[JBpressの今日の記事(トップページ)へ]

飼い猫の数とともに増加する“迷い猫”

一般社団法人 ペットフード協会が2016年に行った調査によれば、猫の推計飼育頭数は全国で984万7千頭にものぼり、今後も飼い猫の数は増えることが予想されている。空前の猫ブームが続いているなか、その裏ではある問題が起きているという。

「飼い猫が増えている一方で、それに伴い猫が迷子になっています。さらに、迷い猫になってから自宅に帰れなかった猫は、殺処分となってしまうケースも珍しくありません」

そう語るのは、株式会社オープンストリームのシステムインテグレーション事業部ソリューション本部サービス・ソリューション部部長の齋藤孝仁氏。自宅を飛び出して迷い猫となった彼らは、年間で約6.7万頭近くが悲しい最期を迎えているというのだ。

室内で飼っている猫は外への興味が強く、ドアのすき間をすり抜けて脱走することもしばしば。とくに夏は、網戸を開けて出ていってしまうなど、一瞬も気を抜くことができない季節でもある。

そうした現状に変革をもたらす存在として注目を集めているのが、同社が開発したねこさがしIoTサービス「ねこもに」だ。ねこもにとは、飼い猫の首輪にBLE(Bluetooth Low Energy)を搭載した発信機を装着し、専用アプリを使って迷い猫を探すことができるIoTソリューション。

発信機本体


これまでにも、ペットの位置を知らせるアプリやIoTデバイスは登場しているが、このねこもには、発信機の電波を受信できる範囲の広さが特徴だという。

「一般的なBLEは、実測値で30m前後の範囲でスマホなどのデバイスに電波が届くのに対し、ねこもにの発信機は『BLE Class1』という、強い電波強度を使用しているので、その倍に近い75mほどの範囲の電波を受信することができます」(齋藤氏)

実は、普段室内で飼われている猫が外に飛び出してしまっても、直後から数日間は自宅周辺にいる可能性が高いという。そのため、ねこもにの電波がiPhoneに届く75mという範囲は、かなり有効といえる。

「発信機とペアリングしたiPhoneやiPadが、発信機の電波を受信すると、電波の強さをもとにアプリの地図上に、猫がいる可能性が高い場所を広く表示します。電波が強い場所は赤く表示され、画面右下にある『ねことの距離』という縮尺でより詳しい距離を確認。距離が近くなるほど反応が強くなり、猫の位置をどんどん特定していくことが可能です」(齋藤氏)

赤い表示は猫がいる可能性が高い場所赤い表示を頼りに対象に近づいていくと、どんどん表示範囲が狭まっていき、位置を特定するとねこマークのピンが立つ

本来、電波は一次元の情報だが、同社の独自技術で二次元の地図上に落としているため、使いやすさが向上している。

「昔は猫の首輪に鈴がついていましたが、その鈴がBluetoothになったというイメージですね」(齋藤氏)

発信機の重量は10g前後とかなり軽い。もしかしたら、猫にとっても鈴をつけているのとそれほど変わらない重さなのかもしれない。まさに現代版の鈴付き首輪なのだ。

業界初!? ペット探偵保険付きIoTサービス

技術面において、猫探しに特化した「ねこもに」だが、その最大の特徴は、ペット捜索費用を補償してくれる“猫捜索保険”が付帯されている点だ。

特別な申込みや掛け金は必要なく、ねこもにの本体を購入するだけで自動的に保険が付帯されるという。

「本体を買うだけなので、保険を買ったという感覚がほとんどないと思います。ねこもにをつけた猫が戻ってこないというときに、気軽にプロの手を借りることができます。」(齋藤氏)

ペット探偵社のジャパンロストペットレスキューの捜索サービスは、ねこもに1つにつき1回のみ利用可能。1日8時間で最大3日間、ペット探偵が本格的な捜索サービスを提供してくれる。ちなみに、保険の補償期限は発信機を専用アプリに登録してから1年間で、発信機の電池寿命目安と同じだ。

「通常、ペットの捜索をプロに3日間頼むと、数万円の費用がかかってしまうので金銭面の問題から早期の発見を逃すことも。ねこもにによって、依頼のハードルを下げることができたのはとても意義があると思います」(齋藤氏)

近年では、猫を飼っている単身世帯も少なくない。そのため、飼い猫が迷子になっても、仕事などの理由からペット捜索ができず、もどかしさを感じることも多いだろう。

じつは、ねこもに発案者の齋藤氏も、愛猫の「うにちゃん」が脱走してしまった過去があり、その経験がねこもにの原点となったという。

齋藤氏の飼い猫のうにちゃん。首輪にはしっかりねこもにを装着している。凛々しい


「うちの猫が脱走してしまったときは、本当に気が気ではなかったです。半日ほどいろいろな場所を探していたところ、隣の家のベランダを歩いているのを見つけて……。本当にホッとしました。すごく近くにいたので、ねこもにがあったらすぐ見つかったと思います(笑)」(齋藤氏)

一度でもペットに脱走されてしまった経験のある人は、齋藤氏の不安に深く頷くはず。このように、実体験にもとづいたアイディアの説得力と、近年の猫ブームも相まって、ねこもには新規ビジネスを創造する社内コンペで優勝。約1年の開発期間を経て商品化に至った。

今後は犬向け商品や、介護方面への展開も

先日、Amazonなどのネットショップなどで発売されたばかりの「ねこもに」だが、売り上げは上々。その一方で、これからの展開につながる意見や問い合わせも多く寄せられているという。

専用アプリには、猫との親密度を距離で測る「ふれあいメーター」機能を搭載。
飼い猫との仲良し度を楽しむことができる


「まずはAndroid版の発売が目標ですが、猫以外を対象にした商品化も視野に入れています。犬に使いたいという声はもちろん、介護業界の方からは徘徊する被介護者に使用したいという意見もありました。精密性など、これから改良を重ねていく部分はありますが、多様なニーズに応えられる可能性を秘めていると思います」(齋藤氏)

猫の負担をやわらげるため“軽さ”を重視し、飼い主に安心感を与える捜索保険の付帯など、徹底した猫目線で作られたねこもにだが、そのニーズは無限大。ねこもにの技術が、さまざまな“迷子”を救ってくれる日も近い?

筆者: Kayo Majima (Seidansha)