「3⇔4可変」+「前後分断」異端のミシャ式システム

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浦和レッドダイヤモンズ

文 西部謙司

 
 Jリーグですっかりお馴染みの“ミシャ式”。その特徴の1つが攻撃時の中盤空洞化だが、ヨーロッパでも意図的に中盤空洞化を行うチームが増えてきた。サンフレッチェ広島や浦和レッズを真似たのではなく、それぞれの事情で行き当たったアイディアなのだろうが、ミシャ方式には先見の明があったかもしれない。

 浦和のフォーメーションは[3-4-2-1]ということになっているけれども、攻守で形が変わる。攻撃時には3バックの両サイドが開いてSB化し、CBの隣にボランチが1人下りて来る。ウイングバックはポジションを上げてウイングとなり、1トップ+2シャドーと合わせて5トップのようになる。この時中盤にはボランチ1人しかいない。つまり空洞化である。浦和の場合は柏木陽介だけが、9人で作る外枠の中にポツンと1人だけいる格好になっている。

 サイドのプレーヤーがタッチラインいっぱいに開き、外枠をしっかり作った上で、輪の中のプレーヤーとボールを出し入れしながら進んでいくのは、いわば大きな「ロンド」だ。ただ、このロンド式パスワークの権威であるスペインでも輪の中のプレーヤーはだいたい3人いる。セビージャでもナスリ、エンゾンジの2人。そこを1人でやっている浦和はかなり珍しいケースだろう。

 空洞化の狙いの第一はハイプレス回避。相手は前からプレスするにしてもボランチが連動しにくい。ボランチが前へ出れば、浦和の中央の3人(1トップ2シャドー)にバイタルエリアを明け渡してしまうことになるからだ。浦和は相手の第1列と第2列を分断した上で、柏木を中心に後方5人でパスを回してプレスを無力化する。第二は攻め込みスペースの創出。後方での数的優位で相手のFWとMFの間を支配しているので、いずれはボランチも釣り出せる。そのタイミングで中央の3人が間で受けてコンビネーションに持っていく。相手が全体をコンパクトにして押し上げてくれば、サイドへロングパスを供給して一気に最終ラインの外へボールを運ぶ。

 中盤を空洞化しているので、ボールを奪われた時にそのスペースを一気に通過されるリスクはある。実際、浦和は毎年守備では痛い目に遭っているのだが、ペトロヴィッチ監督が重視するのはあくまでも攻撃だ。悪いボールの失い方をしなければいいという考え方であり、実際それで勝てている。サッカーで攻守とも完璧なチームを作るのはまず無理。どちらかに軸足を置いて弱点を露呈しないように持っていくのが定石である。中盤の空洞化は浦和の覚悟の表れなのだ。

TACTICAL KEY player
柏木陽介
1987.12.15(29歳) 176cm / 73kg JAPAN

広島時代から英才教育されてきた“ミシャ式”の申し子。後方部隊と前方部隊を繋ぐリンクマンとして欠かせないプレーメイカーだ。1タッチでボールを後方に流すフリックが名人芸で、2 シャドーの一角でもプレーできる。

Photos: Getty Images