菅義偉ホームページより

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 ついこの間まで、「安倍政権の要」「完璧なガバナンス」といわれていた菅義偉官房長官だが、一連の加計問題で、完全に化けの皮が剥がれてしまった。いまでは、菅官房長官が例の「問題ない」「批判はあたらない」という"スガ語"を口にしたとたん、国民の間で失笑の声があがるまでになっている。

 そんななか、今度は菅官房長官本人に、政治資金公開をめぐる"隠蔽指示"疑惑が持ち上がった。本日発売の「週刊文春」が、政治資金の使途公開をめぐり、菅官房長官が組織ぐるみで"隠蔽"していたと報じたのだ。

 記事によれば、菅官房長官は、政治資金収支報告書における少額領収書の開示請求に対し、閣僚全員に対して開示を遅らせるよう指示しており、これは政治資金規正法上の違法行為にあたる可能性があるという。

 問題が浮上したきっかけは、「文春」が先週号で報じた下村博文元文科省による支援企業へのビザ発給"口利き"疑惑の証拠となった、下村事務所の内部文書。これは、当時の下村氏の大臣秘書官が書き留めていた日報なのだが、そこには口利き疑惑以外にも重要な記述があった。2014年10月23日付で〈菅官房長官 大臣秘書官〉から、このような指示が出ていたことが明るみとなったのだ。

〈一昨日、マスコミから総務省に開示請求が入りました。総務省より、少額領収書の開示要求がきます。それが届いたら、20日までの期日を、30日まで必ず延長してください〉

 どういうことか。まず、政治資金規正法では、国会議員関係政治団体の領収書等のうち、1件1万円以下の支出に関わるものについては、誰でもそのコピーを開示請求することができる。通常、総務大臣または選挙管理委員会は、開示請求があった日から10日以内に、各政治団体の会計責任者に少額領収書の写しの提出を命じる。そして、会計責任者はこの命令から20日以内に少額領収書の写しを提出しなければならないと定められている。

 ところが「文春」によれば、菅官房長官は大臣秘書官を通じ、この少額領収書の開示請求を、定められた期間を超える30日まで引き延ばすよう指示していた。これは、明らかに"不都合な事実"を隠蔽するための不自然極まりない行為としか思えない。

●菅官房長官が隠蔽指示した"少額領収書"をめぐる安倍政権の公私混同

 そもそも、少額領収書をめぐっては、これまで安倍首相や閣僚たちに様々な問題が浮上してきた。本サイトでも何度か取り上げてきたが、有名なのは、安倍首相が政治資金で、あの「ガリガリ君」を買っていたことだろう。

 これは、日刊ゲンダイによる開示請求で判明したことだが、2012年9月5日に発行された「セブンイレブン衆議院第一議員会館店」の領収書には、こう記載されていた。

 1日分のビタミン炭酸 @168×2 ¥336
 ユンケルローヤルD2 @1,000×2 ¥2,000
 赤城ガリガリ君コンポタージュ @126×2 ¥252

 ちなみに、領収書が発行される5日前である8月31日の安倍氏のFacebookには、秘書が〈安倍さんはコンビニで大好きなアイスを購入。秘書にも「ガリガリ君」買ってくれました(^.^)〉と綴っている。小学生だって、がんばってお小遣いで買っているというのに、一国の総理大臣が政治資金で落としているとは呆れる他ない。

 言っておくが、「たかがガリガリ君」と軽視してはならない。言うまでもなく、その原資である政治資金には国民の血税が含まれるし、安倍政権には、こうした使途不明の怪しい金の使い道が後を絶たず、いわば私金と公金の"公私混同"が常態化しているのだ。

 たとえば、日刊ゲンダイによれば、稲田朋美防衛相は缶ビールに菓子パン、焼きホタテなどのつまみを購入。金田勝年法務相は高級アイスクリーム・ハーゲンダッツを、今村雅弘前復興相は高級たまごを爆買いしていた。さらに、石原伸晃経済再生担当相は花札にトランプ、血税でカードゲームに興じたかと思えば、麻生太郎財務相にいたっては趣味のクラシックCDまで買っていた形跡がある。

 ここで紹介したのはほんの一部だが、ようするに、安倍政権の閣僚たちは、政治資金で小腹を満たしたり趣味用品を購入するなど、これらは明らかに政治活動と関係するとは思えない"公私混同"をしまくっているのだ。この"公私混同"のスケールが大きくなったのが、一連の森友問題や加計問題で問題になっているお友だちや支持者への利益誘導疑惑であることはいうまでもない。

 その意味でも、こうした少額領領収書をめぐる情報の透明性は、国民が大臣たちの資質を見極めるために意義深いものだ。ところが、今回の「文春」の報道で「政権の要」である菅官房長官が各大臣に公開を引き延ばすよう指示したという"隠蔽"の証拠が明らかになったのだ。

●マスコミの開示請求の動きを総務省が菅官房長官に密告

 前述のとおり、菅官房長官は大臣秘書官を通じて、各閣僚側に〈20日までの期日を、30日まで必ず延長してください〉と指示していた。実は、この公開の延長は政治資金規正法の規則で〈事務処理上の困難その他正当な理由があるとき〉に限り認められるもの。だが、常識的に考えて〈事務処理上の困難〉等は、各事務所によって事情が異なるはず。にもかかわらず、一律に公開延長を指示していたということは、その理由を捏造していたことになり、明らかに同法違反にあたるだろう。

 しかも「文春」によれば、菅官房長官側から指示を受けた下村元文科省側は、日報に、こうも記していたという。

〈これを、また一律に取りまとめているという事がばれたら面倒なので、この連絡は厳秘! 内容について、困ったらA(日報では実名)先生にすぐ相談のこと〉

 この記述をみるに、菅官房長官が閣僚全員に指示を出していたことは間違いないが、「ばれたら面倒」というのは、まさに指示を受けた事務所側もその違法性を認識していた証左ではないのか。

 また、記事でも指摘されているが、この"隠蔽"指示の日報が書かれた2014年10月といえば、小渕優子経産相(当時)が違法献金問題で大臣辞任に追い込まれ、また、その直後に安倍首相が消費増税延期を公表し解散を決断するという時期。つまり、菅官房長官は「政治と金」の問題に国民の目を向けさせないよう、不適切な支出がてんこ盛りな閣僚たちの少額領収書の開示を引き延ばそうと画策したのだろう。

 なんとも姑息としか言いようがないが、問題はまだある。それは、なぜ菅官房長官が閣僚に対する少額領収書の開示請求の全容を、ここまで把握できていたのか、という問題だ。

 先に述べた通り、開示請求は総務大臣や各地域の選管に対して行われ、法令に基づき10日後に各政治団体の会計責任者に伝達される。ところが、下村事務所の内部文書では〈一昨日マスコミから総務省に開示要求が入りました〉と、正式な総務省からの提出命令よりも先に、しかも請求が「マスコミから」だという情報が完全に漏れているのだ。

「文春」でも政治資金規正法に詳しい上脇博之・神戸学院大学教授が「菅氏はなぜこの時、開示請求があったことや請求者が〈マスコミ〉と把握していたのか。もし総務省が菅氏に漏らしていたとすれば、大問題です」と指摘しているが、その通りだ。

●隠蔽体質は全体主義の基盤

 繰り返しになるが、少額領収書の開示請求は各国会議員の政治団体について要求されるものであり、言い換えればこれは、国民から政治家への直接的なチェック行為だ。ところが、開示請求の窓口である総務省は菅氏に情報をあげていたのである。これは、明らかに国民に対する背信行為であり、国家公務員法の守秘義務違反にも問われかねない行為だ。

 それは、その情報をさらに下村氏をはじめとする自民党国会議員に流した菅官房長官も同じだ。まさに官房長官という地位を使った情報隠蔽に他ならない。

 ところが、今日の会見で記者からこの問題を追及された菅官官房長官は「ご指摘のような事実はなかったということ」などと言うだけで、まったく説明する姿勢を見せなかった。下村事務所の日報の存在自体は下村側も認めているにもかかわらず、である。

 周知の通り、安倍政権では、防衛相の南スーダン日報問題や、財務省の森友問題関連の公文書破棄、そして、文科省の加計問題めぐる杜撰な内部文書調査など、政治権力と役所が癒着した様々な隠蔽問題が吹き出した。

 こうした安倍政権の隠蔽体質を質さねば、政治家たちは国民の知らぬところで、なんでもやりたい放題できてしまう。いわば、情報開示請求に対する隠蔽は全体主義の土台作りに他ならない。徹底した追及が必要だ。
(編集部)