7月上旬、東山紀之さんが10月スタートの報道・情報番組「サンデーLIVE(仮名)」(テレビ朝日系、毎週日曜 前5時50分〜8時30分)のキャスターを務めることが明らかになりました。近年ジャニーズ事務所のタレントが次々に報道・情報番組へ進出していますが、それにはどのような背景があるのでしょうか。

 発表直後、「ついにヒガシまでキャスターになるのか」という声がネット上を飛び交っていましたが、無理もありません。

 現在、「NEWS ZERO」(日本テレビ系)で櫻井翔さん、「白熱ライブ ビビット」(TBS系)で国分太一さん、「週刊ニュースリーダー」(テレビ朝日系)で城島茂さん、「あさイチ」(NHK)で井ノ原快彦さん、「サタデープラス」(TBS系)で丸山隆平さん、「news every.」(日本テレビ系)で小山慶一郎さんがキャスターを務めるほか、「ZIP」(日本テレビ系)に山口達也さん、「白熱ライブ ビビット」に加藤シゲアキさん、「シューイチ」(日本テレビ系)に中丸雄一さん、「めざましテレビ」(フジテレビ系)に伊野尾慧さんが出演しています。

 テレビ局、曜日、時間帯を総なめにするほどであり、もはや飽和状態の感も……。そうした状況にもかかわらず、事務所トップクラスの東山さんが50歳でキャスターに初挑戦するのですから「ジャニーズ事務所がアイドルを捨てて、社会派にかじを切ろうとしている」とうわさされるのも仕方ないでしょう。

 ジャニーズ事務所のタレントが報道・情報番組を目指す背景には、アイドルとテレビ業界を取り巻くシビアな事情があるのです。

テレビ番組が中高年向けにシフト

 1990年代は男性アイドル全盛期であり、歌番組が多く、十分な活躍の場がありました。しかし、SMAPがデビューした1990年前後に各局の音楽番組が激減。その後一度も増えず、「男性アイドル冬の時代」から抜け出せていないのです。

 さらに、2000年代に入ると音楽業界全般でCDセールスが減り始め、さらに厳しい状況に陥りました。そんなネガティブな時代を経た現在の男性アイドルたちは「人気を上げる活躍の場が欲しい」「固定ファンへのライブとグッズ販売以外の収入源が欲しい」という切実な思いを抱えています。

 彼らの本音は「できるだけテレビ番組に出演して稼ぎたい」であり、ドラマやバラエティーに出演したいところですが、それも難しいのが現実。ドラマは演技派俳優を求める視聴者の意向が強くなり、バラエティーはトーク巧者の芸人が大量出演するようになるなど、活躍の場をなかなか得られないのです。

 また、テレビ業界の置かれた苦しい状況も、男性アイドルにとっては悩ましいところ。ライフスタイルの多様化とネットの普及で、今やテレビ視聴者の中心は中高年層になりました。平日の日中に放送される番組の約9割が報道・情報番組であり、夜の時間帯に生活情報番組やクイズ番組が増えているのも中高年層対策なのです。

 つまり、ジャニーズ事務所のタレントにとっては「アイドルのキャラクターで出られる番組が極めて少ない」ということ。テレビに出て稼ぎたいのなら、社会派タレントとしての顔を持つことが必須条件となっているのです。

「アイドル」「社会派」という2つの顔

 とはいえ、ジャニーズ事務所のタレントたちが「アイドルとしての姿を捨てようとしている」というわけではありません。ライブを中心に据えたアイドル路線のグループ活動と、報道・情報番組への出演を中心に据えた社会派路線のソロ活動という2つの顔を持つのが、今やジャニーズ事務所のタレントとしての王道。グループ活動で華やかさとカリスマ性を、ソロ活動で知名度と好感度を得られるほか、知的でクリーンなイメージからCM出演のオファーも期待できるなど、緻密な計算に基づいたマネジメントなのです。

 しかし、「ジャニーズ事務所のタレントたちは、報道・情報番組に対応できる資質を持っているのか」という疑問は依然として解消されていません。彼らはライブや冠番組などでグループトークを進めることには慣れていますが、報道・情報番組で重要な人生経験や専門知識は乏しく、視聴者と同じ目線からのコメントに終始。「なぜ彼らでなければいけないのか」という問いに答えられていないのです。

 彼らを起用する番組サイドは、先述のように報道・情報番組の全体数が増えたことで、「明るさ」「気軽さ」「笑い」を感じるものを作ろうと考えています。その点、ルックスのさわやかさ、固定ファンを持つ強み、生放送に起用できる安心感などを併せ持つジャニーズ事務所のタレントは魅力的な存在。同じように報道・情報番組への出演を増やしている芸人とは異なる魅力を持つことで、重要な選択肢の一つとなっているのです。

2年前にキャスター役を演じた東山紀之

 東山さんは2015年のドラマ「〇〇妻」(日本テレビ系)でキャスター役を見事に演じ切って称賛を集めました。「バース・デイ」(TBS系)などのナレーションでみせる低音の美声にも定評があるほか、ストイックな人柄で知られるだけに、事前の勉強にも抜かりはないでしょう。今のところ業界内には、東山さんのキャスターとしての資質を疑問視する声はありません。

 ただ、「報道・情報番組のキャスターとして社会派の印象が強くなるほど、カリスマとしての特別な輝きを感じにくくなってしまう」のも、紛れもない事実。両者の共存は難しいものがあり、改めて報道・情報番組への出演を極力避けてきたSMAPメンバーのカリスマ性を再認識させられます。

(コラムニスト、テレビ解説者 木村隆志)