中国が提唱する現代版シルクロード経済圏構想「一帯一路」の海域に当たるインド洋で、日本と米国、インド3国の合同軍事演習が始まった。中印両国は最近、国境線をめぐり関係が悪化。演習は中国を強くけん制する形になった。資料写真。

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2017年7月14日、中国が提唱する現代版シルクロード経済圏構想「一帯一路」の海域に当たるインド洋で、日本と米国、インド3国による合同軍事演習「マラバール2017」が10日から始まった。中印両国は最近、相手国が境界を越えて自国に侵入したと非難するなど関係が悪化。この時期の演習は中国を強くけん制する形になった。

「マラバール」は米印両国が1992年から開始した。オーストラリア、シンガポールが参加したこともある。日本は2007年に招待国として加わり、14年以降4年連続で参加。16年7月の日印防衛相会談での合意を受け、6度目の参加となる今年から正式メンバーとなった。インド洋と太平洋でほぼ毎年交互に実施されており、16年の舞台は日本近海だった。

今回の演習に海上自衛隊はヘリコプター搭載型の最大級護衛艦「いずも」を初めて派遣し、護衛艦「さざなみ」と合わせて隊員約700人が参加した。米原子力空母「ニミッツ」のほか、インド海軍唯一の空母「ビクラマーディティヤ」も初めて加わり、3国の主力艦が揃い踏みした。

演習は過去最大規模で、3国で艦船16隻、潜水艦2隻、航空機など約95機を動員。10〜13日はインド東部チェンナイ港内、13〜17日にはインド東方沖で実施し、実弾射撃を含む対空戦、対水上戦、対潜水艦戦の訓練を行う。

中印両国の対立のきっかけは6月中旬、中国軍がブータンとの係争地に向け道路の建設を始めたことだった。インドは安全上の問題にかかわるとして隣接するシッキム州に兵力を展開。中国側はインド側が越境したと非難した。双方は「深刻な結果を招かぬよう、直ちに部隊を撤退させよ」などと主張。軍事衝突すら示唆する発言の応酬を繰り返す事態になっている。

長い国境線を接する中印両国の紛争は半世紀以上もの歴史がある。1954年、当時の周恩来首相とネール首相の間で「平和五原則」に基づき、平和的解決を確認したが、59年にチベット反乱が起こり、ダライ・ラマ14世がインドに亡命したのを契機に、同年8月と10月に中印両国の東部・西部国境で衝突が発生。62年10月、中国軍は東部・西部国境で大規模な攻撃を行い、インド軍を敗走させた。その後も国境は確定せず、不安定な状態が続いている。

こうした中、インドは5月に北京で開催された「一帯一路」国際フォーラムへの出席を直前になって拒絶した。パキスタンと領有権を争うカシミール地方が「一帯一路」の事業「中パ経済回廊」の対象に含まれていることから、「国家主権と領土保全への懸念を無視した計画を受け入れる国は一つもない」と反発した。経済発展が著しいアジアの両大国の関係には暗雲が立ち込めており、その矢先の日米印合同演習は地域に微妙な影を落としている。(編集/日向)