金正恩氏

写真拡大

韓国の警察当局は3日、ゴルフ場から47歳の女性を拉致し殺害、遺体を遺棄した容疑で男女カップルと、男のまたいとこの合計3人の容疑者を逮捕した。事件が起きたのは先月24日午後8時半ごろ、遺体が発見されたのは3日後の27日午後6時ごろだった。事件発生から容疑者検挙までわずか6日のスピード逮捕となった。

韓国社会を驚愕させたこの事件の一部始終をメディア報道で見ていた、韓国に来て3年目の脱北者チャンさんは、韓国警察の動きの素早さに驚くと同時に、北朝鮮の保安署(警察)の無能ぶりを嘆いたと、韓国の北朝鮮専門メディアであるニューフォーカスが報じている。

北朝鮮の保安署は、汚職の温床である。例えば、金正恩党委員長が売春取り締まりを厳命しても「どこ吹く風」だ。犯罪組織はワイロを駆使して保安員(警察官)を懐柔。むしろ用心棒として味方につけるなどして、売春ビジネスはいっそう組織化され、拡大しているのだ。

(参考記事:コンドーム着用はゼロ…「売春」と「薬物」で破滅する北朝鮮の女性たち

しかし、さすがに重大事件が発生したらそれなりの捜査をするだろう――そう思いきや、実態は違った。北朝鮮では殺人事件が起きても、保安署はほとんど何もしようとしないという。

保安署の監察保安員がやって来て現場を確認し、証拠写真を何枚か撮影、容疑者の痕跡があれば軍用犬を放って追跡させるのがすべてだ。

また、電力事情が劣悪であるため、監視カメラの使用は労働党の施設などを除けばほぼ不可能だ。そもそも、一部の例外を除けば、容疑者の情報が公開されることもなければ、メディアで報道することもない。ましてや公開捜査番組など考えられない。かくして、容疑者が逮捕されることはほとんどないという。

2016年11月に鴨緑江を越えて脱北した、両江道(リャンガンド)恵山(ヘサン)出身のキムさんは、身近で起きた殺人事件とその捜査について語った。

キムさんがまだ北朝鮮にいた頃、甲山(カプサン)峠でヤギ4頭を連れていた女性が刺殺される事件が起きた。女性は2人の子どもを育てるために、山村でヤギを買い付け、国境まで連れて行って売る仕事をしていた。

女性が1500元(約2万5000円)の現金を持っていたことから、近隣住民は、甲山峰(カプサンボン)の周辺で勤務している朝鮮人民軍(北朝鮮軍)の兵士の仕業に違いないと噂したが、確たる証拠が見つからず、容疑者の検挙には至らなかった。

ただでさえ悔しい思いをしていた被害者遺族の感情を逆なでしたのは、保安署の心無い接し方だった。

担当保安員は、被害者の家族を保安署まで呼び出し、事件の報告書を上部に提出しなければならないとの理由をつけて、何日にもわたり事情聴取を行った。被害者の心情など考えず、ズケズケ質問してくる担当保安員に、被害者の夫は我慢できず激しく怒鳴りつけた。

この話を聞いた近隣住民は、「犯人も捕まえられないばかりか、遺族を苦しめている」などと保安員を非難したという。

役立たずと非難される北朝鮮の保安署は、普段一体何をしているのだろうか。

住民の思想動向の調査、住民の統制、韓流ドラマを見ていた人を摘発する、いちゃもんをつけてワイロをせびるなどなど、およそ住民から喜ばれるようなことはしていない。

犯罪捜査を熱心に行うのは、金正恩党委員長を批判するビラが撒かれたり、金日成主席が現地指導に訪れたことのある工場などから物が盗まれたりした場合など、ごく限られたケースだけだ。