子供たちがワクワクできるファンタジーを目指したと語る米林監督/撮影/小森大輔

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スタジオジブリで約20 年間活躍し、『借りぐらしのアリエッティ』と『思い出のマーニー』という長編2作品の監督を務めた米林宏昌。共にジブリから独立した西村義明プロデューサーと立ち上げた”スタジオポノック”の初めての長編作品となる『メアリと魔女の花』が、現在大ヒット公開中。そこで米林監督に、今作にかけた意気込みを聞いた。

「鈴木(敏夫)プロデューサーからスタジオジブリの制作部門を解散するって聞いたときに、『でも僕は作りたい』とぼんやりと思っていたんです。だから『マーニー』を作り終えた直後に西村プロデューサーに『作りますか?』って聞かれすぐ『作りたい』と答えていましたね」

そして西村プロデューサーと二人きりの企画会議が始まる。

「魔女をテーマにしたのは西村さんの策略ですね(笑)。図書館で片っ端から児童書を読んでいたときに、西村さんが持ってきたのが『小さな魔法のほうき』という小説。絶対に『魔女の宅急便』と比べられるから嫌だって言ったんですけど、やっぱり原作がすごく面白くて。この物語を膨らませていけば『魔女の宅急便』とは全然違う作品になるだろうなと。そこから脚本の坂口さんと3人で、いろんなアイディアのボールを投げ合いながらつくっていきました」

一方で本作にはジブリを思わせる表現も…その真意とは?

「20年間やっていて、もう染み付いているんですよ、スタジオジブリが。一挙手一投足、表現のひとつひとつに至るまでのノウハウはジブリで学んだもの…本当に感謝しています。だからどうしたら恩返しできるかっていうのを考えたときに、その経験を生かしてひとつの映画を作り上げるというのが答えなのかなと。ジブリが制作部門を解散してアニメーターや技術の人たちがバラバラになっていますが、声をかけて集まってくれた人たちの多くはジブリのときに一緒だった仲間。そこに今回初めてご一緒する方たちも加わり、さまざまな色がミックスされた面白い作品になっていると思います」

“静”の部分が強調された前2作に対して、今回の『メアリ』は冒険、そしてファンタジーというまさに”動”のアニメーションだ。

「次につくるならアクション作品をという想いがあって、それはファンタジーであろうと。ジブリではある時からファンタジー路線は作らなくなったんですが、今の僕たちが新しく作品を作るなら、お客さんがドキドキワクワクするっていうエンタテインメントとしての映画の原点に立ち返ろうと決めました。キャンペーンで全国を回ると、最前列に子供たちがいるんです。その子たちに何か届けられるものを作れているだろうか、彼らに身を乗り出して見てもらえるような物語を作りたいなと」

メアリは魔女という憧れの存在ではなく、子どもたちが共感できる身近なキャラクターだ。

「『マーニー』の主人公、杏奈は感情を押し殺すようなキャラクターだったけど、今回は喜怒哀楽をさらけ出すような女の子にしようと最初から意識していました。思いついたらパッと行動するので、場合によっては理解されない、嫌われる女の子になるかもしれないと危惧はありました。だけど杉咲さんが演じてくれて『メアリならしょうがないか』と許せるキャラクターになってくれたと思います。杉咲さんはまさに天才で、ひと言発するだけでキャラクターがパッと立ち上がってくる。それが思ったところと違う部分で立つんです。メアリという女の子は、大人の僕らが掌握できるところにいないんだろうなと感じました。実際セリフを変えた部分もありましたし、アフレコをしながら新たなメアリを発見していくのが面白かった」

アクションの王道をおさえつつ、メアリのドラマが大きな軸となる。

「このお話はメアリの成長の物語。彼女が自分の容姿やタイプを否定するところから、冒険を通して考え方が変わっていく。自分の力で何ができるか、観ている人がメアリを応援しながら、ちょっと背中を押してもらえる、そういう作品になってくれたら嬉しいですね」

【取材・文/齋藤倫子】