南極半島東岸に存在するラーセン棚氷のうち、ラーセンC棚氷の先端にあるアメリカ・デラウェア州ほどの大きさを持つ1兆トンもの氷の塊が、原因がなんであれ結果としてついに南極大陸から完全に分離しました。

Project MIDAS | Larsen C calves trillion ton iceberg

http://www.projectmidas.org/blog/calving/

A Trillion-Ton Iceberg Just Broke Off Antarctica - Motherboard

https://motherboard.vice.com/en_us/article/9kwdgz/larsen-c-ice-shelf-iceberg-calving-climate-change

3 reasons to worry about that huge iceberg that broke off Antarctica - VICE News

https://news.vice.com/story/3-reasons-to-worry-about-that-huge-iceberg-that-broke-off-antarctica

One of largest icebergs ever recorded just broke off Antarctica

http://mashable.com/2017/07/12/massive-iceberg-breaks-off-antarctica-larsen-c-ice-shelf/

今回分離が起こったラーセンC棚氷は南極の主要な棚氷のうち最北に位置し、南極大陸で4番目に大きな棚氷だとされるもの。ラーセンC棚氷に入ったヒビは2014年から観察が行われており、2016年にはヒビが急速に拡大しており、数年内には分離が起こるのではないかと予測されていましたが、その後2017年1月には数カ月内には分離が起こる可能性があると発表されていました。

そして、ラーセンC棚氷の観察を行っている研究プロジェクトの「MIDAS」は現地時間2017年7月12日に、ついにラーセン棚氷Cから氷の塊が分離したと発表しました。A68と名付けられた氷の塊は、今後も研究者らによって行方が追跡され、船との事故などを起こさないように観察されるとのことです。

MIDASはTwitterでもラーセンC棚氷の分離を発表。



以下の画像を見ると、分離がどのように起こったのかがわかります。画像の下部から入ったヒビが拡大していき……



こんな感じで完全分離しています。



MIDASプロジェクトに参加している研究者のAdrian Luckman氏は「この氷山はこれまで観測された中でも最も巨大なものの1つで、将来的にどのようになるかは予測が困難です。1つの塊のままかもしれませんが、分解してバラバラになる可能性もあります。その場合は、いくつかの氷山は数十年にわたってその場に留まり、別のいくつかは北に流され温かい水で溶けていくかもしれません」と語っています。

グラスの中に水と氷とを入れた場合、氷が溶けてしまってもグラスの水面は上昇しません。これと同じ理由で、この氷の塊が溶けたからといって海面が上昇するわけではありません。しかし、今回の崩壊に続いてさらに棚氷が崩壊すれば、背後にある氷河が海へと流れ込む速度が増し、将来的に海面の高さに影響をもたらす可能性があります。

棚氷の分離は自然現象の1つであり、ラーセンC棚氷の分離について、氷河学者のMartin O'Leary教授は「人間が引き起こした気候変動との関連性は認識していない」と述べています。しかし、原因が何であれ結果としてラーセンC棚氷は分離前よりも12%も小さくなっており、「非常に不安定な状態」だとのこと。ラーセンC棚氷の崩壊が起こり氷河が海へと流れ込めば最終的に海面は10cmほど上昇するとみられています。

ちなみに、2002年に崩壊したラーセンB棚氷の、崩壊前の様子がコレ。棚氷のラインがはっきり見えていますが……



崩壊後に撮影された写真を見ると、エッジのラインが後退し、海には残余が広がっていることがわかります。



また、ラーセンC棚氷それ自体が海面上昇に及ぼす影響はそこまで大きなものではありませんが、ラーセンC棚氷が崩壊した影響で他の大きな棚氷が崩壊すれば、2〜3フィート(30〜90cm)の海面上昇が起こる可能性があるとも示唆されています。カリフォルニア大学の氷河学者であるEric Rignot教授は「私たちは棚氷の分離という出来事だけではなく、大局を見る必要があります。つまり、南極で起こっている変化全体についてです」と語っています。