『メアリと魔女の花』が初登場2位 その結果は及第点?  物足りない?

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 前週に引き続き、『パイレーツ・オブ・カリビアン/最後の海賊』が圧倒的な強さで2週連続動員ランキング1位となった先週末の興行。土日2日間の動員49万人、興収7億4000万円。先週末の時点で累計興収は26億円を突破している。今年の夏休み興行は、実写外国映画のエンターテインメント大作という枠組でいうと7月29日公開の『ザ・マミー/呪われた砂漠の王女』まで新たな公開作がないこともあって、『パイレーツ・オブ・カリビアン/最後の海賊』の好調はまだしばらく続きそうだ。

(参考: 日本はアメリカ寄り? 中国寄り? 『パイレーツ・オブ・カリビアン』が示す洋画興行の新傾向

 今週注目したいのは、初登場2位となった米林宏昌監督の『メアリと魔女の花』。土日2日間で動員32万4000人、興収4億2800万円という数字は、米林監督がスタジオジブリ在籍時代に手がけた前作『思い出のマーニー』と比べると同期間の興収で113%の成績となる。しかし、『思い出のマーニー』はジブリ作品としては興行的には決して成功作とは言えず、最終興収は35億3000万円という数字にとどまってしまった。今回の『メアリと魔女の花』は、ジブリという大きな看板はなくなったものの、声優のキャスト陣、主題歌、企業とのタイアップなど多方面において万全の体制を敷かれている作品なだけに、少なくとも「『思い出のマーニー』以上の成績」が及第点となるだろう。

 本コラムでも再三触れてきたように、2014年にジブリの制作部門が閉鎖されたことで(ちょうどその前の最後の作品が宮崎駿も高畑勲も一切製作に関わっていなかった『思い出のマーニー』ということにある)大きなドル箱を失った東宝にとって、ひいては日本映画界全体にとって、「ポスト・ジブリ」「ポスト宮崎駿」というのは夏休み興行における大きな課題であった。その中で生まれたのが、細田守監督による2015年の『バケモノの子』(最終興収58億5000万円)であり、新海誠監督による2016年の『君の名は。』(現時点の興収は249億4000万円)であった。そこに、アニメ作品ではないが庵野秀明総監督による2016年の『シン・ゴジラ』(最終興収82億5000万円)を加えてもいいだろう。

 それぞれの作品の興収成績が示しているように、東宝の「ポスト・ジブリ」「ポスト宮崎駿」の計画は、その作品内容の充実ぶりだけでなく、多くの人の予想を超える結果(『君の名は。』の数字はあまりにも特別なものではあるが)を残してきた。そこにあって、出自的にも、作風的にも、作画的にも、最もポスト・ジブリとしての正統派の流れを汲む米林監督の『メアリと魔女の花』は、新しい作品世界の提示というよりも、「観客の観たい作品を作る」という目的(実際にそのような発言もしている)に終始しているように観客の目には映るかもしれない。もっとも、長編初監督作品となった2010年の『借りぐらしのアリエッティ』から今作まで、3作連続して海外のファンタジー小説/児童小説を原作にしているということからも、米林監督の作家性はオリジナリティとは別のところにあると見るべきなのだろうが。  そこにきて、今年2月に発表された宮崎駿の長編映画制作への復帰である。宮崎駿の新作長編の公開年はまだ明らかになっていないが、おそらくは数年後の、アニメ作品にとって最も稼ぎ時である「夏」の公開を目指していることは間違いないだろう。これによって「ポスト・ジブリ」「ポスト宮崎駿」を巡る状況はますます混沌としてきたわけだが、優れたアニメーション作家による作品が異なるスタジオから次々と生まれている現在の状況は、(制作の現場は大変かもしれないが)少なくとも観客にとっては好ましいことである。昨年の『君の名は。』の公開時期と同じ8月中旬には、東宝配給、シャフト制作、新房昭之監督の『打ち上げ花火、下から見るか? 横から見るか?』の公開も控えている。ますます熾烈さを増している「夏のアニメ戦線」に、今後も注目していきたい。

(宇野維正)