テレビ東京系『孤独のグルメ Season6』番組サイトより

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 ああ、ついに深夜の飯テロも終わってしまったか……。

『孤独のグルメ Season6』(テレビ東京系)は、6月30日深夜の「東京都品川区五反田の揚げトウモロコシと牛ご飯」を最後に、放送を終えた。

 ついに、第6期に突入したドラマ版『孤独のグルメ』であるが、相も変わらず番組は好評であった。第1話では大阪を舞台に、お好み焼きはご飯のおかずであることを知らしめた。

 続く第2話では、定番の豚バラ生姜焼き定食を投入。第3話では趣向を変えて、谷村美月が演じる、なんかメンヘラっぽい不安定すぎる店員に目が離せないという、新手のスタイルで物語を紡いだ。さらに第5話では回転寿司。第9話ではゴローちゃんの過去の恋を描いたり……。

 とにかく、制作陣はさまざまなアイデアを投入して物語を濃厚なものにしようと企図していた。

 限られた時間とテンプレートの中で、試みられたドラマの工夫。その意図は、明らかに視聴者に飽きられることの恐怖であろう。

 確かに松重豊演じるゴローちゃんの演技は上手いし、セリフやらダジャレやらは技巧の塊である。でも、ネットでは絶賛される一方で、実際に『孤独のグルメ』フリークに会うと、また別の感想が。大抵の人が毎週番組を楽しみに観ているという一方で「ちょっと、飽きたな……」と口にする人の多いこと。

 誰もが口を揃えるドラマ版の問題点は、ゴローちゃんが失敗しないことである。

 原作厨というわけではないが、やはり原作との決定的な違いはここである。以前は、アームロックを登場させたり、微妙に原作要素も注ぎ込んでくる制作陣であるが、ドラマゆえにできないことがある。

 それは、ゴローちゃんが失敗することだ。

 原作において重要な要素は、ゴローちゃんが単に食べて満足するだけではない哀愁である。

 原作第1話では、いきなり豚汁とぶた肉いためがかぶったことを後悔。第2話では回転寿司で食べ過ぎて後悔。第6話では、新幹線でジェットボックスシュウマイの匂いをまき散らして後悔。やたらと後悔することが多い。別に食べたものがマズいわけではない。ゴローちゃんの選択のミス。そこに人生の何かを感じさせる谷口ジローの作画が冴えるのである。

 もともと、仕事を依頼された時には戸惑ったという谷口であるが、作画を谷口に依頼した「PANjA」編集部は冴えていた。原作におけるゴローちゃんの帯びている哀愁は、谷口が関川夏央と組んだ『事件屋稼業』のそれと同等。自由の代わりに孤独を背負った中年男の哀愁こそが本題なのである。

 松重ゴローの演技を観るに、その原作における世界観を徹底的に理解していることがわかる。やたらと観ているほうを不安にさせた谷村演じる店員も、原作第10話に出てきた元ヒッピーがやってる自然食の店の女性店員的な危うさを目指しているフシがある。

 でも、リアルに存在する店舗を使っている以上、決して注文したメニューが運ばれてきた途端に後悔するなんてシーンは描けない。その制約が、次第に物語展開の幅を狭くしているような気がしないでもない。

 松重ゴローの食べっぷりは驚嘆である。よくもまあ、胃袋にあれだけの量を詰め込めるなあと思う放送回も何度もあった。けれども、一度くらい「ああ、やり過ぎた……」と、食べ過ぎを後悔するシーンくらいあってもよいんじゃなかろうか。それをファンは期待しているのだ。

 そして、もう一つ。時代の趨勢ゆえだろうが、松重ゴローは煙草を吸わない。さまざま意見はあるだろうが、ハードボイルドな人生に煙草は欠かせないものとも思うのだ。

 いずれにしても、今後とも試行錯誤を重ねて続いていって欲しい『孤独のグルメ』。次のクールを期待して待っているぞ。
(文=昼間たかし)