「彼女は本当に勝者に値するプレーをした」

 元世界女王のビーナス・ウイリアムズは、若き挑戦者である大坂なおみへ最大級の賛辞を送った――。


初めてのウインブルドンで3回戦まで勝ち進んだ大坂なおみ

 大坂(WTAランキング59位、7月3日付け)は、ビーナス(11位、アメリカ)に(3)6-7、4-6で敗れたものの、大坂の大舞台での強さは、テニスの聖地といわれるウインブルドンでも存分に発揮された。

 1年前にも大坂はウインブルドンに出場できるランキングであったが、右ひざのケガのため出場を見送っていたため、今回は満を持しての初出場となった。

 大坂の父親でコーチを兼任するレオナルド氏は、「ウインブルドンで、いいプレーをしてくれることだけを願っています。彼女ができる限りの力を出してくれればいいです」と愛娘の初出場に温かいまなざしを向けた。

 また、フェドカップ日本代表監督の土橋登志久氏は、次のように大坂へ大きな期待を寄せていた。

「大坂の強力なサーブやストロークを考えると、芝で十分戦えると思う。今、彼女が持っている力を発揮できれば、1回戦を勝てば勢いがつくと思います。(グラスでのフットワークは)彼女が経験していかないといけないことですが、短いボールに反応できていましたし、対応できると思っています」



 その期待に応えるかのように大坂は、1回戦でサラ・ソリベス トルモ(100位、スペイン)を6-3、7-6(3)で破って、見事ウインブルドン初出場で初勝利を飾った。

「ウインブルドンに来てから、本当にいい練習ができていました。彼女を倒すには、自分に自信を持つことが必要だと思っていましたし、決してネガティブにならないようにしました。グラスでの試合経験が本当に少ないので、毎試合が新しいレッスンのようなものですね」

 2回戦では、第22シードのバルボラ・ストリコバ(23位、チェコ)を、6-1、0-6、6-4で破り、これで大坂は出場したグランドスラムすべての大会で3回戦に進出したことになった。

 さらに、大坂はビーナスへの挑戦権を獲得した。実は2017年WTAオークランド大会2回戦で対戦する予定だったが、そのときは右腕のケガでビーナスが棄権したため、ウインブルドンで初対戦がやっと実現した。

 大坂は「アイドルは、セリーナ・ウイリアムズ」と公言しているが、自身がジュニア時代に成長していく過程で、ビーナスも含めたウイリアムズ姉妹こそが、大坂のロールモデルだった。

「彼女たちがいたから、テニスを始めたと思います」

 37歳のビーナスは、今回20回目のウインブルドン出場で、これまで5回のシングルス優勝を誇り、グランドスラムは75回の出場(オープン化以降1位)を数える大ベテラン。一方、大坂は19歳で、2人の年齢差は18歳にもなる。世代間のギャップを越えて、ビーナスは大坂との対戦を「実に興味深い」と語る一方で、「コートに足を踏み入れれば、お互い年齢のことなんか考えない。ただ、どうやって勝つか考えているだけよ」と気を引き締めた。



 大坂もビーナスを尊敬する選手としてではなく、他の対戦相手と同じと考えるようにして自分のプレーに集中した。ウインブルドンのナンバー1コートでの初めての試合で、ネットの反対側には、グランドスラムチャンピオンのビーナスがいる。これまでの大坂のテニスキャリアの中で、一番大きなチャレンジとなった。

 第1セットはタイブレークでビーナスが奪取。第2セットは第7ゲームをビーナスがブレークした。ツアー屈指のサーブ力を持つビーナスにとって、グラスコートでの試合における終盤のワンブレークは、大坂を振り切って勝負を決めるのには十分だった。

 だが、この3回戦で大坂はビーナスを上回る数字を残した。サービスエースでは、ビーナスの5本を上回る8本。最速ファーストサーブでは、ビーナスの188kmを上回って192kmをたたき出した。フォアハンドストロークのウィナーは、ビーナスが5本で、大坂が11本。バックハンドストロークのウィナーではビーナスが4本で、大坂が6本。リターンエースは、ビーナスが0本で、大坂が5本。すべてのショットを含めたウィナーの数では、ビーナスの21本を上回って、大坂は28本を記録した。

 この数字が示すように、ショットのクオリティにおいて、大坂はまったくビーナスに引けをとらなかった。

 ただし、アンフォースドエラーいわゆる凡ミスの数に目を向けると、大坂のプレーに粗さがあったことがわかる。ビーナスはフォアが6本でバックが3本、大坂はフォアが9本でバックが10本と倍以上もあった。
 
 特に、第2セット第7ゲームで見せたハイバックボレーのイージーミスをはじめとした、勝敗を分けるような大事なゲームやポイントでのミスを減らすことと、高い集中力を維持することは、今後の大坂の課題となる。



「少しがっかりしています。チャンスがあったのに、タイブレークでは、ビーナスの方がいいプレーをしました。彼女が本当にいいプレーをする中で、自分のベストは尽くせました」 

 こう語った大坂は、さらにビーナスのボールが短くなった時に、コートの中へステップインできず、うまく攻撃につなげられなかったことを反省した。この大坂の冷静な分析力には感心させられると共に、次にビーナスと対戦する時には勝利に近づけるのではないかという成長力と向上心を感じさせる。

 初めてのウインブルドンで大坂は、自分がグランドスラムチャンピオンになる姿をイメージできなかった。だが、ビーナス戦を見た多くの人は、大坂が近い未来、チャンピオンになり得る可能性を感じたに違いない。そして、「コートでは、ポジティブに次のポイントに集中するよう心掛けている」という大坂がさらに自信をつけた時、彼女自身もチャンピオンになれることを確信できるに違いない。

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