韓国で衣類やバッグ、アクセサリーを作っている人なら必ず一度は行っているであろうソウルの「東大門総合市場」。そこで活躍する屈強な男たちの正体とは?

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韓国で衣類やバッグ、アクセサリーを作っている人なら必ず一度は行っているであろうソウル鍾路(チョンノ)区の「東大門総合市場」。その方面に詳しい日本人にも、足を運んだ人は多いかもしれない。

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この市場はA〜D棟とショッピングタウンの5棟から成り、生地や糸、ボタン、針、毛糸、その他アクセサリー部品など、全部で4000以上の店が入っているという。建物内は、幅1メートルほどの通路を挟んで店が左右にひしめき、まるで迷路のようだ。

私も愛用のブレスレットが壊れた時など総合市場に部品を買いに行くが、ここに行けばまず必要なものはそろう。しかし、行くたびに目的の店にたどり着けるか、それが問題で、いつも不安を抱えながら迷路をさまようことになる。

買い物を終え建物の外に出ると、所々に大きな背負子(しょいこ)が幾つも並び、その周りに30〜50代と思しき屈強な男性たちが集まっている場所がある。多い時には7〜8人はいるだろうか。たばこをくわえコーヒーを飲みながら談笑する顔は皆いい色に日焼けして、夏場は半袖、半ズボンから太く鍛え上げられた腕や足がのぞく。

この中の1人が、携帯電話で話をしながらしきりにメモを取っている。話が終わると周りにいた男性に指示を出し、指示を受けた男性は、おもむろに背負子を背負うと、総合市場の中に消えて行く。また今度は大きな荷物を背負子にくくり付けた別の男性が総合市場の中から出てきて荷物を下ろし、バイク便業者がその荷物を受け取ると、どこかへ去って行く姿も見掛ける。

総合市場の迷路のような場所にひしめき合う店から商品を搬出したり、また店に商品を届けたりするのは、結局人力に頼るほかないようだ。

建物の中でも荷物を背負う男性をたまに見掛ける。背負っている荷物は見るからに重そうだ。ロールの布地を4〜5本と大きな袋を背負っている人も。40〜50キロ、もしかするとそれ以上あるかもしれない。

荷物の搬出入にはエレベーターを使ってはいけないことになっているのか、男性たちを見掛けるのはいつも階段だ。荷物を背負って、一日に何回上り下りを繰り返すのか、顔からは汗がしたたり落ちている。

一方、周りのお客は、男性たちの姿がまるで見えていないかのように無関心。韓国では体を使った労働を卑しい仕事としてみる傾向がいまだに残っているため、荷物を背負って汗を垂らして働く男性たちを、白い目で見ているのだろうか。この男性たちがいなかったら、これから自分たちが買おうとしている商品は、店頭に並んでいないかもしれないのに。

■筆者プロフィール:水田尊久
兵庫県出身。2000年に渡韓し現地企業に勤務した後、13年に韓国で法人を設立し独立。技術コンサルティングを中心に、韓国進出支援、市場調査など、韓国を中心に活動中。