ドンナルンマは契約延長翌日の7月12日から、ミランのプレシーズンキャンプに合流した。写真はミランの公式ツイッターより

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 現地時間7月11日、ジャンルイジ・ドンナルンマがミランのクラブオフィス「カーザ・ミラン」で、契約延長にサインした。
 
 契約期間は2021年6月までの4年で、年俸は600万ユーロ(約7億6800万円)。付帯条項として7500万ユーロ(約96億円)前後(正確な数字は非公開)の契約解除違約金が設定されている。
 
 同時に、9歳年上の兄アントニオ(昨シーズンはギリシャ1部で16チーム中13位になったアステラスでプレー)も、第2GKとして年俸100万ユーロ(約1億2800万円)で4年契約を交わした。
 
 アントニオは弟同様にミランの育成部門で育った後、下部リーグへのレンタルを経て2012年夏にジェノアへ移籍したが、その後は第3GKとしてほとんど出場機会がないまま昨夏にギリシャに渡るという、凡庸なキャリアを送ってきた。今回、ミランの第2GKに収まったのも、言い方は悪いが「弟の七光り」以外の理由からではない。
 
 この契約延長で最も大きな利を得たのは、間違いなくドンナルンマ家だ。
 
 来夏に契約満了を控え、当初ミランが提示していた延長オファーは、年俸400万ユーロ(約5億1200万円)の5年契約、契約解除違約金1億ユーロ(約128億円)という条件だった。
 
 代理人のミーノ・ライオラは、ジージョ(ドンナルンマの愛称)の第一希望がミラン残留だということを十分知った上で、6月15日に「延長拒否」という最後通告を叩きつけて、ミラン首脳陣を困難な立場に追い込んだ。
 
 これがサポーターとマスコミの猛反発を招き、ドンナルンマが出場中だったU-21欧州選手権の会場であるポーランドからSNS上まで、あらゆる舞台で抗議の嵐が吹き荒れたことは周知の通り。ジージョの守るゴール裏から投げ込まれた偽ドル札の紙吹雪は、世界中のメディアを賑わせた。
 
 ライオラの取ったこの好戦的かつ高圧的な戦略は、ドンナルンマのイメージ、そしてミラニスタとの信頼関係に大きな傷を残した。
 
 しかし結果的に、ジージョの年俸でプラス200万ユーロ、アントニオのミラン復帰(こちらも年俸100万ユーロ)という、元々法外だったオファーにさらに法外な金額を上乗せした条件をミランからもぎ取ったことも確かだ。
 
 ちなみに、600万ユーロという年俸は、ゴンサロ・イグアイン(750万ユーロ)、パウロ・ディバラ(700万ユーロ)、そして7月12日にユベントス入りが決まったドグラス・コスタ(650万ユーロ)に続く、セリエAで4番目の数字。ジャンルイジ・ブッフォンがキャリアの中で最も年俸が高かった時期(2009年から2013年まで)にもらっていたのと同じ金額である。
 
 欧州中を見渡してもGKでドンナルンマよりサラリーが高いのは、マヌエル・ノイアー(バイエルン)とダビド・デ・ヘア(マンチェスター・U)だけだ。
 
 契約延長前のドンナルンマの年俸は、チーム最低額の16万ユーロ(約2048万円)。月給に換算すると日本円で170万円ほどだった。これがサインひとつで一夜にして約38倍、月給6400万円にも増えた計算だ。
 
 400万ユーロと600万ユーロ、どちらも我々一般人としてはスケールアウトした金額であることに変わりはない。しかし、ドンナルンマ家の立場からすれば、このドタバタの結果として年俸が50%アップし、さらに兄アントニオのキャリアも安定したのであれば、このくらいの犠牲は受け入れられる範囲、ということなのかもしれない。
 
 もちろん、同じミランに残るのであれば、禍根を残すことなく最初のオファーを受け入れていれば、誰もがハッピーになれたはずなのに、という意見にも一理あることは間違いない。筆者も個人的にはそう思う。