画像提供:マイナビニュース

写真拡大

●風力発電で水素を製造する実験にトヨタが参加する目的

トヨタ自動車らが京浜臨海部で水素活用の実証事業を開始した。風力で発電した電力を水素に変え、それを近隣の工場などに運んで燃料電池フォークリフトに供給するという実験だが、トヨタには同事業を燃料電池自動車(FCV)「MIRAI(ミライ)」普及の布石とする思惑がある。

○水素社会の実現が最大の目的だが…

この実証は環境省の委託事業で、参加者はトヨタ、豊田自動織機、東芝、岩谷産業、神奈川県など。横浜市風力発電所(ハマウィング)で電気を作り、敷地内で水を電気分解して水素を製造し、それを貯蔵・圧縮して充填車(小型トラック)で近隣に運び、近隣の倉庫や工場で稼動する燃料電池フォークリフトに供給するというプロジェクトだ。実施期間は2018年度まで。

風力発電は風が吹かなければ電気を作れない。変動する発電量を調整する役目は、トヨタ「プリウス」の使用済みバッテリーを再利用した蓄電池システムが担う。発電量が多いときは蓄電しておき、風のない日は貯めておいた電力を使うことで水素の安定供給を実現する。ちなみに、水素の配送はトヨタのハイブリッド小型トラックが担当。最終的に水素を使う燃料電池フォークリフトもトヨタ製だ。

実証事業開始に先駆けて行われた現地取材会では、トヨタで新規事業開発などを担当する専務役員の友山茂樹氏に話を聞くことができた。友山氏によると、トヨタが実証事業に参画する最大の理由は「水素社会」を実現するためだが、ビジネス面では3つの目的があるという。

●クルマが先かインフラが先か、「ミライ」普及の課題とは

○トヨタが明かす3つの目的

トヨタが実証事業に参画するビジネス上の理由は、(1)FCVの普及に向けたインフラ整備を加速させること、(2)ミライや燃料電池フォークリフトなどに使用しているセル(水素と酸素を化学反応させて電力を作る部品)の外販に向けた布石を打つこと、(3)再生エネルギーを水素化して活用する事業自体のソリューション提供を新規事業に育てること、の3つだ。ここでは1つ目の理由に注目したい。

トヨタはセダンタイプのFCV「ミライ」を2014年12月に発売したが、販売台数は数千台程度らしく、普及しているとは言いがたい。水素充填インフラの整備が進まないからクルマが売れないのか、クルマが売れないからインフラ整備が進まないのかははっきりしないが、とにかく、ミライを売るにはインフラ整備が不可欠なのは間違いない。

○インフラ整備の加速がクルマの拡販に直結?

産業車両で水素の活用が進めば、水素の需要が増えて、水素充填インフラも増える。この状況はミライを販売する上で追い風になる。トヨタが実証事業に参画した理由を、ミライの販売に引きつけて考えるとこうなる。

もちろん、次世代エコカーの本命争いでは電気自動車(EV)が先行している感じなので、FCVというクルマが実際に普及するかどうかは未知数だ。しかし、トヨタは「EVもFCVも両方必要」(友山専務)という構えなので、水素充填インフラの普及に取り組むしかないのが現状だ。実証事業で水素活用の可能性やコストなどを見極め、日本各地に事業モデルを拡散できるかどうかが、トヨタの次世代エコカー戦略を見る上で重要なポイントになる。