ティファニーが抱える「本当の問題」とは何なのか

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「クールさ」を取り戻す方法を模索──米宝飾品大手ティファニーの現状について、ウォールストリート・ジャーナル(WSJ)は7月9日、トップページでこう報じた。記事は主に、同社の現在の危機的状況を招いた原因は経営陣の一部にあると伝えている。

特に批判の矛先が向けられたのは、前最高経営責任者(CEO)のフレデリック・キュメナルだ。2011年に同職に就く以前は仏モエ・ヘネシー・ルイヴィトン(LVMH)でワイン・蒸留酒部門を率いていたキュメナルのリーダーシップの下、それまで「平等な雰囲気」が特徴だったティファニーには、「ピラミッド型」の組織構造が導入された。

組織の機能不全は、もちろん批判されるべき点だ。だが、世界各地でビジネスを行うティファニーのような大企業が、こうした組織構造を取り入れることは必ずしも悪いことではない。暫定CEOとしてキュメナルの後を引き継いだマイケル・コワルスキーも、これらの決断を支持しているもようだ。

問題は「売り方」にある

ティファニーが直面している問題は、経営陣ではなくブランディングとカスタマーサービスにある。WSJの記事は、低価格帯の商品がティファニーの売上高の45%程度を占めることに対して批判的だ。だが、価格を下げたスターリングシルバー製では、ティファニーが持つ本物の「高級」のイメージを十分に伝えることができないのだろうか?

ティファニーは低コストで提供できる商品を軽視するのではなく、それが「本物」として表現するものを大切にするべきだ。それは、今の時点では「高級宝飾品」を購入することができなくても、明日にはできるようになるかもしれない次世代の顧客となる消費者を捉えるための方法だ。

また、新商品の発売までの期間が長いことも、売り上げが伸び悩む大きな原因として批判されるべき点ではない。どれほど素晴らしい商品を置いても、現代の消費者たちは、ありきたりのサービスや自分が関心を持てないサービスしか提供しない店には、足を踏み入れてみようとしないのだ。

一方、約310か所のティファニーの店舗では、従業員と消費者の「関与」が不足している点が指摘されている。

記事によると、ティファニーの売上高の全体に電子商取引が占める割合は、6%程度。つまり、ティファニーは売り上げの多くを店舗の従業員たちに依存している。ブランドの「本物」の経験を顧客に提供する役割を担うのも、こうした従業員たちだ。

だが、ティファニーの投資対効果に関する調査を行ったあるコンサルタントは店舗での買い物経験について、「期待を大きく裏切るものだ」と述べている。

「従業員たちは失望しており、自分たちの価値を実感できずにいる。顧客エンゲージメントに関する研修も十分には行われておらず、こうした大きな問題を改善するためのプロセスも一部店舗に導入されているだけで、ブランド全体では共有されていない」

富裕層の消費行動や高級品の市場調査を専門とする筆者が自著のために行った調査では、現在の小売業においてより大きく成功の鍵を握るのは、「何を売るか」よりも「どのように売るか」だ。ティファニーの苦境が続くのは、この点に問題があるためだ。

新CEOが目指すべきもの

新CEOはまず、ティファニー・ブランドの「本物の経験」は単に商品を入れる箱の色に反映されているのではないことを理解する必要があるだろう。「ティファニーブルー」はブランドの象徴にすぎず、その本質ではない。そして、低価格帯の商品は次世代のティファニー愛好家を生み出すための道筋を描くものだということを認識する必要がある。

最も重要な点は、ティファニーの店に足を一歩踏み入れた瞬間から、その人が本物の高級ブランドである「ティファニーでの経験」を感じ取れるようにすることだ。

ティファニーは、オードリー・ヘップバーンが演じたホリー・ゴライトリーが持った「あの店ならひどく悪いことなど何も起こりそうにない」という感覚を(消費者の間に)取り戻さなくてはならない。残念ながら、現時点でティファニーについてそう感じている人はほとんどいない。