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スペインの裁判所は6月26日、シュールレアリズムの画家、サルバドール・ダリの娘と主張する女性の訴えを受け、ダリの遺体を掘り出すよう命じる判決を下した。掘り起こし、DNAサンプルを抽出することになるそうだ。

報道によれば、女性は1956年生まれ。女性の母親が、ダリの家で家政婦として働いていた頃に関係を持ったとしている。ダリは1989年に死去しているが、実子はなく、DNA鑑定で親子関係があると認められれば、唯一の子として遺産の一部を相続することになる。

日本では、死後30年近く経ってからでも、同じような申し立てをすることで、新たな相続人として認められることはあるのだろうか? 増田勝洋弁護士に聞いた。

●日本ではどうなる?

「日本では、被相続人が亡くなった後、相続人となるためには、まず父との間で親子(父子)関係が認められる必要があります(民法887条)。

父子関係を認める手段としては、『認知』がありますが、死亡した後でも、子は検察官を被告として『死後認知』の訴えを裁判所に起こすことができます(民法787条本文)。

しかし、訴えを起こすことができる期間には制限があり、日本の民法上、死後認知の訴えは『父の死亡の日』から3年以内にする必要があります(同条但書)。ですから、たとえDNA鑑定で親子関係が認められる結果が出たとしても、『父の死亡の日』から3年が経過していたら、父子関係が法的に認められることはありません。

つまり、日本では死後3年が経過していたら、一度決まった相続が覆ることはありません。そのため、ダリの遺体掘り起こしを決めたスペインのような裁判例は、日本ではありえないのです」

ちなみに、父が死んだことを後になって知った事例ではどうなるのだろうか。

「『死亡の日から』とは、『死亡が客観的に明らかになったときから』と解されています。それは通常の場合、実際に亡くなった日と一致しますから、たとえ子やその法定代理人が父の死亡の事実を知らなかったという事情がある場合でも、『死亡の日から』が『死亡を知った日から』と解釈されることは難しいのが現実です。

この期間制限の規定(「死亡の日から3年以内」)については、父子関係という微妙な問題を父の死亡後、あまりに長い期間を経過してから問題にすることの不都合(例えば相続への影響等)を避けようとする趣旨だと説明されています。

しかしその反面、客観的に血縁関係がある人が相続人として認められない場合もあり、合理性がないとして根強く反対する声もあるようです」

(弁護士ドットコムニュース)



【取材協力弁護士】
増田 勝洋(ますだ・かつひろ)弁護士
大阪弁護士会、司法委員会、司法修習委員会委員 著書:『事例にみる遺言の効力』(共著、執筆担当)
事務所名:増田法律事務所
事務所URL:http://www.masuda-law.net/