『Cocco20周年Special Live at日本武道館2Days 〜 一の巻 〜』を開催したCocco(撮影=田中聖太郎)

  シンガーソングライターのCoccoが12日、東京・日本武道館で『Cocco20周年Special Live at日本武道館2Days 〜 一の巻 〜』を開催した。Coccoが武道館でライブをおこなうのは、約9年振り。全20曲を披露し、観客を魅了した。

 20年前、衝撃的な歌詞とヘヴィなサウンドで日本の音楽シーンを揺るがせた「カウントダウン」。そのデビュー曲で幕を開けた、『Cocco20周年Special Live at日本武道館2Days 〜 一の巻 〜』。突きつけられる銃口そのもののような歌とサウンドが、20年を経た今もなお容赦なく心に突き刺さる。改めて、なんと凄まじいデビュー曲であったかと思う。

 当然だが、単なる振り返りモードの懐かしい気分で聴いているだけのライブにはならないことを、開始早々に悟る。即座に歌の世界に引き込まれてしまう。そして重厚でオルタナティブなロックサウンドで「水鏡」「けもの道」と、畳み掛けるように初期のシングル曲を続けざまに披露。

 Coccoは、今日この場に足を運んだ人たちの様々な感情を、すべてその華奢な身体で受けとめて歌うようでもあり、その歌声は一人一人に向き合うように、力強く濃密に響く。そして、印象的なベースのイントロから「Drive you crazy」が歌いだされると、意外な選曲に客席からは驚きの声があがる。キュートな動きで会場にハンドクラップを促すCoccoの姿には、思わず心が弾み出す。伸びやかな歌声が響き渡って、和やかな空気にも包まれた。

 「こんばんは。Coccoです」と今日初めてのMCでは、メンバー紹介を始めようとして、急に思い立ったようにリレー形式での紹介を提案。まずCoccoが「つよはか(強く儚い者たち)のイントロ、あるでしょ? あれはね、良明くんです」と言って白井良明(Gt)を紹介し、白井から向山テツ(Dr)、向山からは柴田俊文(Key)、柴田は武藤祐生(Vn)を、そして武藤からは根岸孝旨(Ba)へと、愛のある言葉でメンバー紹介が続く。

 最後は初期曲のプロデューサーでもあった根岸がCoccoを紹介した。「みなさんも彼女の声に励まされてり泣いたりしたことがいっぱいあったと思います。私がその代表です。我らが歌姫、Cocco」

 その言葉に涙が溢れそうになったのは私だけではないはず。こんな温かいメンバーたちに支えられていたこと、そして、Coccoの歌声に癒されていたのはリスナーだけではなかったこと──この20年をまるごと肯定するような愛に満ちた言葉だった。

(撮影=田中聖太郎)

 そして中盤は、バイオリンの柔らかな音とコーラスワークが心の痛みを呼び覚ますような「Raining」、<指先から こぼれる愛を集めて 全てあなたにあげましょう>とやさしく歌う「しなやかな腕の祈り」、そして徐々に自身のルーツである沖縄が、歌のメロディにも色濃くにじむようになった中期の名曲「陽の照りながら雨の降る」と、どこか遠いところから語りかけられるような歌声に、ただただ聴き入ることしかできなかった。

 「強く儚い者たち」「樹海の糸」など、今なお心に深く刻み込まれた歌は、当時とは違った、やさしい痛みを感じさせてくれた。今はもう傷口もふさがれて、かすかに残る傷跡をやさしくそっと撫でてくれるような温かい歌声だった。そして終盤、キラキラはじけるようなシーケンスとキレ味鋭いギターカッティング、グルーヴィーなリズムに思わず身体が揺れる「音速パンチ」が繰り出されると、アッパーな高揚感がさらに会場の温度が上げていく。「焼け野が原」の前に、そのシングルのカップリング曲であった「Rainbow」を披露してくれたのも嬉しかった。切なく響くギターの音色と、ピンスポットライトに照らされて歌うCoccoの姿が今も脳裏に浮かぶ。

 最後の曲を歌う前に、Coccoは「私たちはもう大丈夫な気がする。長くかかったけど、もう死んでもいいってところから、生きててよかったってとこまで、みんなよく来たね」と語ってくれた。Coccoの目に涙が光る。

 そして「愛してるってわかったから大丈夫だよ。愛って一番自由な気がします」と言った。愛を自由だと、心から感じることができる今のCoccoを、そして自分自身を、誰もが祝福したい気持ちでいっぱいだったはずだ。その後に響いた「もくまおう」はどこまでも深く感動的だった。全20曲、余力を残すことなど考えないまさに全身全霊の歌は、当時の多感で複雑な思いをそっと眠らせるレクイエムのようでもあったと思う。

 それはCoccoにとっても、もちろんたくさんのリスナーにとっても。だから「もう大丈夫」だとCoccoは言った。

 一夜明けても、まだその余韻は心地よく身体中にしみこんでいるが、明日14日は2日目「二の巻」がおこなわれる。「一の巻」とは内容もバンドメンバーも変更となる。Coccoの過去と現在がいよいよつながる第二夜、こちらも楽しみで仕方がない。今からドキドキしている。

(取材=杉浦美恵)(撮影=田中聖太郎)