久々にJ1を戦う小野に、天才の目に留まった面白味のあるプレーヤーを挙げてもらった。写真:高橋茂夫

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 小野伸二
 
 1998年のワールドカップに18歳という若さで出場し、同大会の出場は計3回。UEFAチャンピオンズリーグにも出場。UEFAカップ制覇(現在の呼称はUEFAヨーロッパリーグ)。あらゆるビッグコンペティションに出場してきた世界を知る男である。
 
 そして何よりも、あたかもマジックであるかのように周囲が予想もつかないトリッキーなプレーで観衆を魅了し、その柔らかな球さばきはまるでボールが身体に吸い付いているかのよう。サッカーファンのみならず、日本国民の誰もがその名を知る“希代の天才”だ。
 
 この2017年、その小野が所属クラブである札幌と同様に5季ぶりにJ1の舞台に登場し、前半戦の戦いを終えている。束の間のインターバルを利用し、久々にJ1を戦う小野に、天才の目に留まった面白味のあるプレーヤーを挙げてもらった。
 
「やっぱり久保(建英)くんじゃない?」
 
 あっさりとその名を発したとあって、こちらも若干、戸惑った。もちろん「面白い選手は数多くいて、そのなかのひとりとして」という前提があるのだが、正直、自身の発言の影響力を考慮し、親しい選手の名を挙げてかわすことで、話を穏便に収めるかと勝手に予想をしていた。しかし、小野はあっさりと今季、15歳(当時)にしてJリーグデビューを果たしたFC東京の久保の名前を事もなげに挙げた。
「実際に巧いと思うし、凄い選手になって欲しいという期待も込めて」と、37歳のクラッキは20歳以上も年の離れたアタッカーを推した理由を口にする。
 
「まだ16歳ですよね? その年齢であのプレーの落ち着きぶりだったり、判断のところもそうだけれど、僕のその年代の時と比較しても完全に上回っている。それに今はああやって早い時期からプロの練習や試合にも加われる環境が整っているから、これからプロのスピードやパワーにも慣れていくだろうし、彼の良さというものがもっともっと生きてくるんじゃないかな」
 
 日本サッカー界屈指のファンタジスタでさえ、こう評してしまうのが久保の才能だ。
 キャリアの中で数多の取材をこなしてきたクレバーな小野である。若い選手を無責任に持ち上げすぎることによる弊害の可能性も認識したうえで、久保の将来性に期待を寄せていることは間違いない。
 
 そして、自身も中高生時代には常に世代別の日本代表チームの中心選手として活躍し、卒業時にはほぼすべてのJクラブから獲得オファーを受けたサッカー界きっての天才少年だったはずだが、その小野でさえも「当時の僕よりも完全にハイレベル」と言い切る。
 
「試合後のミックスゾーンで大勢のメディアに囲まれても、まったく動じてなかったですからね。僕は15歳の時になんて取材を受けたことがないから比較はできないけど、たぶん、あんなにうまく喋れなかったんじゃないかな(笑)」
 
 5月3日のルヴァンカップでの対戦時のことを小野はそうやって振り返る。そして、最後にこう付け加えた。
 
「あとは、そうだなあ…。いろいろあるけど、やっぱりサッカーを楽しみながらキャリアを重ねていって欲しいですね」
 
 サッカーを楽しむ。言葉にすると簡単ではあるが、実際にそうしたメンタリティを維持し続けながらプロサッカー界を生きることは意外と簡単ではない、いや、極めて難しいのかもしれない。サッカーを楽しみ、いまなお観る者を楽しませ続けている小野の言葉は、ぜひとも久保をはじめとする、多くの若きプレーヤーたちの胸に届いて欲しい。
 
取材・文:斉藤宏則(フリーランス)