アラブ首長国のアトリエで語るドバイを拠点とするファッションデザイナー、アイーシャ・ラマダン氏(2017年6月10日撮影)。(c)AFP=時事/AFPBB News

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【AFP=時事】「ドルチェ&ガッバーナ(Dolce & Gabbana)」から「マイケル・コース(MICHAEL KORS)」にいたる有名ブランドまでが、イスラム教徒の聖なるラマダン(断食月)期間に、アラブ諸国の大きなマーケットを大きく潤わせる。これによりラマダンは、グローバルなファッションカレンダーにおいて確かな地位を築いている。

 イスラム教徒たちが服にかける金額は上昇中だ。主要ブランドは世界有数の買い手たちがいる、ディルハム(dirham)、ディナール(dinar)、リヤル(riyal)といった外貨を使用している国へアピールをしている。アメリカ、ヨーロッパ、そしてアジアにおけるハイブランド及びファストファッションブランドは、「慎み深い服装」への要求が青天井であるアラブ地域への積極的な進出を見せている。イスラム教徒のライフスタイルを紹介するSNSのインフルエンサーや美容のビデオブロガーたちの影響も大きい。

 ホリデーシーズンは世界中の小売業者にとって一番の書き入れ時だ。日中の飲食を一切絶ち、慎み深さを反映する断食月のラマダンも、もはやその例外ではない。アラビア半島の伝統民族衣装であるアバヤ(abaya)は服の上からまとう緩いローブだが、ドバイ(Dubai)を中心に活動するデザイナーのアイーシャ・ラマダン(Aiisha Ramadan)氏によると、この聖なる時期にアバヤの市場は売り上げのピークを迎えるという。女性たちはどれだけ費用をかけても、同じ服を繰り返し着ることを避けようとするからだ。

 しかし控えめな服装に興味を抱く顧客たちへの関心が待ち望まれた一方で、アラブ中の品揃えには賛否両論や呼び起こし、気分を害する人たちも多い。

■ラマダン用ファッションへの需要

 世界中のムスリムが服と靴に費やす金額は2019年までに5000億ドル(約55兆9600億円)に達すると「エスモード ドバイ校(ESMOD Dubai)」のファッションマーケティング部部長、タマラ・ホスタル(Tamara Hostal)さんは語る。ラマダンは、ファッションブランドが5月から6月にかけて地域限定のカプセルコレクションを発表する、中東における事実上のマイクロ・シーズンとなっている。

「DKNY」が中東限定のラマダンラインを2014年にローンチして以来、「ドルチェ&ガッバーナ」や「CH キャロリーナ ヘレラ(CH Carolina Herrera)」、「マイケル・コース」、「トミー ヒルフィガー(TOMMY HILFIGER)」、「ザラ(ZARA)」、「マンゴ(Mango)」、「ユニクロ(UNIQLO)」「ナイキ(NIKE)」など数あるブランドが後に続いた。

「ドルチェ&ガッバーナ」は、ラマダン用ファッションが商業的かつ文化的な複合的現象となっているドバイ全土で、アバヤやローブ、ヘッドスカーフのヒジャブ(hijab)を扱うラインの2016年度のキャンペーン広告を行った。

 インスタグラムは「#ootd(outfit of the day、今日のコーデ)」のハッシュタグをつけた投稿であふれ、アラビア版「ヴォーグ(Vogue Arabia)」の記事は祝祭の装いや通常の慎み深い盛装などをどうやって手に入れるかの情報でいっぱいだ。

■自分たちの文化をリスペクトする限り

 ラマダン期間中に一番人気があるのは、断食後に初めて食べる夕食であるイフタール(iftar)のときに着用する、明るい色合いのイヴニングドレスだ。長いアバヤやマキシ丈のドレスはデザイナーたちにとって、あらゆる顧客を対象にさまざまなアイテムを提供するチャンスと言える。

 米歌手、ジェニファー・ロペス(Jennifer Lopez)やクリスティーナ・アギレラ(Christina Aguilera)、ゼンデイヤ(Zendaya)の衣装を手がけたアイーシャ・ラマダン氏は、アバヤやマキシドレスの制作者であり、着用者でもある。「世界的ブランドは、カフタンやアバヤを着用するアラブ女性の国へと素早い進出を見せている」とアラブ首長国のシャールジャ(Sharjah)にあるアトリエでラマダン氏は語った。

「日常的に着られるカジュアルなワードローブを求めるレディ・トゥ・ウェアの顧客から、傑出したものを求めるアバヤのオートクチュールの顧客まで、多くの可能性がある」。深いピンク色のカフタンにアラビア文字の刻まれた金のネックレスを身に着けたラマダン氏はそうコメントした。「我々の文化を尊重している限り、それは美しい」

■ラマダン終了を祝うためのコレクション

 ラマダン終了を祝う3日間の祭、イド・アル=フィトル(Eid al-Fitr)では、イメージを重視するアラブ女性たちがおしゃれに全力を尽くす。デザイナーたちはこの行事のために特別なラインも発表するほどだ。

 ベネズエラ出身のアメリカ人デザイナーであるキャロリーナ・ヘレラ(Carolina Herrera)は、この5月にアラブ諸国限定のラマダンラインを発表した。彼女のトレードマークであるポルカドットやリボンモチーフをあしらった4つのスタイルのアバヤをフィーチャーしたものだ。ブランドの既成クチュールラインは別に、イド・アル=フィトルに向けた限定秋冬コレクションを間もなく発表する。「黒や赤のレースやミモザイエローのボタン留めのロングドレスは、すべての女性が着られるもの」だという。

「この新しい市場に向けてのファーストコレクションに対する意見を集めているところだが、通常この地域での顧客はシンプルでプレーンに見られるデザインにはお金は出さない」と「CH キャロリーナ ヘレラ」の地域的マーケティングマネージャーを務めるダニア・ファクーリー(Dania Fakhry)氏は語る。「彼らはデザインを高く評価する。自分たちが着るものでなくても、気に入れば購入する」

■ヘムを落とせば出来上がり

 このトレンドに対する業界内部の批判もある。ムスリムを尊守する自称「ファッション・ヴィクティム(ファッションの虜)」である現地のSNSのインフルエンサーの1人は、文化が理解されないうちに商業化されていくことに対して反対の声を上げている。職業的な理由で匿名を条件に「ただ袖をつけて、ヘムを切り落とせばラマダンコレクションの完成だなんて」と軽蔑的に語る。「率直に言って、不快だ」

 だが、今や文化と宗教的な伝統のルーツを持つ衣装は、その枠だけには収まっていないと言う人もいる。アイーシャ・ラマダン氏は「アバヤは伝統、慎み深さを表すものとして始まった」と語る。「デザインの見地からは単なるプレーンな黒のものだけではなくなったし、文化的に見ても宗教だけのものではなくなっている」と彼女は付け足す。「西欧の女性が服装にアバヤを組み込むのは、時間の問題だと思う」
【翻訳編集】AFPBB News