瑛太×森田剛『ハロー張りネズミ』には期待しかない 大根仁監督はゴールデンでどう仕掛ける?

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 各局、続々と始まりつつある“夏ドラマ”。そのなかで、ドラマファンはもちろん、映画ファンからも熱い視線を注がれている今季一番の注目作と言えば、やはり7月14日からスタートする『ハロー張りネズミ』(22:00〜/TBS系)になるだろう。「島耕作シリーズ」で知られる漫画家・弘兼憲史の探偵漫画を連続ドラマ化した本作。このドラマに期待せずにはいられない理由を、いくつかのポイントに分けて見ていきたい。

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■瑛太と森田剛の“ナイス・バディ”に期待

 東京都の板橋区、下赤塚にひっそりと事務所を構える「あかつか探偵事務所」。そこで働く主人公・七瀬五郎を演じるのは、『若者たち2014』(フジテレビ系)以来、実に3年ぶりの民放連続ドラマ出演となる瑛太だ。そんな五郎の相棒……“バディ”役を務める「グレさん」こと木暮久作を演じるのは、V6の森田剛。この秋には新垣結衣とダブル主演を務める映画『ミックス。』が公開される瑛太と、昨年主演した映画『ヒメアノ〜ル』で、そのダークな芝居が各方面で絶賛されるなど注目度が上がっている森田という、これまでにない新鮮なコンビは、本作のなかでどんな“バディ”っぷりを見せてくれるのだろうか。まずは、そこに期待したい。

 本作の脚本/演出を務める大根仁とタッグを組むのは、『まほろ駅前番外地』(2013年/テレビ東京)ぶりという瑛太。同じく、深夜ドラマ『演技者。』(2003年/フジテレビ)、『劇団演技者。』(2004年/フジテレビ)など、かなり早い時期にタッグを組んだ経験がある森田。2人の共演は今回が初となるけれど、いずれも大根監督とは旧知の間柄。それどころか、基本的には「同じ役者で主演作は撮らない」と公言している大根監督が、初のゴールデン連続ドラマを撮るにあたって、再びタッグを組むことを決めた2人なのだから、そこにはある種の確信と手応えがあるに違いない。何にせよ、これまで見たことのない瑛太と森田の芝居が見られることは、ほぼ間違いないだろう。

■大根組初参加となる“女優たち”に期待

 大根監督と言えば、やはり“女優”である。これまで、真木よう子、満島ひかり、長澤まさみなど数々の女優を魅力的に撮り上げてきた大根監督。その彼が、今回レギュラー陣に据えたのは、ミステリアスなヒロイン・四俵蘭子を演じる深田恭子と、「あかつか探偵事務所」の所長・風かほるを演じる山口智子だ。いずれも今回が初参加となる大根作品で、彼女たちはどんな新しい魅力を振りまいてくれるのだろうか。

 さらには、五郎たちが入り浸るスナック「輝(キララ)」で働くバイト役として、“新グラビアの女王”の異名を持つ片山萌美が、ドラマの中盤からは、謎の美人霊媒師として蒼井優が出演するなど豪華な女優陣がラインナップされている。ちなみに、もはや大根作品には欠くことのできない存在となっているリリー・フランキーも、裏社会に詳しい出版社の経営者として出演する。そのほかにも、毎回異なるゲスト出演者として、ムロツヨシ、國村隼などが続々登場するなど、こちらも楽しみなラインナップとなっている。

■大根監督ならではの“音楽”に期待

 さらに、大根監督と言えば、毎度毎度、作品の世界観に見合った秀逸な“音楽”のセレクトでも知られている監督だ。その出世作となったドラマ及び映画『モテキ』では、主題歌に起用したフジファブリックをはじめ、新旧さまざまなJ-POPの名曲を劇中で使用、映画『バクマン。』ではサカナクションの山口一郎に劇伴を依頼、昨年の映画『SCOOP!』では、TOKYO NO.1 SOULSET feat.福山雅治という意外な組み合わせも実現させている。そんな大根監督が今回劇伴を依頼したのは、爆音ジャズバンドとして知られるSOIL&“PIMP”SESSIONSだ。

 ライブを中心に国内外で広く活躍する一方、椎名林檎など数々のコラボレーションで知られるSOILは、このドラマをどんな音楽で盛り上げてくれるのだろうか。さらに、その主題歌「ユメマカセ」には、RADWIMPSの野田洋次郎が作詞及びフィーチャリング・ヴォーカルとして参加していることも発表されている。昨夏、映画『君の名は。』の主題歌「前前前世」で、これまで以上に幅広い層からの支持を獲得した野田洋次郎。彼は、今回が初共演となるSOILの面々と、どんな化学反応を起こしているのだろうか。そちらも気になるところである。

■そもそも原作漫画が面白い

 ところで、『ハロー張りネズミ』と言えば、アラフォー以上の男性にはお馴染み、昭和の名作漫画のひとつである。1980年の創刊時から1989年まで「週刊ヤングマガジン」(講談社)で連載され、その単行本は全24巻を数える『ハロネズ』(ちなみに、“張りネズミ”という五郎のあだ名は、徹夜で張り込みをすることが多い探偵業を、自ら“張り寝ず視”とボヤいたことに由来している)。その魅力は、“探偵漫画”というフォーマットでありながら、依頼される事件によって、市井の人情話からサスペンス、オカルト、果ては埋蔵金や国家間の陰謀に至るまで、回を追うごとに大胆に変化してゆく物語の幅広さにあった。その醍醐味は、今回のドラマ版でも踏襲されるとのことなので……というか、このドラマが「まったく新しい変幻自在な探偵ドラマ」と銘打っている理由は、そこにある。

 1991年には唐沢寿明主演で映画化、1996年には緒形直人主演で単発ドラマ化されるなど、これまで何度も映像化されてきた『ハロネズ』を、自ら脚本も手掛ける大根監督は、どんなふうに現代によみがえらせていくのだろうか。『モテキ』、『バクマン。』など、漫画の映像化には定評のある大根監督だけに、そこにはもはや期待しかない。ところで、10日発売号と15日発売号の「週刊ヤングマガジン」には、26年ぶりとなる『ハロー張りネズミ』の新作エピソード(前後編)が掲載されるとのことなので、気になる方はそちらもチェックしてみていただきたい。

■結局のところ、大根監督に期待

 そう、結局のところ、このドラマに対する期待の中心は、大根監督その人にある。かつて“深夜ドラマ番長”と呼ばれた大根監督も、今や映画『モテキ』、『バクマン。』、『SCOOP!』、さらには9月16日に公開が決まった妻夫木聡主演の映画『奥田民生になりたいボーイと出会う男すべて狂わせるガール』など、映画監督として広く知られる存在に。8月18日に公開されるアニメ映画『打ち上げ花火、下から見るか?横から見るか?』の脚本を担当していることも、大きな注目を集めている。

 しかし、そんな彼が唯一やっていなかったもの……それがゴールデンの連続ドラマだった。それだけに、本作に掛ける監督の気合いは十分だ。というか、ゴールデンの連ドラで、ひとりの人間が脚本と演出のすべて担当するのは、非常に稀な事態と言えるだろう。“バディもの”と言えば、『まほろ駅前番外地』、“探偵もの”と言えばオダギリジョー主演の『リバースエッジ 大川端探偵事務所』(2014年/テレビ東京)など、自らが得意とするジャンルで、満を持してゴールデンに殴り込みをかける大根監督。

 かつて探偵ドラマと言えば、萩原健一主演の『傷だらけの天使』、松田優作主演の『探偵物語』など、ゴールデンの“花形”とも言える人気ジャンルだった。今回の大根版『ハロー張りネズミ』は、そんな名作たちに名を連ねる、“探偵ドラマ”のスタンダードとなるのだろうか。脚本はもちろん、音楽や衣装(今回も伊賀大介が担当)、美術に至るまで、徹底したこだわりで知られる“大根組”が生み出す、新しい探偵ドラマの世界に期待したい。

■麦倉正樹ライター/インタビュアー/編集者。「smart」「サイゾー」「AERA」「CINRA.NET」ほかで、映画、音楽、その他に関するインタビュー/コラム/対談記事を執筆。