日本救急医学会によると、熱中症の救急搬送は、梅雨明けの7月上旬から上昇、7月中旬〜8月上旬にピークを迎える。

 発症時刻は12〜15時が最も多い。熱中症=高齢者のイメージが強いが発症数をみると、実際は運動中や仕事中の10代〜壮年男性の比率が高い。「男性」は熱中症のリスクの一つなのだ。

 仕事中の発症では、臨時の期間工やバイトなど短期雇用もリスク。慣れない環境に心身が対応できないのだろう。この時期は臨時雇いが多いので雇用主は注意したい。

 逆に日常生活のなかで起こる「非労作性熱中症」は高齢女性が多い。体力がないうえに、水分や塩分を身体の外に出す作用がある降圧薬を飲んでいるなど、複数のリスクが重なり重症化しやすい。自ら病院へ行くことは期待できないので、周囲が注意するしかない。

 熱中症の重症度は1〜3度に分類される。軽症の1度の症状は「めまい、立ちくらみ、生あくび、大量の発汗、こむら返り」など。身体をとにかく冷やし、口から水分とナトリウムを補給させる。

 2度は「頭痛、吐く、倦怠感、集中力の低下」などがみられる「熱疲労」の状態。この場合は即、病院へつれていくこと。

 3度はさらに進み、足がもつれる、暴れだす、呼びかけに目を開けるが応えない、痛み刺激(ペン先で指をつつくとか)にしか反応しない、など意識障害が生じる。問答無用で救急車を呼ぼう。

 熱中症の治療は冷却と水分・塩分補給だが、米国で「ダントロレン注射剤」という点滴薬が承認待ちの状況だ(6月現在)。

 もともと薬剤性の悪性発熱の特効薬で、筋弛緩剤の一種。2015年、平均気温40度という酷暑のメッカ巡礼月(9月)を選び、サウジアラビアの救急病院で臨床試験を行ったという変わり種で、標準治療よりも、速やかに重症度が改善することが認められた。

 救急現場ではおなじみの薬なので、いずれは日本も追随するかもしれない。ただ、治療薬が登場しようと予防と早期対応が大切。太い血管やリンパ管が通っている手首、首筋、脇の下を冷やし、水分補給を忘れずに。

(取材・構成/医学ライター・井手ゆきえ)