iDeCo(イデコ、個人型確定拠出年金)の加入対象者が今年1月から大きく拡大し、半年が経過した。16年12月時点で約30.6万人だった加入者数は、17年5月時点で約51.7万人になった。NISA(少額投資非課税制度)は導入時(2014年1月)492万口座でスタートし、同年6月末には727万口座、2016年3月末に1012万口座へと拡大した。NISAには半数が休眠口座、利用者が高齢者に偏っているという課題も指摘されるが、制度への参加率という点では、iDeCoには制度改善の余地が大きいように感じられる。モーニングスター代表取締役社長の朝倉智也氏(写真)は、「確定拠出年金制度(DC)の普及のポイントは投資教育だ。また、今般の政令を巡る議論で、制度の運用商品数上限を35本にすることが決定されたが、制度設計を自由に行える方が市場の成長にはプラス」と語っている。
 
――今年2月以降、毎月5万人増ペースで伸びてきたiDeCoの新規加入者数が、5月には2.9万人増とやや鈍化した。iDeCo普及に必要なことは?
 
 投資教育の充実が必要だと思う。iDeCoは、自分で準備する年金だが、掛金は自分で運用しなければならない。中には、iDeCoを所得控除の手段と割り切って、定期預金の積み立てをしている方もいるが、実際には20年、30年後という将来を考えた場合は、iDeCoで元本確保型商品を積み立てる効果は薄い。巷にあふれるiDeCo関係の書籍やニュースなどでも資産運用の重要性が強調されている。
 
 ところが、多くの方々にとって資産運用は未経験の分野。国内の大手銀行では、預金口座を持っている顧客の5%程度しか運用商品である投資信託を購入していないという。「年金問題」は日本国民全体の課題だが、「資産運用」は一部の人にしか関心がない。このギャップを埋めるのが投資教育だ。
 
 また、加入申込をした人からは、加入手続きの面倒さについての不満の声を聞く。提出書類を分かりやすくしたり、ネットで完結する仕組みづくりなど、より簡便な加入手続きに改めていくことも必要だろう。
 
――確定拠出年金の制度に関しては、運用商品数の上限を35本にするなどの措置が予定されているが、制度面での改善についての考え方は?
 
 運用商品数は、企業型と個人型について分けて議論がなされるべきだったと思うが、今回の議論を見る限り、個人型についての議論は十分だったとは思えず、企業型が35本だから、個人型もそれと同数に決まったことには賛同しかねる。
 
 企業型についても上限を設けることは好ましくない。運用商品数が多過ぎると選べないから、本数を制限した方が良いという趣旨で本数上限を設定する議論がなされたが、本質的には企業がそれぞれの実情に合わせて本数を設定できるようにした方が良いと思う。
 
 企業によっては、アジア各国に展開するなどグローバルで事業を行っている企業もあれば、国内の一部地域に限定した営業を行っている企業もある。それぞれの企業の状況に応じて従業員の方々の興味・関心は様々だろう。上限を設けることで、投資先を制限することは望ましくないと思う。
 
 むしろ、DCを導入している企業には継続投資教育を義務化して従業員に対する教育をキチンと行うこと、また、誰でも運用商品が選びやすくなるようなツールを導入して従業員の資産運用をサポートすることを徹底させることの方が重要だと思う。「努力義務」ではなく、「義務」として、より強く投資教育の実施を促すべきだ。
 
 一方、個人型iDeCoには35本に絞る意味がわからない。企業型は、企業が従業員のために用意し、掛金の拠出も企業側が行うため、従業員の側に選択の余地が少ない。それだけに規制当局が、制度の育成のために規制することは理解できるが、個人型は、個人が掛け金を拠出して、運営管理機関も比較検討して加入する制度だ。比較検討にあたっては、手数料の水準はもとより、商品ラインナップも重要な検討要素になっている。