サウジアラビアなどによるカタール断交から1カ月以上が経過した。受け入れ困難な13項目の要求を前に、カタールは国家主権を盾に拒否している。衛星テレビ局アルジャジーラの閉鎖など、大半の要求は主権に関わる問題で受け入れ難く、長期化は必至の情勢だ。サウジ側は、カタールをバーレーンのような属国的な存在にすることで独自の外交政策の骨抜きを狙う。最終的にタミム首長体制の転換に至る可能性があるとの見方も浮上している。

追加制裁で日本企業にもさらなる影響

13項目の要求はカタールの主権にも関わり、「最初から拒否するしかないようにつくられている」(ムハンマド外相)とも言える内容。「流血を伴わない宣戦布告だ」(アティーヤ国防担当相)と、カタール側は断交に踏み切ったサウジやアラブ首長国連邦(UAE)、バーレーン、エジプトの4カ国に対する非難のトーンを強めている。この間、カタールがトルコやイランとの関係強化に動くことで市民の日常生活に支障がないよう努めていることも、サウジ側の神経を逆なでしている。

カタールはイランから生鮮食品などを空輸してサウジによる国境封鎖による物資の不足を補うなど、イランとの接近が鮮明になっている。また、13項目の要求に反する形でトルコ軍がカタール内の基地で部隊を増強しており、「カタールはレッドラインを越えた」(中東専門家)との指摘もある。

こうした動きに対し、サウジ側は「13項目の要求はカタールが受け入れなかったことから(この要求は既に)無効だ」とし、新たな制裁措置を検討している。この中には、金融取引に絡む措置や日本など有力国の民間企業にカタールとの取引停止を求めることも含まれるもようだ。

カタールと取引する企業が、サウジやUAEとのビジネスの場から締め出すなどの警告を受ければ、大国サウジやUAEなど取引規模の大きい4カ国を選択せざるを得ないというわけだ。事態の長期化によっては、サウジ側とカタールの双方と関係の深い日本企業にとって、さらに事態が悪い方向に向かう可能性がある。

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実際に同胞団包囲進む

一方、水面下では危機の打開に向けた動きが活発化している。カタール外交筋によると、同国指導部は欧米諸国にサウジ側の要求内容の見直しに向けた仲介を要請したほか、「サウジ側の要求は国連憲章や国際法に反する違法な侵害行為だ」(カタール高官)として、法廷闘争の準備も進めている。こうした動きは危機を深化させかねないが、サウジ側が条件を見直す効果があるかもしれない。

カタールが比較的取り組みやすいのは、同胞団の問題だろう。前回2014年の危機の際にはカタールが同胞団幹部7人を追放することでサウジなどの駐カタール大使が復帰して危機はいったん収まった。

トルコ・イスタンブールは、エジプト当局の弾圧を受ける同胞団の一大拠点となっているが、そこで活動するエジプト人ジャーナリストによると、カタールには現在も少ないながら依然として同胞団関係者がとどまる。カタールは、同胞団のみならず、エジプトのシシ政権と対立する野党勢力の拠点にもなってきた。カタールはこれまでのところ、サウジ側の要求が過大であることから、同胞団関係者の追放に抵抗しているという。

池滝和秀(時事総研客員研究員、在英ジャーナリスト)※時事通信社発行の電子書籍「e-World Premium」より転載