U-20ワールドカップを優勝したイングランド。その原動力となったソランキ(中央)などチームには逸材が揃っていた。 (C) Getty Images

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 過去20年間、イングランド代表は国際舞台において平凡な成績に終始していた。最後に成功を掴むチャンスに恵まれたのは、自国開催であった1996年のEUROだ。
 
 イングランドには、その大会で得点王となったアラン・シアラーをはじめ、ポール・ガスコイン、デイビッド・プラットといった実力派が名を連ねていた。そして彼らが力を発揮して順調に勝ち進んでいったものの、準決勝でマティアス・ザマーやユルゲン・クリンスマンなどを擁するドイツにPK戦の末に涙を呑んだのだ……。
 
 以来、イングランドはワールドカップやEUROなどのメジャートーナメントにおいて、一度もベスト4に進んだことがない。これまでその主因として挙げられてきたのが、育成の拙さだった。
 
 しかし、近年は「イングランドの若手は伸びない」という風潮に変化が起き始めている。その象徴とも言うべき出来事が、5〜6月に韓国で行なわれたU-20ワールドカップの優勝であることは、もはや言うまでもないだろう。
 
 また、同ワールドカップと同時期に行なわれたU-18トゥーロン国際大会でもイングランドは優勝を飾り、さらに5月のU-17欧州選手権でもスペインにPK戦で敗れはしたが決勝まで駒を進めた。
 
 また、現在開催中のU-19欧州選手権も、同じく決勝に進出している。もし7月15日のファイナルでポルトガルを打ち破れれば、イングランドは短期間で3つ目のタイトルを手にすることになる。これまで結果を重視していなかったユース年代の勝利は、FA(イングランド・サッカー協会)改善の大きな兆しだと言えるだろう。
 
 ちなみに、U-21代表は6月にポーランドで行なわれた欧州選手権で準決勝まで進出したものの、ドイツにPK戦で屈している。しかし、これは不名誉な出来事ではない。宿敵はそのまま優勝しており、イングランドとは明らかに力の差があった。
 
 とはいえ、今のイングランドの若手選手たちの基礎技術は完璧に近い。そのうえでダイレクトプレーからのヒールパスなど、多彩なテクニックもオンパレード。見ていて非常に愉快で、力任せの古典的なイングランド人選手たちとは一線を画している。
 とはいえ、問題もある。代表チームで伸び伸びとプレーする彼らも、プレミアリーグにおいては、そのプレー時間が限られてしまっているのが現状なのだ。その典型例がチェルシーに所属するルイス・ベーカーだろう。
 
 U-21代表の絶対的主力に君臨する逸材MFだが、ここ2年はレンタル先のフィテッセでプレー。2014年に下部組織からトップチームに昇格したものの、チェルシーで公式戦に出場したのは、現在に至るまでFAカップの1試合のみに留まっている。
 
 その他のデマライ・グレイ(レスター)、ナサニエル・チャロバー(チェルシー→ワトフォード)、カラム・チェンバース(アーセナル)といったU-21代表の主力たちは、代表レベルの活躍とは裏腹に、クラブでは定位置を掴みきれていない。A代表でも活躍できるレベルにまで成長するには、プレミアリーグでの経験が必要なのは明らかだ。
 
 プレミアリーグの各クラブが、世界最高の放映権マネーを背景に大金で即戦力をかき集め、アカデミー出身の若手を軽視する風潮は、イングランド代表の未来にとって間違いなく大きな問題である。ロナルド・クーマン(エバートン)やマウリシオ・ポチェティーノ(トッテナム)のように下部組織出身者を重宝する監督は少数派にすぎない。
 
 毎年のようにサッカー界の未来を担うような若手が育ち、トップチームで活躍するスペインやドイツに比べれば、イングランドの育成環境には問題が山積みだ。代表チームが本当の意味で成功を収めるには、リーグを含めた全体での改善が求められる。しかし、信じられない移籍金が飛び交い、世界中からタレントが集結するプレミアリーグの現状を考えると、抜本的な改革は簡単ではないだろう……。
 
文:スティーブ・マッケンジー
 
スティーブ・マッケンジー (STEVE MACKENZIE)
profile/1968年6月7日にロンドンに生まれる。ウェストハムとサウサンプトンのユースでのプレー経験があり、とりわけウェストハムへの思い入れが強く、ユース時代からサポーターになった。また、スコットランド代表のファンでもある。大学時代はサッカーの奨学生として米国の大学で学び、1989年のNCAA(全米大学体育協会)主催の大会で優勝に輝く。