャンスがあるとみている。

「現状、そんなに日本と変わらないと思う。中国の力が少し落ちてきているのか、日本が近づいているのか。ロシアは絶対的な王者なので、2位以降がどうなるか。日本がどの種目で中国を逆転して銀が獲れるか、というのがポイントになります」

 では、今大会、日本が銀以上を最も期待できる種目は何なのか。

「一番はデュエットだとみています。エースの乾由紀子選手がいて、テクニカルルーティンは中村麻衣選手、フリーは中牧佳南選手と組む。中牧選手とのペアは、井村先生も『双子みたい』と言っている。粗も見える時はあるけど、合った時はあっと思わせるような雰囲気があります」

 現状では「ロシア―中国」の差より「中国―日本」の差の方が「圧倒的に近い」という。しかし、ライバルは中国ばかりではない。

青木氏「怖い」という「第4の強国」…「持っているものは間違いなく凄い」

「怖いのはウクライナです」

 こう明かした上で、「第4の強国」について分析した。

「リオ五輪までは日本とウクライナはどちらがメダル獲るか、常に競った状態でした。今回、ウクライナもメダルを獲りに来る。ロシアに体格的に似ていて、リフトの高さも圧倒的に高い。見栄えもするし、日本と同じ技術力と細かさを手に入れたら負けてしまう。スタイルとかバネとか、持っているものは間違いなく凄い。でも、下を見るより上を見るしかないと思います」

 20年東京五輪は自国開催。青木氏は最後にシンクロ界の発展の願いを込め、ファンにメッセージを送った。

「これからどんどん盛り上がってほしいけど、シンクロはなかなか見る機会がない。でも、今回は決勝種目も日本の夜の時間帯に重なる。いい機会なので見てほしいです。シンクロというと、どうしても井村先生のイメージが強いけど、泳いでいるのは選手なので。その演技を見て、選手の凄さを知ってもらえたらと思います」

 ブダペストの地で踏み出す、東京への第一歩。「マーメイドジャパン」はどんな演技で魅了し、一つでも表彰台の高い場所に上れるのか。美しくも激しい、注目の戦いが幕を開けた。

◇青木 愛(あおき・あい)

 地元の名門クラブ・京都踏水会で水泳を始め、8歳から本格的にシンクロナイズドスイミングに転向。ジュニア五輪で優勝するなど頭角を現し、中学2年から井村雅代氏(現・代表HC)に師事する。20歳で世界水泳に臨む日本代表選手に初選出されたが、肩のケガにより離脱。その後も補欠に回ることが多く、「未完の大器」と称された。北京五輪代表選考会では劣勢を覆し、代表の座を獲得。欧米選手に見劣りしない恵まれた容姿はチーム演技の核とされた。引退後は、メディア出演を通じてシンクロに限らず幅広いスポーツに携わっている。