呼ぶ方にも、呼ばれる方にもお作法があるホームパーティー。

人格やマナーが試される場でもあるが、その正解を知らぬ者も多い。

都内の様々な会に参加し、その累計回数は約100回にものぼる29歳の沙耶加が、多角的な視点でホームパーティーを評論してゆく。

これまでに、Uber EATSを駆使した会や、地方名産品を持ち寄るグルメ会などに参加してきた。

さて、今回は?




新婚宅へお呼ばれ。その時に気をつけるポイントは


-来週我が家でホームパーティーするから、是非遊びに来てね!場所は紀尾井町になります。

商社の元同僚で、結婚を機に半年前に退職した絵美から誘いが入ったのは、つい先日のこと。

紀尾井町に構えた新居を見たい気持ちと、新婚生活の甘さを垣間見たい好奇心から、“もちろん行く”と即答した。

通称、番町と呼ばれる紀尾井町エリアは、閑静な高級住宅街。同じく誘われた同僚の智子と歩きながら、何となく背筋を正した。

静かで落ち着いた空気を吸い込みながら、新婚にしてはだいぶ良い所に住んでいるな...などと頭の中でいろいろと勘ぐる。

真夏の暑い日差しを浴びながら、坂を登ると絵美の新居が見えてきた。

今日は絵美が手料理を振る舞ってくれるとのことで、手土産はお酒とジュース。そして、新婚宅への初めての訪問だ。もちろん、お祝いも忘れない。

ティファニーのペアマグカップを片手に、インターホンを押した。


新婚宅へ入った時に、まずゲストがすべきこととは?


新婚家庭に招かれた時。 飾ってある結婚式の写真をスルーしてはいけない


「沙耶加、来てくれてありがとう〜。」

玄関のドアを開けると、可愛らしいフリルつきのエプロンで新妻・絵美が出迎えてくれた。

まるで絵に描いたような“新婚さん”の姿に、一瞬たじろぎ、思わず笑ってしまう。可愛らしいエプロン姿の絵美は、幸せそのものだったから。

昔から可憐な雰囲気を醸し出していたが、更にその愛くるしさが増している。

「幸せそうで何より。それにしても...素敵なご自宅だね。」

広い大理石の玄関脇にあるサイドボードには、結婚式の写真。写真フレームの中で、新郎新婦は優しく寄り添い、微笑み合っている。

「良い式だったよね。絵美のドレス姿、本当に綺麗だった。」

新婚宅に飾ってある結婚式の写真。それは必ず褒めるものと心得ている。新婚で、結婚式の写真を褒められて嫌なホストはいないから。

そして奥のリビングへ進むと、既に女性が4名集っていた。

テーブルの上には、絵美が丹精込めて作ってくれた、写真映えする豪勢な手料理が所狭しと並んでいる。




「さすが絵美、料理まで完璧だね。」

皆、夢中で写真を撮っている。Instagramに載せれば“いいね!”がたくさんつきそうな、カラフルでフォトジェニックな料理の数々は、様々なアングルから撮影し、SNSに投稿したくなるものばかり。

-どれほど時間をかけ、絵美は準備してくれたのかしら...

一生懸命、ゲストのために用意してくれた絵美の気持ちを思うだけで嬉しくなった。

そして絵美の完璧とも言える料理とお酒で皆饒舌になり、会は序盤から盛り上がっていた。

「あとね、ラザニアがあるの。」

おもむろに絵美がキッチンの方へ向かい、オーブンからラザニアを取り出す。一斉に、感嘆の声が上がった。

「さすが絵美!本当に、美味しそう。」

しかし皆目を輝かせていたのに、ゲストの一人であるユリの一言で、その場の空気は一瞬にして変わった。

「美味しそうね!だけど私、次の用事があるからもう行かないと...また次回、食べさせてね。」


退出時間のお作法。解散時に表れる、その会の満足度


皆で合わせたい、退散時間


一瞬、絵美と目があってしまった。

絵美の性格を知っていれば、どれほど手間ひまかけて料理を作ってくれたのか、痛いほどわかる。

優しい彼女は、ゲスト達の喜ぶ顔が見たくて一生懸命準備してくれたはずだ。

「ゆっくりできなくて申し訳ない。またね。」

足早に去っていくユリを、皆戸惑いながらも見送る。

「せっかく用意してくれた料理、手をつけずに去るなんて...」

去りゆくユリを見ながら、それはホストに対して失礼にあたるのでは?と皆感じているようだった。

「そしたら...残ったメンバーで、もう一度乾杯しようか。」

絵美の優しい気遣いで、再び会は盛り上がり始める。14時から始まった会なのに、気がつけば時計の針は18時を指していた。

ーすっかり長居しちゃった...。

そう思っているタイミングで、絵美の夫・大輝が帰ってきた。




旦那様が帰宅。ゲストはどうする?


「あれ?早かったね。今日はもっと遅くなるかと思ったのに。」

「仕事が早く終わったんだけど、今日は皆で集まる日だったか...皆さん、ゆっくりして行って下さいね。」

優しそうな大輝は軽く会釈し、奥の部屋へと消えていく。

それと同時に、ゲスト同士でアイコンタクトを取り合い、誰からともなく帰宅準備を始めた。

疲れて帰宅した家主を、女同士のお喋りに付き合わすほど酷なことはない。

特別に家族皆と仲が良くない限り、ホスト側の家族の誰かが帰宅したら、それが会終了の合図だ。

「じゃあ私たち、そろそろお暇するね。」

今回は1名が先に帰るというちょっとしたハプニングがあったものの、それ以外の皆は同じタイミングで帰る。それは、この会の新密度の高さの表れでもある。

各々好きな時間に来て、好きなタイミングで抜けるのも、大規模なパーティーならば良いのかもしれない。だが、それくらい自由度が高いということは、関係性はそれだけ希薄ということでもある。

基本的に、家で開催される会ではそのような行為はあまり歓迎されない。

家主側は、その日迎えるゲスト一人ひとりの顔を思い浮かべながら、レシピやテーブルコーディネート、音楽などを決めてくれているのだから。

「楽しいホームパーティーだったね。」

皆で駅に向かいながら、絵美の手料理や気遣いを賞賛していた。

「あのラザニア、絶品だったのに。ユリさん、残念ね。」

隣を歩いていた智子がつぶやく。

ゲストもホストも、気遣いすべき点が多いホームパーティー。智子の発言を聞いて、マナーの根本である心の置き方を思わず考えた。

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【これまでのホムパのお作法】
Vol.1:会話を盛り上げるだけでは不十分。見られている、家主の品格
Vol.2:ビジネスは、ホムパで始まっている。ゲストを有機的に繋ぐ主催者の手腕とは
Vol.3:ホムパの手土産の「真の正解」を、ご存知ですか?
Vol.4:港区、目黒区などでは◯◯を使うのがホムパのトレンド?!
Vol.5:手土産は地方の名産品。ホムパだからできる、究極のグルメ会