麺は口ほどにものを言う〜ご当地ヌードル探訪〜 スーパー猛暑にうってつけ! 氷がたっぷり浮かんだ山形県山形市の「冷しらーめん」

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日本各地に根付いた「麺料理」を求めて、全国を巡る「ご当地ヌードル探訪」。今回やってきたのは山形県山形市です。雄大な蔵王連峰に囲まれた山形市には、温泉やスキー場以外にも人気の観光スポットが多数存在しています。

山形城の一部が残る霞城公園。城の前には、山形市の礎を築いた最上義光の像が立っています。
1000段以上の階段で有名な“山寺”宝珠山立石寺の納経堂。芭蕉の俳句「閑さや岩にしみ入る蝉の声」はここで生まれました。
大正時代に建てられた文翔館。県庁舎・県会議事堂として使われたモダンな建物です。

東北地方に属する山形ですが、意外にも夏は猛暑だということをご存じでしたか? そんな山形で、暑い夏にうってつけのご当地麺料理が「冷しらーめん」なんだそう。今回は、その発祥のお店である「栄屋本店」に行ってきました!

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この日の山形市は晴れ。日差しは強いですが、風は涼しく心地よい天気です。とはいえ、山形駅から大通りを20分ほど歩くと、さすがに肌が汗ばみます。
星が印象的なアーチをくぐり、“七日町一番街”に入ります。
アーチから2分ほど真っ直ぐ歩くと、右手に目的の栄屋本店が。「冷しらーめん」の垂れ幕が目印です。
広々とした店内は落ち着いた雰囲気。奥には座敷もあります。

それでは、名物「冷しらーめん」を注文してみましょう。
運ばれてきたのは、なんと氷がぷかぷかと浮いたラーメンでした!

北海道では冷やし中華のことを「冷やしラーメン」と呼ぶそうですが、この“冷しらーめん”、見た目は完全にラーメン。ただし、丸ごと入った氷やトッピングのきゅうりが、普通のラーメンではありえない涼感を演出しています。

店内はあまり空調をきかせていないようですが、それも納得。どんぶりに手を添えると、すぐに指先が冷え冷えとしてきました。早速食べてみると……とにかくスープがさっぱり! そしてひんやり! 

透き通るようなスープには、細かな脂が浮かんでいます。

スープは、非常にあっさりとしたしょうゆ味。さっぱりとはいえ、薄味なわけでは決してありません。ごま油とカツオのダシがふわりと口の中に広がり、甘みに近いコクを醸し出しています。その一方塩気も絶妙で、バランスはバッチリです。

そのスープがよく絡む中太の麺は、ちゅるちゅるモチモチのストレート。こちらもスープに負けじと冷えており、柔らかいのにコシがあります。

トッピングも特徴的で、もやし、キュウリ、ネギといった野菜類は、しっかりと冷えてシャキシャキです。ラーメンのトッピングとしては見なれないキュウリですが、さっぱりとしたスープと相まって、口の中をさわやかにしてくれます。

牛の内モモ肉を使い、毎日じっくり煮込んで作る自家製チャーシュー。

また、チャーシューも魅力の一つです。冷えているので食べ始めは固く感じますが、かめばかむほど牛のまろやかなうまみがあふれでてきます。

スープ、麺、トッピングとどれを食べてもひんやりとしているので、箸が進むたびに汗が引き、さっきまでの暑さはなんだったかと思うほど。ただし、かき氷を食べた時のような頭に響く冷たさはなく、キリッとした自然な冷たさなので、食後はとても爽快です。しかし、全てが冷たいのに、なぜ脂が固まらないのでしょうか?

阿部さん「うちの冷しらーめんは、とにかく“脂が固まらない作り方”にこだわっています。脂を感じずにさっぱりと食べてもらえるよう、日々努力しているんですよ」
お店と冷しらーめんの歴史について丁寧に教えてくれた阿部さん。現在は4代目の竜也さんと二人でお店に出ています。

そう話すのは3代目店主の阿部徹さん。脂が固まらないさっぱりスープ……その秘密を探るべく、調理の過程を見せていただきました!

■蔵王の水がポイント! 山形だからできる冷しらーめん

まずは麺を鍋へ。指で感触を確認しながら、たっぷりのお湯で7〜8分と長めにゆでます。

阿部さん「最後に麺を水でしめるため、固くなりすぎないようにゆで時間は長めなんです。できるだけお客さまを待たせないように、大きな鍋はフル活用。一度に30人前以上の麺を、その隣の鍋で20kgのもやしをゆでたこともあります」

麺をゆでている間に、器にかえし(しょうゆダレ)を準備し、氷を投入。その日の暑さにより氷の量を調節するそうです。

阿部さん「かえしはゴマ油と白絞油(しらしめゆ)、カツオのだし汁、昆布、そしてチャーシューを作る時に出る煮汁をブレンドして作っています。白絞油にはさまざまな種類がありますが、うちで使っているものは大豆から作った生精油。植物性の油を使うことによって、冷たいスープでも脂が固まらないんですよ」

ゆで上がった麺は大きなザルですくい上げ、手早く水でしめていきます。

阿部さん「この水がポイントなんです。蔵王山の水を使っているので、水道水とは思えないぐらいおいしいですし、冷えています。冷しらーめんのスープも、上に浮かんでいる氷も、すべて蔵王山の恩恵にあずかっているんです」

かえしを蔵王の水で薄めてから、その中に麺を入れ、トッピングを施して完成。

なんとこのラーメン、スープに一度も火を通していなかったんです! とにかくさっぱりとした冷たいラーメンにこだわった結果、ここまで澄んだスープが出来上がったというわけなんですね。

■山形の夏に涼をもたらすラーメン作り

栄屋本店は、1932年にそば屋としてオープンしました。戦後になって始めた中華そばが、口コミによりいつしか大人気になったとか。

阿部さん「いくら人気とはいえ、暑い夏にラーメンを食べるのはなかなか辛いもの。冷たいラーメンが食べたいという常連客の声を受けて、初代が一年がかりで開発したのがこの冷しらーめんなんです。今では冬でもよく注文されるほどの看板メニューになりました」

店を受け継いだ2代目によって商標登録された「冷しらーめん」。現在「冷やしラーメン」は県内各地や東京でも食べられますが、ひらがなの“冷しらーめん”はこのお店でしか食べられません。ちなみに“らーめん”とひらがななのは、そば屋の雰囲気を損なわないためなんだとか。

レジ横で見つけたお土産用の乾麺と生麺。山形名物ラ・フランスの果汁がスープに使われています。

阿部さん「他店舗とは違い、当店では冷しらーめんを通年メニューとして提供していますが、やはり夏の注文数は段違いですね。多いときは隣の建物までぐるりと囲むほどの行列ができます。お客さまが熱射病になるのが心配で、行列の途中に水分補給用の水を置くこともあるんですよ」

栄屋本店は、夏は観光客、冬は地元客で賑わいます。地元客の中には、3日に一度来ないと気が済まない“冷しらーめん中毒”の方や、お酢をかけてよりさっぱりと食べる、こだわりを持った“上級者”もいるそうです。

阿部さん「今年でちょうど創業75年。この冷しらーめんがなかったら、うちはこんなにも続いていなかったと思います。食べたことのない方は、ぜひ一度いらしてください。絶対に“おいしい”と言ってもらえるはずです」

気象庁の予報によれば、今年は37度を超える“スーパー猛暑日”が続くそう。冷しらーめんは、そんな今年の夏にぴったりです。蔵王山のようにてんこ盛りの氷に浸った冷しらーめんで、みなさんも体の芯から涼しくなってみては?

店舗情報
● 栄屋本店
住所:山形県山形市本町2-3-21
電話:023-623-0766
営業時間:夏時間(3月19日〜9月30日) 11:30〜20:00
     冬時間(10月1日〜3月18日) 11:30〜19:30
    (水休・祝日の場合は翌日休・1月、8月は不定休)
http://www.sakaeya-honten.com

※記事中の情報・価格は取材当時のものです。