実録・東京電力「福島原発コールセンター」の闇(3)セールスマンが下調べに利用

写真拡大

 外見にこだわらない実力主義が、この職場の美点だ。ピアスも男性の長髪も禁止されていない。膝上以上の短いスカートは禁止とされているが、守られていない。

 1人で電話を受けるようになっても、TLがモニタリングしてチェックする。

「絶対安全だというあんたらの言葉を信じてたが、あんたらの事故で故郷も仕事も失って、人生はめちゃくちゃになった。それを、簡単なことを聞いてるだけなのに、何でこんなに待たせるんだ!」

 そんなふうに相談者を怒らせてしまうことも、しばしばだ。そのあとで、TLから注意を受ける。

「相手の立場に立って考えてみな。突然の原発事故で、住み慣れた土地を離れなきゃならなくなった被災者が、わざわざ時間を割いて電話をかけてきてるわけでしょ。もっと謝罪の気持ちを込めて応対しないと」

 自分が起こした事故でもないのに、東電の代わりに謝罪するのが嫌で、同期で入った者は、1人2人と職場を去っていく。

 賠償を行うのは、帰還困難区域、居住制限区域、避難指示区域に事故当時住んでいて、避難指示が継続している人々に対してだ。

 宅地建物に対しては、6年で価値が失われるとの考え方で、福島県不動産鑑定士協会の算定した時価相当額が支払われる。つまり、6年以上避難指示が継続すれば全額が、例えば5年で避難指示が解除されれば6分の5が支払われる。

 避難ではなく転居を決めた者には、宅地建物の賠償では足りない場合、住居確保の賠償がある。

「借地に家を建てる場合でも、賠償は出ますか?」

 そう質問されたので、事故時に住んでいた区域を聞いたら、住宅メーカーの営業担当者だったことがある。被災者にセールスするために欲しい情報だったのだろう。

 いわき市では、被災者が建てた新居が、「賠償御殿」と揶揄されているという。

「大きな声じゃ言えないけど、別荘まで建てる人もいるのよ」

 そんなふうに耳打ちしたベテランオペレーターもいた。だが、賠償されるのは宅地建物を持っていた場合のみだ。賃貸住宅に住んでいた場合は、避難中の家賃のみが賠償される。避難指示区域に家を持っていたとしても、賠償されない場合もある。

「家は津波で流されました。住めなくなったことは同じなのに、なぜ賠償されないんですか?」

 そう聞かれたこともある。津波による被害は、東電が与えた損害ではないので、賠償はされない。

 事故当時、家には住んでいなくて住民票も他に移していた、また事故前に家を建てたが、まだ住んでいなかったという例もある。

 これも避難を余儀なくされたことによる損害ではないので、賠償はされない。放射能によって財産が使えなくなったのだから、損害賠償請求はできると思うが、コールセンターでは扱えない事例だ。

深笛義也(ジャーナリスト)