『人生が劇的に変わる睡眠法』(白濱龍太郎著・プレジデント社刊)

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睡眠こそが人生を豊かにするものだと盛んにいわれるようになってきた。睡眠が変われば、人生が変わる、と。寝る間を惜しんで働いているつもりの私たちには、ピンとこない話である。実際、人生を変えるような睡眠の方法があるのだろうか。そこで、『人生が劇的に変わる睡眠法』(プレジデント社)の著者である白濱龍太郎先生に、良質の睡眠を手に入れる方法を相談してみることにした。

■どんどんふくらむ睡眠負債の先は?

【白濱】どうされましたか?

――先生のところへ行くと人生が変わる睡眠法を教えていただけると聞いたのですが……。

【白濱】そうでしたか。それじゃあ、まず睡眠時間はどのくらいか教えてもらえますか?

――平均4〜5時間くらいだと思います。

【白濱】それは、少ないですね。睡眠が短くなると、体の疲れはとれないし、脳は情報整理や修復もできません。その状態で目覚めても脳がリセットできていない状態ですから、集中できずにぼーっとする日が続いてませんか?

――そうですね。最近、集中力が落ちているのは自覚しています。

【白濱】睡眠負債という言葉を聞いたことがありますか?

――負債というくらいですから、よくないものだということはわかりますが……。

【白濱】睡眠不足が積み重なっていくことを睡眠負債といいます。そして、睡眠負債がふくらむと、体に異変が起きてきます。まず、人としてのあらゆる能力が損なわれて低下します。判断力、体の反応速度、状況の把握能力、記憶力、コミュニケーション能力などすべてです。どの程度落ちると思いますか?

――2割程度ですか?

【白濱】すべての能力が2〜5割低下するそうです。

――5割も?

【白濱】それだけではありません。睡眠負債がふくらむと、免疫力が落ちるし、血糖値は上がるし、内臓脂肪はたまりやすくなります。生活習慣病を引き起こす要因ばかりですね。それに認知症のリスクも高まります。

――睡眠負債って何一ついいことがないじゃないですか。でも、現実的には睡眠不足を解消するのはなかなか難しいですよね。仕事も忙しいですし。

【白濱】インターネットで世界中がつながって、昼も夜もない時代だということはよくわかっています。ビジネスの現場では、競争に勝つためにスピードを求められているのも知っています。じゃあ、自分の時間のどこを削るかと考えると、睡眠時間が手っ取り早いこともよくわかります。

――普通に仕事しているだけで睡眠不足になってしまいますからね。

【白濱】アメリカやドイツでは、3人に1人が平日に十分な睡眠がとれていないといいます。日本にいたっては3人に2人が平日に十分眠れていないと答えています。

――なんだ、みんな睡眠不足じゃないですか。

【白濱】そうなんです。世界中の人が睡眠不足なんです。だからといって、睡眠を削っていいわけではありませんけどね。

――それはそうですが。

■良質の睡眠への近道は質より量!

【白濱】私にはどうしてみんな寝る時間がないのか不思議なんですよ。一晩、二晩、無理するならわかるんですけど、長期的にとなるとね。本当に寝る時間がないんですか?

――も、もちろんじゃないですか。朝7時に家を出て、家に帰るのは夜の9時を過ぎるのがほとんどですから。

【白濱】午後9時に帰宅して何時に寝ますか?

――午前1時とか、遅いときは3時になるときもあります。

【白濱】午後9時から午前1時まで4時間ですか。夕飯を食べたあとは?

――仕事のことを考えたり、スマホをいじったり、ゲームをしたり、テレビを見たり、パソコンで動画を見たり。その日によって違います。

【白濱】そして気づいたら夜中の1時……。睡眠時間、あるじゃないですか。

――ご飯を食べたら、すぐに寝なさいってことですか? 無理ですよ。見たいドラマはあるし、スポーツニュースも見たいし、フェイスブックやラインもチェックしないといけないし、忙しいんですから。

【白濱】だから、睡眠時間を削る?

――……。睡眠時間が一番削りやすいですから。

【白濱】ほとんどの人が睡眠の必要性を過小評価しすぎています。睡眠不足という高い代償を払って結果はどうですか? 仕事ではパフォーマンスが落ちるし、体調は悪くなるし。睡眠時間を削ることがマイナスに働いていると思いませんか?

――否定はできませんね。それでは、どうすれば?

【白濱】午後9時過ぎに帰宅するなら、午後10時に布団に入るのは現実的に無理だと思います。でも、午後11時ならなんとかなりそうですけどね。

――いや、午後11時に寝るのもちょっと……。いろいろとやることがあるので。そもそも、何時間くらい眠ればいいんですか?

【白濱】理想の睡眠時間は6.5時間から7.5時間。でも、今の生活からいきなり、それだけの時間をつくるのは難しいと思います。ただ、少しは睡眠時間を増やせると思います。その少しの違いで昼間のパフォーマンスが大きく変わってきます。脳がしっかり整理されるし、体の疲労も回復しますから。

――寝ないで頑張るより、寝たほうがパフォーマンスは上がるということですか?

【白濱】そういうことです。帰宅時間を早めることは簡単ではないでしょうから、まずは夕食後の生活を見直すことですね。私は睡眠が大切だと自覚した頃から、こう考えるようにしました。「本当に、この遊びは必要なの?」「本当に、この時間は必要なの?」と。

――本当に必要な時間、ですか。

【白濱】十分な睡眠をとる時間がないというのは思い込みです。実際には、自分でコントロールできる時間は想像以上にたくさんあるものです。その時間を見つけ出せるかどうかは、自分が時間をどう使っているのかを正直に見つめることによります。

――まあ、テレビを絶対に見なきゃいけないということもないし、フェイスブックのチェックも毎日やる必要もないし、ゲームは最初からやらなければいいだけで。

【白濱】そうでしょう。その時間を少しだけでも睡眠時間にあてる。ほんの30分多く寝ただけでパフォーマンスがアップするんですから。

――なるほど。

【白濱】良質の睡眠を手に入れたいなら、まず自分の24時間の棚卸しをすることです。睡眠は質を高めるよりも、量を増やすほうが圧倒的にいい睡眠を手に入れる近道になります。とりあえず、そこから始めましょう。

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白濱龍太郎(しらはま・りゅうたろう)

医学博士・日本睡眠学会認定医。筑波大学医学群医学類卒業。東京医科歯科大学大学院医歯学総合研究科統合呼吸器病学修了。東京医科歯科大学呼吸器内科・快眠センター、公立総合病院睡眠センター長ほかを経て、2013年6月からRESM新横浜/睡眠・呼吸メディカルケアクリニック(日本睡眠学会認定A型施設)院長。経済産業省海外支援プログラムに参加し、海外の医師たちへの睡眠時無呼吸症候群の教育を行うとともに、順天堂大学医学部公衆衛生学講師として睡眠予防医学の観点から臨床研究発表、講演も行っている。現在、国内企業と組み、ビジネスパーソンのパフォーマンス向上のためのオーダーメイド睡眠改善プログラムを開発中。さまざまな挑戦を続けている。

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(医学博士・日本睡眠学会認定医 白濱 龍太郎 質問者=洗川俊一)